Q これが幽霊にみえますか -11-

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投稿者投稿者紅はるかいいね0お気に入り登録
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カンテサンス
カンテサンス文章1

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問題文

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(そのこえはaさんでもcさんでもなく。)

その声はAさんでもCさんでもなく。

(かれらといっしょにへやのすみでふるえていたはずの、bさんのこえでした。)

彼らと一緒に部屋の隅で震えていたはずの、Bさんの声でした。

(aさんにつきそってきもだめしにきたかのじょは、さきほどからずっと)

Aさんに付き添って肝試しに来た彼女は、先ほどからずっと

(だまっていたままだったかのじょは。)

黙っていたままだった彼女は。

(ふたりのほうでも、とつじょとしてかいぎしつにはいってきたしゅうだんのほうでもなく、)

二人の方でも、突如として会議室に入ってきた集団の方でもなく、

(かいぎしつのまどのむこうをじっとみつめていました。)

会議室の窓の向こうをじっと見つめていました。

(とつぜんに、それもやけにおちつきはらったけいごでことばをはっしたbさんに)

突然に、それもやけに落ち着き払った敬語で言葉を発したBさんに

(おどろいてそちらをみたふたりは、かのじょのしせんにつられて、)

驚いてそちらを見た二人は、彼女の視線につられて、

(ゆっくりとまどのそとをみました。)

ゆっくりと窓の外を見ました。

(まどをいちまいへだてたすぐむこうにとてもおおきなだんせいがたっていました。)

窓を一枚隔てたすぐ向こうにとても大きな男性が立っていました。

(ついなんぷんかまえまでかれらのとめたくるまのすぐよこにたっていた、)

つい何分か前まで彼らの停めた車のすぐ横に立っていた、

(あのだんせいだとちょっかんしました。)

あの男性だと直感しました。

(おとこはやはりとてもおおきく、かいぎしつのまどからではかたのしたあたりまでしか)

男はやはりとても大きく、会議室の窓からでは肩の下あたりまでしか

(かくにんすることができません。やけにおおきくおれまがったくびも、)

確認することが出来ません。やけに大きく折れ曲がった首も、

(そこについているかおもかくれてしまっているのですが、)

そこに付いている顔も隠れてしまっているのですが、

(でもあのおとこだろうとおもいました。)

でもあの男だろうと思いました。

(あのときはぎゃっこうでしるえっとしかみえなかったおとこのかたからしたは、)

あの時は逆光でシルエットしか見えなかった男の肩から下は、

(そのあまりにおおきすぎるうわぜいをどがいしするならば、どこにでもいるおじさんの)

そのあまりに大きすぎる上背を度外視するならば、どこにでもいるおじさんの

(ようなふうていでした。ちぇっくがらでえりもとのよれたはんそでのtしゃつと、)

ような風体でした。チェック柄で襟元のよれた半袖のTシャツと、

(いろおちしたぐれーのながずぼん。こういうときってもふくやしろしょうぞくではないんだなと、)

色落ちしたグレーの長ズボン。こういう時って喪服や白装束ではないんだなと、

など

(かんがえることをほうきしたあたまのいちぶがそんなことをかんがえていました。)

考えることを放棄した頭の一部がそんなことを考えていました。

(じゃっかんおちかけているゆうやけにてらされたそのおとこをむひょうじょうにみつめながら)

若干落ちかけている夕焼けに照らされたその男を無表情に見つめながら

(bさんは、)

Bさんは、

(「あなたにはこれがゆうれいにみえないんですか」)

「あなたにはこれが幽霊に見えないんですか」

(そういいました。)

そう言いました。

(そのしゅんかん、かいぎしつのなかに、どっとわらいごえがひびいて、)

その瞬間、会議室の中に、どっと笑い声が響いて、

(へやのなかにめをむけるとかいぎしつにすわったかれらがかのじょらがぜんいんこちらをみて、)

