怪物 「転」-2-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

関連タイピング

問題文

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(とけいをみるとよるのくじをまわっていたので「おそくにすみません」ときょうしゅくすると、)

時計を見ると夜の9時を回っていたので「遅くに済みません」と恐縮すると、

(ははおやがげんざいべっきょちゅうで、ちちおやはしごとでいつもおそくなるからぜんぜんへいき、)

母親が現在別居中で、父親は仕事でいつも遅くなるから全然ヘイキ、

(とわらってはなすのだった。きょうだいしまいもいないのでいつもこのじかんは)

と笑って話すのだった。兄弟姉妹もいないのでいつもこの時間は

(いえにひとりだという。せんぱいのへやにとおされて、くっしょんをおしりにしいてから)

家に一人だという。先輩の部屋に通されて、クッションをお尻に敷いてから

(どうはなしをきりだそうかとしあんしていると、かのじょはくしょうしながらわたしをひなんした。)

どう話を切り出そうかと思案していると、彼女は苦笑しながら私を非難した。

(「おなじがっこうにはいってきたのに、あいさつにもこないんだから」ちょっとおどろいた。)

「同じ学校に入って来たのに、挨拶にも来ないんだから」ちょっと驚いた。

(ちゅうがくじだいのにこうえのせんぱいだったが、そういえばこうこうは)

中学時代の2コ上の先輩だったが、そういえば高校は

(どこにしんがくしたのかしらなかった。まさかおなじがっこうのさんねんせいだったとは。)

どこに進学したのか知らなかった。まさか同じ学校の3年生だったとは。

(むこうはなんどかがくないでわたしらしきせいとをみかけたらしく、)

向こうは何度か学内で私らしき生徒を見かけたらしく、

(しんにゅうせいだとしっていたようだった。)

新入生だと知っていたようだった。

(しばらくがっこうについてのとりとめもないはなしをする。)

しばらく学校についての取りとめもない話をする。

(しょうじき、はやくほんだいにはいりたかったのだがせんぱいのはなしはだっせんをくりかえしている。)

正直、早く本題に入りたかったのだが先輩の話は脱線を繰り返している。

(ただひとつ、「こうないにいっかしょだけせまいはんいにあめがふるばしょがある」という)

ただひとつ、「校内に一ヶ所だけ狭い範囲に雨が降る場所がある」という

(きみょうなうわさばなしだけはやけにきになったので、こんどたしかめてみようと)

奇妙な噂話だけはやけに気になったので、今度確かめてみようと

(ひそかにこころにきめる。「で、ききたいことってなに?」)

密かに心に決める。「で、聞きたいことってなに?」

(せんぱいがむぎちゃをだいどころからもってきて、それぞれのこっぷにそそぐ。)

先輩が麦茶を台所から持ってきて、それぞれのコップに注ぐ。

(ぽるたーがいすとげんしょうのことだとすとれーとにつげた。)

ポルターガイスト現象のことだとストレートに告げた。

(せんぱいはめをまるくして、「ぴゅう」とくちぶえをふく。)

先輩は目を丸くして、「ピュウ」と口笛を吹く。

(「あれ?あなたにはあんまりはなしてなかったっけ?」)

「あれ? あなたにはあんまり話してなかったっけ?」

(いや、ききました。みみにたこができるくらいきかされました。)

いや、聞きました。耳にタコができるくらい聞かされました。

など

(せんぱいがしょうがっこうよねんせいくらいのころ、いえのなかでおかしなことが)

先輩が小学校4年生くらいのころ、家の中でおかしなことが

(たてつづいておこったそうだ。たとえばしょっきがたなからかってにとびだし)

立て続いて起こったそうだ。例えば食器が棚から勝手に飛び出し

(じめんにおちてわれたり、まどのかーてんがかぜもないのにまくれあがったり、)

地面に落ちて割れたり、窓のカーテンが風もないのにまくれ上がったり、

(へやのどこからともなくなにかがはじけるようなおとがだんぞくてきにひびいたり、)

