Q これが幽霊にみえますか -9-
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問題文
(まどをみつめながら、かれはただそれだけのおとをもらしました。)
窓を見つめながら、彼はただそれだけの音を漏らしました。
(あきらかにおかしなcさんのきょどうをふたりがいぶかしみ、)
明らかにおかしなCさんの挙動を二人が訝しみ、
(かいぎしつからまどのそとをみると。)
会議室から窓の外を見ると。
(ぼうぼうのくさのむこうに、あかるいひにてらされたじぶんたちのくるまがあり、)
ぼうぼうの草の向こうに、明るい陽に照らされた自分たちの車があり、
(そのすぐよこにおおきなだんせいがたっていました。)
そのすぐ横に大きな男性が立っていました。
(せんじゅつのとおりひのひかりはまどにむかってさしこんでいるため、)
先述の通り陽の光は窓に向かって射し込んでいるため、
(くるまやそれはぎゃっこうによりしるえっとしかはんべつできないのですが、)
車やそれは逆光によりシルエットしか判別できないのですが、
(しかしそれはだんせいだとおもいました。)
しかしそれは男性だと思いました。
(だんせいで、それもにんげんではないものだとちょっかんてきにきづきました。)
男性で、それも人間ではないものだと直感的に気付きました。
(おとこはくるまのむかってひだりがわ、うんてんせきのほうにちょくりつでたっていて、おそらくしょうめんを、)
男は車の向かって左側、運転席の方に直立で立っていて、恐らく正面を、
(こちらをむいてたっているのですが、それにしてはせがあまりにおおきく、)
こちらを向いて立っているのですが、それにしては背があまりに大きく、
(そしてくびがあきらかにありえないまがりかたをしていました。)
そして首が明らかに有り得ない曲がり方をしていました。
(くびがあれほどちょっかくもしくはそれいじょうにまがることなどまずありません。)
首があれほど直角もしくはそれ以上に曲がることなどまずありません。
(なのに、あたまのさきからみぎにおれるようなそのしるえっとは、にんげんがかたぐるまをして)
なのに、頭の先から右に折れるようなそのシルエットは、人間が肩車をして
(ようやくそのあたまにてがとどくくらいのおおきさのおとこのかげは、かれらのていしゃしたくるまの)
漸くその頭に手が届くくらいの大きさの男の影は、彼らの停車した車の
(まよこにたってこちらをみていました。)
真横に立ってこちらを見ていました。
(あれはなんだ、といおうとして、しかしじぶんからそれをいうことは)
あれは何だ、と言おうとして、しかし自分からそれを言うことは
(どうしてもできなくて、ただあれをみていることしかできないちんもくが)
どうしても出来なくて、ただあれを見ていることしかできない沈黙が
(なんびょうもつづきました。)
何秒も続きました。
(それがよるのできごとだったら、あるいはだれかひとりだけがたいけんしたものだったら、)
それが夜の出来事だったら、或いは誰か一人だけが体験したものだったら、
(まだなんやかやとりゆうをつけることもできたでしょう。)
まだ何やかやと理由を付けることも出来たでしょう。
(しかしそれは、まだたいようのまぶしいゆうがたにぜんいんがみてしまったなにかでした。)
しかしそれは、まだ太陽の眩しい夕方に全員が見てしまった何かでした。
(みみがいたいほどのちんもくがつづく。)
耳が痛いほどの沈黙が続く。
(もうだれでもいいからなにかはなしてくれと、そうおもっていたaさんが)
もう誰でもいいから何か話してくれと、そう思っていたAさんが
(ついにたえきれず、ふるえたこえでくちびをきろうとしたそのしゅんかん。)
遂に耐え切れず、震えた声で口火を切ろうとしたその瞬間。
(とおくのとびらがかちゃりとひらくおとがしました。)
遠くの扉がかちゃりと開く音がしました。
(それはさきほどさんにんでいえのなかをみまわっていたときの、)
それは先ほど三人で家の中を見回っていた時の、
(きっちんのあたりからきこえてきました。)
キッチンの辺りから聞こえてきました。
(それにあわせて、さきほどからまわってきたさまざまなばしょから、)
それに合わせて、先ほどから回ってきた様々な場所から、
(ふざいをかくにんしたはずのすべてのばしょから、だんぞくてきにとびらがあくおとがして。)
不在を確認したはずのすべての場所から、断続的に扉が開く音がして。
(たのしげなざつだんのこえとともに、とすとす、ぺたぺたとなんにんものあしおとが、)
楽しげな雑談の声と共に、とすとす、ぺたぺたと何人もの足音が、
(ろうかのむこうからきこえてきて。)
廊下の向こうから聞こえてきて。
(「はーい、ごごのおはなしかいするよー。あつまってー」)
