東條英機 - 対米英宣戦布告演説
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問題文
(ただいませんせんのごしょうちょくがかんぱつせられました。)
只今宣戦の御詔勅が渙発せられました。
(せいえいなるていこくりくかいぐんはいまやけっしのたたかいをおこないつつあります。)
精鋭なる帝国陸海軍は今や決死の戦を行ひつつあります。
(とうあぜんきょくのへいわは、これをねんがんするていこくのあらゆるどりょくにもかかわらず、)
東亜全局の平和は、これを念願する帝国のあらゆる努力にも拘らず、
(ついにけつれつのやむなきにいたったのであります。)
遂に決裂の已むなきに至つたのであります。
(かはんらいせいふは、あらゆるしゅだんをつくしたいべいこっこうちょうせいのせいりつにどりょくしてまいりましたが)
過般来政府は、あらゆる手段を尽し対米国交調整の成立に努力して参りましたが
(かれはじゅうらいのしゅちょうをいっぽもゆずらざるのみならず、)
彼は従来の主張を一歩も譲らざるのみならず、
(かえってえい、らん、しとれんごうししなよりわがりくかいぐんのむじょうけんぜんめんてっぺい、)
かへつて英、蘭、支と連合し支那より我が陸海軍の無条件全面撤兵、
(なんきんせいふのひにん、にちどくいさんごくじょうやくのはきをようきゅうし)
南京政府の否認、日独伊三国条約の破棄を要求し
(ていこくのいっぽうてきじょうほをきょうようしてまいりました。)
帝国の一方的譲歩を強要して参りました。
(これにたいしていこくはあくまでへいわてきだけつのどりょくをつづけましたが、)
これに対し帝国は飽く迄平和的妥結の努力を続けましたが、
(べいこくはなんらはんせいのいろをしめさずこんにちにいたりました。)
米国は何ら反省の色を示さず今日に至りました。
(もしていこくにしてかれらのきょうようにくつじゅうせんか、)
若し帝国にして彼等の強要に屈従せんか、
(ていこくのけんいをしっついししなじへんのかんすいをきしえざるのみならず、)
帝国の権威を失墜し支那事変の完遂を期し得ざるのみならず、
(ついにはていこくのそんりつをもきたいにおちいらしむるけっかとなるのであります。)
遂には帝国の存立をも危殆に陥らしむる結果となるのであります。
(ことここにいたりましては、ていこくはげんかのききをだかいし、じそんじえいをまっとうするため、)
事茲に至りましては、帝国は現下の危機を打開し、自存自衛を全うする為、
(だんことしてたちあがるのやむなきにいたったのであります。)
断乎として立ち上るの已むなきに至つたのであります。
(いませんせんのたいしょうをはいしましてきょうくかんげきにたえず、)
今宣戦の大詔を拝しまして恐懼感激に堪へず、
(わたくしふしょうなりといえどもいっしんをささげてけっしほうこく、)
私不肖なりと雖も一身を捧げて決死報国、
(ただただしんきんをやすんじたてまつらんとねんがんのみであります。)
唯々宸襟を安んじ奉らんと念願のみであります。
(こくみんしょくんもまた、おのがみをかえりみず、)
国民諸君も亦、己が身を顧みず、
(しこのみたてたるのこうえいをおなじくせらるるものとしんずるものであります。)
醜の御楯たるの光栄を同じくせらるるものと信ずるものであります。
(およそしょうりのようけつは、「ひっしょうのしんねん」をけんじすることであります。)
およそ勝利の要訣は、「必勝の信念」を堅持することであります。
(けんこくにせんろっぴゃくねん、われらは、いまだかつてたたかいにやぶれたるをしりません。)
建国二千六百年、我等は、未だ嘗つて戦ひに敗れたるを知りません。
(このしせきのかいここそ、いかなるきょうてきをもはさいするのかくしんをしょうずるものであります)
この史績の回顧こそ、如何なる強敵をも破砕するの確信を生ずるものであります
(われらはこうきあるそこくのれきしを、だんじて、よごさざるとともに、)