部屋のどこからともなく何かがはじけるような音が断続的に響いたり、

(あるときなどかぞくのめのまえでかびんにさしていたはながふわふわと)

ある時など家族の目の前で花瓶に挿していた花がフワフワと

(ちゅうにうきはじめ、いきなりすごいいきおいでてんじょうにたたきつけられたこともあったらしい。)

宙に浮き始め、いきなり凄い勢いで天井に叩きつけられたこともあったらしい。

(それがすうじつおきになんしゅうかんもつづき、あるときぱたりとやんだかとおもうと)

それが数日置きに何週間も続き、ある時パタリと止んだかと思うと

(またしばらくしてきゅうにおこりはじめる。)

またしばらくして急に起こり始める。

(こんわくしたりょうしんはついにゆうめいなきとうしをしょうかいしてもらい、)

困惑した両親はついに有名な祈祷師を紹介してもらい、

(いえのおはらいをしてもらった。そのあと、ものがうごいたりといったことはなくなり、)

家のお払いをしてもらった。その後、物が動いたりといったことはなくなり、

(なにかがはじけるようなものおとややねうらをだれかがはっているようなおとは)

何かがはじけるような物音や屋根裏を誰かが這っているような音は

(ときどきあったそうだが、やがてそれもおこらなくなった。)

時々あったそうだが、やがてそれも起こらなくなった。

(いまおじゃましているこのいえでのことだ。)

今お邪魔しているこの家でのことだ。

(おもわずへやのてんじょうのあたりをみあげたが、とくになにもかんじるところはなかった。)

思わず部屋の天井の辺りを見上げたが、特になにも感じる所はなかった。

(「ききたいのは、いしがふってきたことがあったかどうかです」)

「聞きたいのは、石が降ってきたことがあったかどうかです」

(「いし?いえのなかに?」「いえのそとでもいいですけど」)

「石? 家の中に?」「家の外でもいいですけど」

(せんぱいはきおくをたどるようなしせんのうごきをみせたあと、「なかったとおもう」といった。)

先輩は記憶を辿るような視線の動きを見せた後、「なかったと思う」と言った。

(「じゃあいしじゃなくてもいいですけど、いえのなかになかったはずのものが)

「じゃあ石じゃなくてもいいですけど、家の中になかったはずのものが

(どこからともなくあらわれたりしたことは?」)

どこからともなく現われたりしたことは?」

(「・・・・・・おさらとかくだものとかいろいろとんだりおちたりしてたけど、)

「……お皿とか果物とか色々飛んだり落ちたりしてたけど、

(ぜんぶいえにあったものだからなあ。ないものがでてくるって、)

全部家にあったものだからなあ。ないモノが出てくるって、

(なんかすごいね。さいばばみたい」せんぱいはおもしろがって、さいきんてれびでみたという)

なんか凄いね。サイババみたい」先輩は面白がって、最近テレビで見たという

(さてぃあさいばばのあぽーと(ぶっぴんひきよせ)についてしゃべりだす。)

サティア・サイ・ババのアポート(物品引き寄せ)について喋りだす。

(「こんなしてさ、てのひらぐるぐるふってから、だしちゃうのよ」)

「こんなしてさ、手のひらぐるぐる振ってから、出しちゃうのよ」

(てーぶるのうえにあったはさみをてにもってそのようすをじつえんしてみせてくれる。)

テーブルの上にあった鋏を手に持ってその様子を実演してみせてくれる。

(わたしはすこしがっかりした。)

私は少しがっかりした。

(「そんなにぽるたーがいすととかにきょうみあるの?あたしもさいきんはぜんぜんだけど、)

「そんなにポルターガイストとかに興味あるの? あたしも最近は全然だけど、

(むかしきになっていろいろしらべたから、そっちけいのほんがあるよ。)

むかし気になって色々調べたから、そっち系の本があるよ。

(よみたいならかすけど」「ぜひ」というと、せんぱいは「ちょいまち」と)