部屋の中に目を向けると会議室に座った彼らが彼女らが全員こちらを見て、

(こえをだしてわらっていました。それはたとえるならさぷらいずが)

声を出して笑っていました。それは例えるならサプライズが

(せいこうしたときのような、げらげらとてをたたきなみだをしませるような、)

成功したときのような、げらげらと手を叩き涙を滲ませるような、

(ばくしょうとけいようしてもよいわらいごえでした。)

爆笑と形容しても良い笑い声でした。

(「そうだよねえ、あれがゆうれいにみえませんはちょっとやばいって」)

「そうだよねえ、あれが幽霊に見えませんはちょっとやばいって」

(「しんじたくなくてもとりあえずさあ、あるものはあるっていっとかないと」)

「信じたくなくても取り敢えずさあ、あるものはあるって言っとかないと」

(「っていうか、じゃあなににみえてんのさ、あははは」)

「っていうか、じゃあ何に見えてんのさ、あははは」

(「あーおっかし、ひさびさにこんなわらったかもふふっ」)

「あーおっかし、久々にこんな笑ったかもふふっ」

(わらいごえ。てをたたくおと。むせるようなせき。)

笑い声。手を叩く音。噎せるような咳。

(そのすべてが、へやのすみにいるさんめいにむけられていて、)

そのすべてが、部屋の隅にいる三名に向けられていて、

(aさんとcさんはただそれをみまわして、ぼうぜんとすることしかできなかった。)

AさんとCさんはただそれを見回して、呆然とすることしかできなかった。

(bさんはいまだに、まどのそとにたっているなにかをただぼうっとみつめていた。)

Bさんは未だに、窓の外に立っている何かをただぼうっと見つめていた。

(とすとすと、さきほどろうかからきこえてきたようなあしおとがへやのなかでちかづいて、)

とすとすと、先ほど廊下から聞こえてきたような足音が部屋の中で近づいて、

(それはうすちゃいろのかーでぃがんをはおりくろかみをかたまでのばした「せんぱい」の)

それは薄茶色のカーディガンを羽織り黒髪を肩まで伸ばした「先輩」の

(すりっぱがたてているあしおとで、)

スリッパが立てている足音で、

(かのじょがはをみせてえみをうかべながらさんにんのほうにちかづいてきて、)

彼女が歯を見せて笑みを浮かべながら三人の方に近づいてきて、

(「じゃあもう、かえよっかしつもん。しょうがないなあ、とくべつだからね」)

「じゃあもう、変えよっか質問。しょうがないなあ、特別だからね」

(ふくみわらいをうかべながら、)

含み笑いを浮かべながら、

(「こっからどれくらいのことがおきれば、ゆうれいだとおもってくれる?」)

「こっからどれくらいのことが起きれば、幽霊だと思ってくれる?」

(そういったとどうじにまどがすごいいきおいでばんとたたかれました。)

そう言ったと同時に窓が凄い勢いでばんと叩かれました。

(もうなにもみたくなかったのに、おおきなおとによってはんしゃてきにうごいたかおが)

もう何も見たくなかったのに、大きな音によって反射的に動いた顔が

(それをしかいにはいれてしまいました。)

それを視界に入れてしまいました。

(まどのそとにきをつけのしせいでたっていたおとこの、りょうほうのてのひらが、)

窓の外に気を付けの姿勢で立っていた男の、両方の掌が、

(べたりとはりつくようにまどにふれていて。)

べたりとはりつくように窓にふれていて。

(いぜんとしてかたからうえはかくれてみえないいちにあるはずなのに、)

依然として肩から上は隠れて見えない位置にあるはずなのに、

(ちょくりつのじょうたいでくびだけがじょうげぎゃくにねじれてかいてんするみたいに、)

直立の状態で首だけが上下逆にねじれて回転するみたいに、

(そのあたまやがくがゆっくりとまどのじょうぶからみえてきて。)