我等は光輝ある祖国の歴史を、断じて、汚さざると共に、
(さらにはえあるていこくのあすをけんせつせんことをかたくちかうものであります。)
更に栄ある帝国の明日を建設せむことを固く誓ふものであります。
(かえりみれば、われらはこんにちまでいんにんとじちょうとのさいだいげんとかさねたのでありますが、)
顧みれば、我等は今日迄隠忍と自重との最大限と重ねたのでありますが、
(だんじてやすきをもとめたものでなく、またてきのきょうだいをおそれたものでもありません。)
断じて安きを求めたものでなく、又敵の強大を惧れたものでもありません。
(ひたすら、せかいへいわのいじと、じんるいのさんかのぼうしとをこねんしたるにほかなりません。)
只管、世界平和の維持と、人類の惨禍の防止とを顧念したるにほかなりません。
(しかも、てきのちょうせんをうけそこくのせいぞんとけんいとがあやうきにおよびましては、)
しかも、敵の挑戦を受け祖国の生存と権威とが危きに及びましては、
(けつぜんたたざるをえないのであります。)
蹶然起たざるを得ないのであります。
(とうめんのてきはぶっしのほうふをほこり、)
当面の敵は物資の豊富を誇り、
(これによってせかいのせいはをめざしているのであります。)
これに依て世界の制覇を目指して居るのであります。
(このてきをふんさいし、とうあふどうのしんちつじょをけんせつせんがためには、)
この敵を粉砕し、東亜不動の新秩序を建設せむが為には、
(とうぜんちょうきせんたることをよそうせねばなりませぬ。)
当然長期戦たることを予想せねばなりませぬ。
(これとどうじにぜつだいなるけんせつてきどりょくをようすることげんをようしませぬ。)
これと同時に絶大なる建設的努力を要すること言を要しませぬ。
(かくて、われらはあくまでさいごのしょうりがそこくにっぽんであることをかくしんし、)
かくて、我等は飽くまで最後の勝利が祖国日本にあることを確信し、
(いかなるこんなんもしょうがいもこくふくしてすすまなければなりません。)
如何なる困難も障碍も克服して進まなければなりません。
(これこそ、しょうわのしんみんわれらにかせられたてんよのしれんであり、)
是こそ、昭和の臣民我等に課せられたる天与の試錬であり、
(このしれんをとっぱしてあとにこそ、)
この試錬を突破して後にこそ、
(だいとうあけんせつしゃとしてのえいよをこうせいにになうことができるものであります。)
大東亜建設者としての栄誉を後世に担ふことが出来るものであります。
(このときにあたりまんしゅうこくおよびちゅうかみんこくとのいっとくいっしんのかんけいいよいよあつく、)
この秋に当り満洲国及び中華民国との一徳一心の関係愈々敦く、
(どくいりょうこくとのめいやくますますかたきをくわえつつあるを、きんかいとするものであります。)
独伊両国との盟約益々堅きを加へつつあるを、欣快とするものであります。
(ていこくのりゅうたい、とうあのこうはい、まさにこのいっせんにあり、)
帝国の隆替、東亜の興廃、正に此の一戦に在り、
(いちおくこくみんがいっさいをあげて、くににむくいくににじゅんずるのときはいまであります。)
一億国民が一切を挙げて、国に報ひ国に殉ずるの時は今であります。
(はっこうをうとなすこうぼのもとに、このじんちゅうほうこくのだいせいしんあるかぎり、)
八紘を宇と為す皇謨の下に、此の尽忠報国の大精神ある限り、
(えいべいといえどもなんらおそるるにたらないのであります。)
英米と雖も何等惧るるに足らないのであります。
(しょうりはつねにみいずのもとにありとかくしんいたすものであります。)
勝利は常に御稜威の下にありと確信致すものであります。
(わたしはここにつつしんでびちゅうをひれきし、)
私は茲に謹んで微衷を披瀝し、
(こくみんとともに、たいぎょうよくさんのたんしんをちかうしだいであります。)
国民と共に、大業翼賛の丹心を誓ふ次第であります。