読みたいなら貸すけど」「是非」と言うと、先輩は「ちょい待ち」と

(へやのほんだなをごそごそとさがしまわってなんさつかのほんをだしてきてくれた。)

部屋の本棚をゴソゴソと探し回って何冊かの本を出してきてくれた。

(いずれもおかるとけいのざっしのるいだ。)

いずれもオカルト系の雑誌の類だ。

(それぞれぽるたーがいすとげんしょうにかんするところにふせんがついている。)

それぞれポルターガイスト現象に関する所に付箋がついている。

(れいをいって、おいとまをしようとしたとき、せんぱいがわたしのかおを)

礼を言って、おいとまをしようとした時、先輩が私の顔を

(まじまじとみつめてきた。「あなた、ちょっとかわったね」)

まじまじと見つめてきた。「あなた、ちょっと変わったね」

(せんぱいこそけんどうぶでこうはいをしごいていたころからしたら、)

先輩こそ剣道部で後輩をしごいていたころからしたら、

(ずいぶんにくがついてしまってるじゃないですか。)

随分肉がついてしまってるじゃないですか。

(そんなことをえんきょくにいってみたが、せんぱいはじぶんのことは)

そんなことを婉曲に言ってみたが、先輩は自分のことは

(まったくみみにいらないようすでぶつぶつとくちのなかでつぶやいている。)

まったく耳に入らない様子でブツブツと口の中で呟いている。

(「かわったというか、かわっている、とちゅう、みたいな」)

「変わったというか、変わっている、途中、みたいな」

(そのしゅんかん、せすじにだれかのしせんをかんじたきがしてふりかえりそうになる。)

その瞬間、背筋に誰かの視線を感じた気がして振り返りそうになる。

(「あ、ごめん。きにした?まあ、またこんどゆっくりはなそ」)

「あ、ごめん。気にした? まあ、また今度ゆっくり話そ」

(なんだろう。いまのかんじ。そのけんおかんを、わたしは”しっている”。そんなきがした。)

なんだろう。今の感じ。その嫌悪感を、私は"知っている"。そんな気がした。

(げんかんをでて、いえのまえでみおくってくれるせんぱいにさいごにひとことだけといかける。)

玄関を出て、家の前で見送ってくれる先輩に最後に一言だけ問いかける。

(「さいきん、こわいゆめをみませんでしたか」)

「最近、怖い夢を見ませんでしたか」

(せんぱいはかおをこわばらせたかとおもうと、にゅうわなえみでそれをすぐにつつみかくす。)

先輩は顔を強張らせたかと思うと、柔和な笑みでそれをすぐに包み隠す。

(「そういえばけさがたみたけど。へんなゆめだったな。ありえないゆめ」)

「そう言えば今朝がた見たけど。変な夢だったな。ありえない夢」

(おやすみ。とてをふってせんぱいはいえのなかへきえていった。)

オヤスミ。と手を振って先輩は家の中へ消えていった。

(だれもいない、たったひとりのいえに。わたしはじてんしゃにのっかるとぜんそくりょくでこぎだした。)

誰もいない、たった一人の家に。私は自転車に乗っかると全速力で漕ぎ出した。

(いえにかえりつくのがおそくなるにつれてははおやのこごとのりょうがひれいしてふえるのだ。)

家に帰り着くのが遅くなるにつれて母親の小言の量が比例して増えるのだ。

(ほしを、そらにみながらよるのみちをいそいだ。)

星を、空に見ながら夜の道を急いだ。

(「ぽるたーがいすとげんしょうのじれいとしてなだかいのは1848ねん、)

『ポルターガイスト現象の事例として名高いのは1848年、

(にゅーよーくしゅうはいずびるのふぉっくすけをおそったかいげんしょうが)

ニューヨーク州ハイズビルのフォックス家を襲った怪現象が

(そのひっとうとしてあげられる。またきんねんでは1967ねん、)

その筆頭として挙げられる。また近年では1967年、

(どいつのろーぜんはいむにあるあだむべんごしじむしょでおきたじけんや、)