「はーい、午後のお話し会するよー。集まってー」
(「あちょっとまってくださいせんぱい、おちゃってなんぼんいりますか」)
「あちょっと待ってください先輩、お茶って何本要りますか」
(「れいぞうこににりっとるのやつあったでしょ、おひるにつかったあれ、そうけんびちゃ」)
「冷蔵庫に二リットルのやつあったでしょ、お昼に使ったあれ、爽健美茶」
(「あー、あれもうこっぷにはいぶんくらいしかはいってなかったきがする」)
「あー、あれもうコップ二杯分くらいしか入ってなかった気がする」
(「そうなの?じゃあごめん、にほんもってきて」)
「そうなの? じゃあごめん、二本持ってきて」
(「わかりましたー」)
「分かりましたー」
(それはまるで、いぜんからそのばしょをつかっているかのような、)
それはまるで、以前からその場所を使っているかのような、
(おそらくどうねんだいのがくせいのこえでした。)
恐らく同年代の学生の声でした。
(こえしつやかいわのないようからして、おそらくすうめいずつのだんじょからなるぐるーぷが)
声質や会話の内容からして、恐らく数名ずつの男女からなるグループが
(このばしょをがっしゅくかなにかのすぺーすとしてもちいているのだろうとよそうがつきます。)
この場所を合宿か何かのスペースとして用いているのだろうと予想が付きます。
(そこがもうつかわれていないはいきょどうぜんのばしょであるということにめをつぶれば、)
そこがもう使われていない廃墟同然の場所であるということに目を瞑れば、
(なんのへんてつもないかいわだったとおもえたかもしれません。)
何の変哲もない会話だったと思えたかもしれません。
(「どうもです、そとのはきそうじおわらせてきましたー」)
「どうもです、外の掃き掃除終わらせてきましたー」
(「おつかれさま。てえあらってきて、おはなしかいおわったらそのままばんごはんだから」)
「お疲れ様。手え洗ってきて、お話し会終わったらそのまま晩ご飯だから」
(「はいはいーっと、ああせんぱいといれのせんめんだいつかってたんですね。)
「はいはいーっと、ああ先輩トイレの洗面台使ってたんですね。
(じゃあだついじょのすいどうつかうか」)
じゃあ脱衣所の水道使うか」
(がやがやとしたはなしごえとあしおとは、そのままさんにんがいるひろま、)
がやがやとした話し声と足音は、そのまま三人がいる広間、
(せみなーやしょくじのときにつかわれるのであろうへやまでちかづいてきて。)
セミナーや食事の時に使われるのであろう部屋まで近づいてきて。
(ひろまからろうかにつながるとびらがあきました。)
広間から廊下に繋がる扉が開きました。
(ろうかからはへやぎらしきtしゃつやじゃーじなどをきただんじょがはいってきて、)
廊下からは部屋着らしきTシャツやジャージなどを着た男女が入ってきて、
(くりあふぁいるやのみもの、ぶらすちっくせいのこっぷなどをもって)
クリアファイルや飲み物、ブラスチック製のコップなどを持って
(めいめいにちゃくせきします。)
めいめいに着席します。
(かれらはへやのすみでただかたまっているだんじょにきづいていないのか、)
彼らは部屋の隅でただ固まっている男女に気付いていないのか、
(あるいはいないものとしてあつかっているのか、さんにんにはなしかけたりすることはなく、)
或いはいないものとして扱っているのか、三人に話しかけたりすることはなく、
(しかしさんにんはにげることもうごくこともできませんでした。)
しかし三人は逃げることも動くことも出来ませんでした。
(むじんだったはずのあきやにそれだけのにんずうがかくれていたとは)
無人だったはずの空き家にそれだけの人数が隠れていたとは
(さすがにかんがえがたいです。そもそもきもだめしとしてすべてのへやをみまわって)
流石に考え難いです。そもそも肝試しとして全ての部屋を見回って
(ひとのふざいをかくにんしてきたのですから、それでもそつぜんにすがたをあらわしたかれらは、)
人の不在を確認してきたのですから、それでも卒然に姿を現した彼らは、
(このよのものではないなにかということになるのかもしれません。)
この世のものではない何かということになるのかもしれません。
(しかしかれらは、にんげんとまったくおなじようなすがたで、たとえばちのりがついていたり)
しかし彼らは、人間と全く同じような姿で、例えば血糊が付いていたり
(あしがなかったりもせず、せいけつかんのあるいふくにみをつつんで)
足が無かったりもせず、清潔感のある衣服に身を包んで
(しつないようのすりっぱをはいていました。)
室内用のスリッパを履いていました。
(それがいようで、とにかくどうすることもできないほどにおそろしかったのだと。)
それが異様で、とにかくどうすることも出来ないほどに恐ろしかったのだと。
