明治天皇 - 国威宣布ノ宸翰

(ちんようじゃくをもってにわかにたいとうをまねきじらいなにをもってばんこくにたいりつし)

朕幼弱を以て猝かに大統を紹き爾来何を以て万国に対立し

(れっそにつかえたてまつらんかとちょうせききょうくにたえざるなり)

列祖に事へ奉らんかと朝夕恐懼に堪えざるなり

(せつにかんがうるにちょうようちょうせいおとろえてよりぶけけんをもっぱらにし)

窃に考るに中葉朝政衰へてより武家権を専らにし

(おもてにはちょうていをすいそんしてみはけいしてこれをとおのけ)

表には朝廷を推尊して実は敬して是を遠け

(おくちょうのふぼとしてたちてせきしのじょうをしることはあたわざるようはかりなし)

億兆の父母として絶て赤子の情を知ること能はざる様計りなし

(ついにおくちょうのきみたるものゆいなのみになりはて)

遂に億兆の君たるも唯名のみに成り果て

(それがためにこんにちちょうていのそんちょうは、いにしえにばいせしがごとくにてちょういはますますおとろえ)

其が為に今日朝廷の尊重は、古に倍せしが如くにて朝威は倍ます衰へ

(しょうかあいはなるることしょうじょうのごとし。かかるけいせいにてなにをもっててんかにくんりんせんや)

上下相離るること霄壌の如し。斯る形勢にて何を以て天下に君臨せんや

(こんぱんちょうせいいっしんのときありててんかおくちょうひとりもそのところをえざるときは)

今般朝政一新の時膺りて天下億兆一人も其所を得ざるときは

(みなちんがつみなればこんにちのこと、ちんみずからしんこつをろうししんしをくるしめ)

皆朕が罪なれば今日の事、朕躬ら身骨を労し心志を苦め

(かんなんのさきにたちれっそのつきさせたまいししょうをふみちせきをつとめてこそ)

艱難の先に立ち列祖の尽させ給ひし蹤を履み治績を勤めてこそ

(はじめててんしょくをほうじておくちょうのきみたるところにそむかざるべし)

始めて天職を奉して億兆の君たるところに背かざるべし

(おうじゃくれっそばんきをみずからし、ふしんのものあればみずからしょうとしてこれをせいしたまい)

往昔列祖万機を親らし、不臣の者あれば自ら将として之れを征し給ひ

(ちょうていのまつりごとすべてかんいにしてこのごとくそんちょうならざるゆえ)

朝廷の政総て簡易にして此の如く尊重ならざる故

(くんしんあいしたしみしょうかあいあいしとくたくてんかにあまねくこくいかいがいにかがやきしなり)

君臣相親み上下相愛し徳沢天下に普く国威海外に輝きしなり

(しかるにちかごろうだいおおいにひらけかくこくよもにあいゆうひするのときにあたり)

然るに近来宇内大に開け各国四方に相雄飛するの時に当り

(ひとりわがくにのみせかいのけいせいにうとくきゅうしゅうをこしゅしいっしんのこうをはからず)

独り我国のみ世界の形勢に疎く旧習を固守し一新の効をはからず

(ちんいたづらにここのえのうちにあんきょしいちじつのやすきをぬすみひゃくねんのうれいをわするるときは)

朕徒らに九重の中に安居し一日の安きを偸み百年の憂を忘るる時は

(ついにかくこくのりょうぶをうけかみはれっせいをはずかしめたてまつり)

遂に各国の凌悔を受け上は列聖を辱しめ奉り

(しもはおくちょうをくるしめんことをおそる。ゆえにちん、ここにひゃっかんしょこうとひろくあいちかい)

下は億兆を苦めんことを恐る。故に朕、ここに百官諸侯と広く相誓ひ