「堕落論(2)」坂口安吾

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プレイ回数1403難易度(3.2) 3050打 長文 かな
青空文庫 図書カード:No.42620
文章は青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)から引用しました。
画像はイメージスタイル (http://www.imgstyle.info/)を利用しています。
タイピングテキスト用に改行を行っています。
仮名の間違えがあるかもしれませんがご了承ください。
キーボードにより表示と印字に差のある場合があります。
疑問文中の「(」「)」は除外します。

No.-- 私(わたくし)
No.08 凡庸(ぼんよう)
No.08 於て(おい)
No.16 亦(また)
No.27 意慾(いよく)
No.37 就ても(つい)
No.55 釈迦(しゃか)
No.72 愉しければ(たの)

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問題文

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(こばやしひでおはせいじかのたいぷを、)

小林秀雄は政治家のタイプを、

(どくそうをもたずただかんりし)

独創をもたずただ管理し

(しはいするじんしゅとしょうしているが、)

支配する人種と称しているが、

(かならずしもそうではないようだ。)

必ずしもそうではないようだ。

(せいじかのだいたすうは)

政治家の大多数は

(つねにそうであるけれども、)

常にそうであるけれども、

(しょうすうのてんさいはかんりやしはいのほうほうに)

少数の天才は管理や支配の方法に

(どくそうをもち、それがぼんようなせいじかの)

独創をもち、それが凡庸な政治家の

(きはんとなってここのじだい、)

規範となって個々の時代、

(ここのせいじをつらぬくひとつのれきしのかたちで)

個々の政治を貫く一つの歴史の形で

(きょだいないきもののいしをしめしている。)

巨大な生き者の意志を示している。

(せいじのばあいにおいて、れきしは)

政治の場合に於て、歴史は

(こをつなぎあわせたものでなく、)

個をつなぎ合せたものでなく、

(こをぼつにゅうせしめたべっこの)

個を没入せしめた別個の

(きょだいなせいぶつとなってたんじょうし、)

巨大な生物となって誕生し、

(れきしのすがたにおいてせいじもまた)

歴史の姿に於て政治も亦

(きょだいなどくそうをおこなっているのである。)

巨大な独創を行っているのである。

(このせんそうをやったものはだれであるか、)

この戦争をやった者は誰であるか、

(とうじょうでありぐんぶであるか。)

東条であり軍部であるか。

(そうでもあるが、しかしまた、)

そうでもあるが、然し又、

など

(にっぽんをつらぬくきょだいなせいぶつ、れきしの)

日本を貫く巨大な生物、歴史の

(ぬきさしならぬいしであったにそういない。)

ぬきさしならぬ意志であったに相違ない。

(にっぽんじんはれきしのまえではただうんめいにじゅうじゅんな)

日本人は歴史の前ではただ運命に従順な

(こどもであったにすぎない。)

子供であったにすぎない。

(せいじかによしどくそうはなくとも、)

政治家によし独創はなくとも、

(せいじはれきしのすがたにおいてどくそうをもち、)

政治は歴史の姿に於て独創をもち、

(いよくをもち、やむべからざるほちょうをもって)

意慾をもち、やむべからざる歩調をもって

(たいかいのなみのごとくにあるいていく。)

大海の波の如くに歩いて行く。

(なんにんがぶしどうをあんしゅつしたか。これもまた)

何人が武士道を案出したか。之も亦

(れきしのどくそう、またはきゅうかくであったであろう。)

歴史の独創、又は嗅覚であったであろう。

(れきしはつねににんげんをかぎだしている。)

歴史は常に人間を嗅ぎだしている。

(そしてぶしどうはじんせいやほんのうにたいする)

そして武士道は人性や本能に対する

(きんしじょうこうであるためにひにんげんてき)

禁止条項である為にヒニンゲン的

(はんじんせいてきなものであるが、)

反人性的なものであるが、

(そのじんせいやほんのうにたいするどうさつのけっかで)

その人性や本能に対する洞察の結果で

(あるてんにおいてはまったくにんげんてきなものである。)

ある点に於ては全く人間的なものである。

(わたくしはてんのうせいについても、きわめてにっぽんてきな)

私は天皇制に就ても、極めて日本的な

(したがってあるいはどくそうてきな)

(従って或いは独創的な)

(せいじてきさくひんをみるのである。てんのうせいは)

政治的作品を見るのである。天皇制は

(てんのうによってうみだされたものではない。)

天皇によって生みだされたものではない。

(てんのうはときにみずからいんぼうをおこしたこともある)

