私の薔薇を喰みなさい

(いばらのくきをのばしてたわめてわたしにこぼして)

茨の茎を伸ばして撓めて私に零して

(しずくのひとひら)

雫のひとひら

(しゅうえんをしってなお)

終焉を知ってなお

(さきいそぐつぼみのように)

咲き急ぐ莟のように

(なまみのしんぞうは)

生身の心臓は

(ひつぎをはいでる)

柩を這い出る

(しょうじょというあかし)

少女という証

(べにしゅすのほねがなく)

紅繻子の骨が鳴く

(うばいにおとなえ)

奪いに訪なえ

(だざいのゆびよ)

堕罪の指よ

(やみはつきとげはみつ)

闇は月　棘は蜜

(あやすもの)

あやすもの

(とざされためはさなぎ)

閉ざされた眼は蛹

(うかするゆめをみて)

羽化する夢を見て

(ひかりのがくをめくってさぐって)

光の萼を捲って探って

(やさしくつつんで)

やさしく包んで

(しゅんかんのときを)

瞬間の季節を

(らせんのさきへのぼってたぐって)

薇の先へ昇って手繰って

(はじめてふれあったばしょがひらかれるといきのあつさで)

初めて触れ合った場処が開かれる吐息の熱さで

(わたしのばらをさぁはみなさい)

私の薔薇を　さぁ喰みなさい

(たがえぬやくそくはあまやかなちをわける)

違えぬ約束は　甘やかな血を分ける

(ふしょくにしずめるみわくのしたで)

腐植に沈める　美惑の舌で

(はねをぬぐひふをはぐいたみなき)

翅根を脱ぐ　皮膚を剥ぐ　痛みなき

(まじわりにいみはないほしいならばおくへ)

交わりに意味はない　欲しいならば奥へ

(いばらのえだをからめてほどいて)

荊の枝を絡めて解いて

(わたしをちらしてしずくにひとひら)

私を散らして　滴にひとひら

(こころのふちをえぐってもぐって)

心の縁を抉って潜って

(だいじにだきしめて)

大事に抱きしめて

(とどまることなどできないとしても)

留まることなど　出来ないとしても

(あなたのばらであぁねむらせて)

あなたの薔薇で　あぁ眠らせて

(いきてることをしったばかりでも)

生きてることを　知ったばかりでも

(ひかりのまくにおぼれてくらんで)

光の膜に溺れて眩んで

(わたしはうもれるさかりのしげみに)

私は埋もれる　盛りの繁みに

(らせんのさきへのぼってたぐって)

薇の先へ昇って手繰って

(さいごにふれあったばしょがとけてゆくなみだのおもさで)

最後に触れ合った　場処が溶けてゆく　涙の重さで

(わたしのばらをさぁはみなさい)

私の薔薇を　さぁ喰みなさい