(「それじゃあはじめようかー。ごごのかんてさんすのぎだいは、っと」)
「それじゃあ始めようかー。午後のカンテサンスの議題は、っと」
(「せんぱい」とよばれていた、うすちゃいろのかーでぃがんをはおったくろかみのじょせいは、)
「先輩」と呼ばれていた、薄茶色のカーディガンを羽織った黒髪の女性は、
(ちゃくせきをかくにんするようにあたりをみまわすとこえをだしました。)
着席を確認するように辺りを見回すと声を出しました。
(かのじょがたってはなしながらみているほわいとぼーどは、さきほどまでたしかに)
彼女が立って話しながら見ているホワイトボードは、先ほどまで確かに
(まっさらだったはずのほわいとぼーどは、いつのまにかたくさんの)
まっさらだったはずのホワイトボードは、いつの間にか沢山の
(かきこみにまみれていました。)
書き込みに塗れていました。
(「そっか、ごぜんでにつまったとこのつづきだったね。)
「そっか、午前で煮詰まったとこの続きだったね。
(それじゃあひきつづきってことで」)
それじゃあ引き続きってことで」
(どうすれば、ゆうれいがみえるようになるだろう。)
どうすれば、幽霊が見えるようになるだろう。
(そうかのじょがいうと、ちゃくせきしていたかれらは、うーんとこえをもらしました。)
そう彼女が言うと、着席していた彼らは、うーんと声を漏らしました。
(「やっぱり、れいりょくというかれいかんをたかめないといけないんじゃないでしょうか。)
「やっぱり、霊力というか霊感を高めないといけないんじゃないでしょうか。
(まえやってたたろっととかじゃなくて、)
前やってたタロットとかじゃなくて、
(もっとほんかくてきなうらないのぎじゅつをみがいていけば」)
もっと本格的な占いの技術を磨いていけば」
(「ぎじゅつをみがくっていうよりは、もっとこう、そようみたいなかんじのいめーじが)
「技術を磨くっていうよりは、もっとこう、素養みたいな感じのイメージが
(あるんですよねれいかんって。それようのしんりてすととか、)
あるんですよね霊感って。それ用の心理テストとか、
(あとれいかんのあるひととくゆうのてそうみたいなはなしもききますし」)
あと霊感のある人特有の手相みたいな話も聞きますし」
(「なるほどなるほど、てそうにうらないか。あとしんりてすと」)
「なるほどなるほど、手相に占いか。あと心理テスト」
(とんとんとぺんさきでいたをたたくおとがして、ほわいとぼーどに)
とんとんとペン先で板を叩く音がして、ホワイトボードに
(かじょうがきのりすとがかきくわえられていきました。)
箇条書きのリストが書き加えられていきました。
(「いやまあもちろん、そういうのもだいじですけど。)
「いやまあ勿論、そういうのも大事ですけど。
(これまでぼくらがしてきたかんてさんすをえるためのどりょくも、)
これまで僕らがしてきたカンテサンスを得るための努力も、
(きっとむだにはならないとおもいますけどね。)
きっと無駄にはならないと思いますけどね。
(でぃすかっしょんとか、ひーりんぐのためのせらぴーとか、)
ディスカッションとか、ヒーリングのためのセラピーとか、
(そういうべーすてきなぶぶんもしっかりつづけていかないと」)
そういうベース的な部分もしっかり続けていかないと」
(「おお、あなたいいことをいった。そのとおりですよね、)
「おお、貴方いいことを言った。その通りですよね、
(きっとこれまでのかつどうもどこかではなひらくんですから」)
きっとこれまでの活動もどこかで花開くんですから」
(「はい。せっかくこれだけ、じぶんたちのうまれたいえくらいにおちつけるかんきょうが)
「はい。せっかくこれだけ、自分たちの生まれた家くらいに落ち着ける環境が
(よういされてるんですから。おちついたばしょで、いつもやっていることをする。)
用意されてるんですから。落ち着いた場所で、いつもやっていることをする。
(それがいちばん、こころにしみこむかんてさんすにつながるんです」)
それが一番、心に沁み込むカンテサンスに繋がるんです」
(だんせいのはなしにあわせ、よこにすわっているかきゅうせいらしきじんぶつがめもをとっている。)
男性の話に合わせ、横に座っている下級生らしき人物がメモを取っている。
(「なるほど、けいぞくのたいせつさをさいにんしきすること、と」)
「なるほど、継続の大切さを再認識すること、と」
(「そうですそうです。たいわ、ことばのもつじゅうようせいを、)
「そうですそうです。対話、言葉の持つ重要性を、
(もっとりしんくしていくことがかんようなんです。)
もっとリシンクしていくことが肝要なんです。
(それこそがまさしく、たいわのいこいにつながるとぼくはおもいます」)
それこそがまさしく、対話の憩いに繋がると僕は思います」