天皇は時に自ら陰謀を起したこともある

(けれども、がいしてなにもしておらず、)

けれども、概して何もしておらず、

(そのいんぼうはつねにせいこうのためしがなく、)

その陰謀は常に成功のためしがなく、

(しまながしとなったり、やまおくへにげたり、)

島流しとなったり、山奥へ逃げたり、

(そしてけっきょくつねにせいじてきりゆうによって)

そして結局常に政治的理由によって

(そのそんりつをみとめられてきた。)

その存立を認められてきた。

(しゃかいてきにわすれたときにすら)

社会的に忘れた時にすら

(せいじてきにかつぎだされてくるのであって、)

政治的に担ぎだされてくるのであって、

(そのそんりつのせいじてきりゆうはいわば)

その存立の政治的理由はいわば

(せいじかたちのきゅうかくによるもので、)

政治家達の嗅覚によるもので、

(かれらはにっぽんじんのせいへきをどうさつし、)

彼等は日本人のセイヘキを洞察し、

(そのせいへきのなかにてんのうせいをはっけんしていた。)

そのセイヘキの中に天皇制を発見していた。

(それはてんのうけにかぎるものではない。)

それは天皇家に限るものではない。

(かわりえるものならば、こうしけでも)

代り得るものならば、孔子家でも

(しゃかけでもれーにんけでもかまわなかった。)

釈迦家でもレーニン家でも構わなかった。

(ただかわりえなかっただけである。)

ただ代り得なかっただけである。

(すくなくともにっぽんのせいじかたち)

すくなくとも日本の政治家達

(きぞくやぶしはじこのえいえんのりゅうせい)

(貴族や武士)は自己の永遠の隆盛

(それはえいえんではなかったが、)

(それは永遠ではなかったが、

(かれらはえいえんをゆめみたであろうを)

彼等は永遠を夢みたであろう)を

(やくそくするしゅだんとして)

約束する手段として

(ぜったいくんしゅのひつようをかぎつけていた。)

絶対君主の必要を嗅ぎつけていた。

(へいあんじだいのふじわらしはてんのうのようりつを)

平安時代の藤原氏は天皇の擁立を

(じぶんかってにやりながら、)

自分勝手にやりながら、

(じぶんがてんのうのかいであるのを)

自分が天皇の下位であるのを

(うたぐりもしなかったし、)

疑りもしなかったし、

(めいわくにもおもっていなかった。)

迷惑にも思っていなかった。

(てんのうのそんざいによって)

天皇の存在によって

(おいえそうどうのしょりをやり、)

御家騒動の処理をやり、

(おとうとはあにをやりこめ、あにはちちをやっつける。)

弟は兄をやりこめ、兄は父をやっつける。

(かれらはほんのうてきなじっしつしゅぎしゃであり、)

彼等は本能的な実質主義者であり、

(じぶんのいっしょうがたのしければよかったし、)

自分の一生が愉しければ良かったし、

(そのくせちょうぎをせいだいにして)

そのくせ朝儀を盛大にして

(てんのうをはいがするきみょうなけいしきがだいすきで、)

天皇を拝賀する奇妙な形式が大好きで、

(まんぞくしていた。てんのうをおがむことが、)

満足していた。天皇を拝むことが、

(じぶんじしんのいげんをしめし、また、みずからいげんを)

自分自身の威厳を示し、又、自ら威厳を

(かんじるしゅだんでもあったのである。)

感じる手段でもあったのである。

(われわれにとってはじっさいばかげたことだ。)

我々にとっては実際馬鹿げたことだ。

(われわれはやすくにじんじゃのしたをでんしゃがまがるたびに)

我々は靖国神社の下を電車が曲るたびに

(あたまをさげさせられるばからしさには)

頭を下げさせられる馬鹿らしさには

(へいこうしたが、あるしゅのひとびとにとっては、)

閉口したが、或種の人々にとっては、

(そうすることによってしか)

そうすることによってしか

(じぶんをかんじることができないので、)

自分を感じることが出来ないので、

(われわれはやすくにじんじゃについては)

我々は靖国神社に就ては

(そのばからしさをわらうけれども、)

その馬鹿らしさを笑うけれども、

(ほかのことがらについて、おなじような)

外の事柄に就て、同じような

(ばかげたことをじぶんじしんでやっている。)

馬鹿げたことを自分自身でやっている。

(そしてじぶんのばからしさには)

そして自分の馬鹿らしさには

(きづかないだけのことだ。)

気づかないだけのことだ。

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