その頭や額がゆっくりと窓の上部から見えてきて。

(よれたtしゃつのむなもとにかさなるあたりのいちにたれてきたかおのうえはんぶんが、)

よれたTシャツの胸元に重なる辺りの位置に垂れてきた顔の上半分が、

(こちらをのぞきこみました。)

こちらを覗き込みました。

(まえがみのすぐしたで、あめーばかなにかのようにふていけいにひきのばされた)

前髪のすぐ下で、アメーバか何かのように不定形に引き伸ばされた

(まっくろなめがろしゅつしたとき、ずっとむかんじょうにまどのそとをながめていたbさんが)

真っ黒な目が露出したとき、ずっと無感情に窓の外を眺めていたBさんが

(とつぜんにぱっとめをあいて、うれしそうにかがやいためでふたりのほうをみて)

突然にぱっと目を開いて、嬉しそうに輝いた目で二人の方を見て

(「ゆうれいがみえるようになった」)

「幽霊が見えるようになった」

(といったので、ふたりはそこでようやくはじかれるようにかいぎしつをとびだしました。)

と言ったので、二人はそこで漸く弾かれるように会議室を飛び出しました。

(かいぎしつのとびらをあけるときも、bさんのうでをひっぱってろうかをかけるときも、)

会議室の扉を開けるときも、Bさんの腕を引っ張って廊下を駆けるときも、

(さいしょにあけたかんいきっちんのまどからろっじをでるときも、)

最初に開けた簡易キッチンの窓からロッジを出るときも、

(とつぜんいえのなかにあらわれたなんめいものだんじょはまだそこにいて、)

突然家の中に現れた何名もの男女はまだそこにいて、

(かこきゅうのじょうたいでばたばたとはしるかれらをおもしろそうにながめていたそうです。)

過呼吸の状態でばたばたと走る彼らを面白そうに眺めていたそうです。

(ふろばのしゃわーでてとあしをあらっていただんせいも、ろうかですぐよこを)

風呂場のシャワーで手と足を洗っていた男性も、廊下ですぐ横を

(すれちがったじょせいも、きっちんでしょくじのよういらしきことをしていたひとくみの)

すれ違った女性も、キッチンで食事の用意らしきことをしていた一組の

(だんじょも、おいかけてきたりすることはなく、)

男女も、追いかけてきたりすることは無く、

(ただにこにことそのようすをみていて。)

ただにこにことその様子を見ていて。

(かれらは、それほどとおくはないろっじのおおひろまからくるままでのみちを、)

彼らは、それほど遠くはないロッジの大広間から車までの道を、

(おおきくいきをきらしながらはしりきり、くるまにのりこみました。)

大きく息を切らしながら走り切り、車に乗り込みました。

(ついさきほどまでいえのそとにいたおとこのようななにかも、いえのしょうめんのまどからみえる)

つい先ほどまで家の外にいた男のような何かも、家の正面の窓から見える

(おおひろまのなかにいたおおぜいのひとたちも、くるまにのってもうすぴーどでやまみちを)

大広間の中にいた大勢の人たちも、車に乗って猛スピードで山道を

(うかいするときには、そのすがたをみることはできなかったようなのですが)

迂回するときには、その姿を見ることは出来なかったようなのですが

(だからといって、あれがすべてきょうふしんからみたげんかくであったと)

だからといって、あれがすべて恐怖心から見た幻覚であったと

(おもいなおすことは、まずぜったいにできなかったのだろうとおもいます。)

思い直すことは、まず絶対にできなかったのだろうと思います。

(いじょう、ここまでがぜんていとなるおはなしです。)

以上、ここまでが前提となるお話です。

(このはなしにかかわるふかかいなてん、ぶきみなてんは、)

この話に関わる不可解な点、不気味な点は、

(おもにこれからきじゅつするぶぶんになるのですが。)

主にこれから記述する部分になるのですが。

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