「吾輩は猫である」逸
著者 夏目漱石
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | subaru | 7228 | 王 | 7.6 | 94.2% | 337.0 | 2594 | 158 | 50 | 2024/11/19 |
2 | 饅頭餅美 | 5220 | B+ | 5.4 | 95.3% | 477.7 | 2622 | 128 | 50 | 2024/11/23 |
3 | もこもこ | 4873 | B | 5.1 | 95.5% | 513.0 | 2622 | 122 | 50 | 2024/11/20 |
4 | yu | 4862 | B | 5.1 | 94.9% | 503.0 | 2583 | 137 | 50 | 2024/12/13 |
5 | みみぢ | 2868 | E+ | 3.0 | 93.0% | 843.7 | 2614 | 194 | 50 | 2024/12/15 |
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問題文
(わがはいはねこである。なまえはまだない。)
吾輩は猫である。名前はまだ無い。
(どこでうまれたかとんとけんとうがつかぬ。)
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。
(なんでもうすぐらいじめじめしたところでにゃーにゃーないていたことだけはきおくしている。)
何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
(わがはいはここではじめてにんげんというものをみた。)
吾輩はここで始めて人間というものを見た。
(しかもあとできくとそれはしょせいというにんげんちゅうでいちばんどうあくなしゅぞくであったそうだ。)
しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。
(このしょせいというのはときどきわれわれをつかまえてにてくうというはなしである。)
この書生というのは時々我々を捕えて煮て食うという話である。
(しかしそのとうじはなんというかんがえもなかったからべつだんおそろしいともおもわなかった。)
しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。
(ただかれのてのひらにのせられてすーともちあげられたとき)
ただ彼の掌に載せられてスーと持ち上げられた時
(なんだかふわふわしたかんじがあったばかりである。)
何だかフワフワした感じがあったばかりである。
(てのひらのうえですこしおちついてしょせいのかおをみたのが)
掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのが
(いわゆるにんげんというもののみはじめであろう。)
いわゆる人間というものの見始であろう。
(このときみょうなものだとおもったかんじがいまでものこっている。)
この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。
(だいいちけをもってそうしょくされべきはずのかおがつるつるしてまるでやかんだ。)
第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで薬缶だ。
(そのごねこにもだいぶあったがこんなかたわにはいちどもでくわしたことがない。)
その後猫にもだいぶ逢ったがこんな片輪には一度も出会わした事がない。
(のみならずかおのまんなかがあまりにとっきしている。)
のみならず顔の真中があまりに突起している。
(そうしてそのあなのなかからときどきぷうぷうとけむりをふく。)
そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと煙を吹く。
(どうもむせぽくてじつによわった。)
どうも咽せぽくて実に弱った。
(これがにんげんののむたばこというものであることはようやくこのころしった。)
これが人間の飲む煙草というものである事はようやくこの頃知った。
(このしょせいのてのひらのうちでしばらくはよいこころもちにすわっておったが、)
この書生の掌の裏でしばらくはよい心持に坐っておったが、
(しばらくするとひじょうなそくりょくでうんてんしはじめた。)
しばらくすると非常な速力で運転し始めた。
(しょせいがうごくのかじぶんだけがうごくのかわからないがむやみにめがまわる。)
書生が動くのか自分だけが動くのか分らないが無暗に眼が廻る。
(むねがわるくなる。とうていたすからないとおもっていると、)
胸が悪くなる。到底助からないと思っていると、
(どさりとおとがしてめからひがでた。)
どさりと音がして眼から火が出た。
(それまではきおくしているがあとは)
それまでは記憶しているがあとは
(なんのことやらいくらかんがえだそうとしてもわからない。)
何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。
(ふときがついてみるとしょせいはいない。)
ふと気が付いて見ると書生はいない。
(たくさんおったきょうだいがいっぴきもみえぬ。)
たくさんおった兄弟が一疋も見えぬ。
(かんじんのははおやさえすがたをかくしてしまった。)
肝心の母親さえ姿を隠してしまった。
(そのうえいままでのところとはちがってむやみにあかるい。)
その上今までの所とは違って無暗に明るい。
(めをあいていられぬくらいだ。)
眼を明いていられぬくらいだ。
(はてななんでもようすがおかしいと、のそのそはいだしてみるとひじょうにいたい。)
はてな何でも容子がおかしいと、のそのそ這い出して見ると非常に痛い。
(わがはいはわらのうえからきゅうにささはらのなかへすてられたのである。)
吾輩は藁の上から急に笹原の中へ棄てられたのである。
(ようやくのおもいでささはらをはいだすとむこうにおおきないけがある。)
ようやくの思いで笹原を這い出すと向うに大きな池がある。
(わがはいはいけのまえにすわってどうしたらよかろうとかんがえてみた。)
吾輩は池の前に坐ってどうしたらよかろうと考えて見た。
(べつにこれというふんべつふんべつもでない。)
別にこれという分別ふんべつも出ない。
(しばらくしてないたらしょせいがまたむかえにきてくれるかとかんがえついた。)
しばらくして泣いたら書生がまた迎に来てくれるかと考え付いた。
(にゃー、にゃーとこころみにやってみたがだれもこない。)
ニャー、ニャーと試みにやって見たが誰も来ない。