ドイツのローゼンハイムにあるアダム弁護士事務所で起きた事件や、

(1977ねんいこう、ろんどんほくぶえんふぃーるどのはーぱーけでおきた)

1977年以降、ロンドン北部エンフィールドのハーパー家で起きた

(かいいもひろくしられている」そんなせつめいをよみながら、)

怪異も広く知られている』そんな説明を読みながら、

(ふと、がっこうのきょうかしょもこのくらいねっしんにみていたら)

ふと、学校の教科書もこのくらい熱心に見ていたら

(もっとせいせきもあがるだろうにおもい、じぎゃくてきなわらいがこみあげてくる。)

もっと成績も上がるだろうに思い、自虐的な笑いが込み上げて来る。

(もうとけいはよるの12じをまわっている。)

もう時計は夜の12時を回っている。

(せんぱいからかりたほんをさっそくよんでみたのだが、かなりのぶんりょうがある。)

先輩から借りた本をさっそく読んでみたのだが、かなりの分量がある。

(あしたもがっこうがあるし、てきとうなところできりあげてはやくねたほうがよいと)

明日も学校があるし、適当なところで切り上げて早く寝た方が良いと

(わかっているのだが、なぜかきがはやっててをとめられない。)

分かっているのだが、何故か気が逸って手を止められない。

(はいずびるじけんではふぉっくすけのじじょまーがれっと(15)と)

ハイズビル事件ではフォックス家の次女マーガレット(15)と

(さんじょけいと(12)のしゅうへんでかべやてんじょうをたたくようなきみょうなものおとが)

三女ケイト(12)の周辺で壁や天井を叩くような奇妙な物音が

(きこえはじめ、そのものおととあるあいずによってこうしんをはかることで)

聞こえ始め、その物音とある合図によって交信を図ることで

(れいとのこみゅにけーしょんをとることにせいこうしたといわれている。)

霊とのコミュニケーションをとることに成功したと言われている。

(ろーぜんはいむじけんではでんわきのいじょうからはじまり、)

ローゼンハイム事件では電話機の異常から始まり、

(けいこうとうのらっかやでんきゅうのはれつ、きんこやおーくざいのきゃびねっとが)

蛍光灯の落下や電球の破裂、金庫やオーク材のキャビネットが

(ひとりでにうごくなどのかいげんしょうがおこった。)

独りでに動くなどの怪現象が起こった。

(えんふぃーるどじけんではむすめのじゃねっと(11)が)

エンフィールド事件では娘のジャネット(11)が

(へやできいた「なにかをひきずるおと」にはしをはっし、おはじきやつみきが)

部屋で聞いた「何かを引きずる音」に端を発し、おはじきや積み木が

(くうちゅうをとんだり、たんすがひとりでにすうじゅっせんちもうごいたり、)

空中を飛んだり、タンスが独りでに数十センチも動いたり、

(じゃねっとがねようとするとべっどからとらんぽりんのように)

ジャネットが寝ようとするとベッドからトランポリンのように

(なげだされるといったふかしぎなできごとがいちねんあまりもつづき、)

投げ出されるといった不可思議な出来事が1年あまりも続き、

(そのあいだにきんじょのじゅうみんやますこみ、そーしゃるわーかー、)

その間に近所の住民やマスコミ、ソーシャルワーカー、

(いぎりすしんれいげんしょうけんきゅうきょうかいのめんばーなどのべ30にんいじょうのにんげんが)

イギリス心霊現象研究協会のメンバーなど延べ30人以上の人間が

(これらをもくげきしたといわれている。そのほかのさまざまなじれいのしょうかいをみていくと、)

これらを目撃したと言われている。その他の様々な事例の紹介を見ていくと、

(ほんのそうろんとしてかいせつされるまでもなく、かなりのわりあいで)

本の総論として解説されるまでもなく、かなりの割合で

(そのげんしょうのしょうてんになっているのがてぃーんえいじゃーのわかもの、)

その現象の焦点になっているのがティーンエイジャーの若者、

(それもじょせいであることにきづく。)

それも女性であることに気づく。

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