よだかの星(2/4)宮沢賢治

・設問の文字数制限によりキリが悪くなる箇所、平仮名続きで読みづらい箇所は、平仮名を漢字に直しました
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | だだんどん | 6417 | S | 6.7 | 94.9% | 288.1 | 1954 | 105 | 36 | 2025/02/20 |
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問題文
(たかはおおきなはねをいっぱいにひろげて、じぶんのすのほうへとんでかえっていきました。)
鷹は大きなはねを一杯にひろげて、自分の巣の方へ飛んで帰って行きました。
(よだかは、じっとめをつぶってかんがえました。)
よだかは、じっと目をつぶって考えました。
((いったいぼくは、なぜこうみんなにいやがられるのだろう。)
(一たい僕は、なぜこうみんなにいやがられるのだろう。
(ぼくのかおは、みそをつけたようで、くちはさけてるからなあ。)
僕の顔は、味噌をつけたようで、口は裂けてるからなあ。
(それだって、ぼくはいままで、なんにもわるいことをしたことがない。)
それだって、僕は今まで、なんにも悪いことをしたことがない。
(あかんぼうのめじろがすからおちていたときは、たすけてすへつれていってやった。)
赤ん坊のめじろが巣から落ちていたときは、助けて巣へ連れて行ってやった。
(そしたらめじろは、あかんぼうをまるでぬすびとからとりかえすように)
そしたらめじろは、赤ん坊をまるでぬす人からとりかえすように
(ぼくからひきはなしたんだなあ。それからひどくぼくをわらったっけ。)
僕からひきはなしたんだなあ。それからひどく僕を笑ったっけ。
(それにああ、こんどはいちぞうだなんて、くびからふだをかけるなんて、)
それにああ、今度は市蔵だなんて、首からふだをかけるなんて、
(つらいはなしだなあ。))
つらいはなしだなあ。)
(あたりは、もううすくらくなっていました。よだかはすからとびだしました。)
あたりは、もううすくらくなっていました。夜だかは巣から飛び出しました。
(くもがいじわるくひかって、ひくくたれています。)
雲が意地悪く光って、低くたれています。
(よだかはまるでくもとすれすれになって、おとなくそらをとびまわりました。)
夜だかはまるで雲とすれすれになって、音なく空を飛びまわりました。
(それからにわかによだかはくちをおおきくひらいて、はねをまっすぐにはって、)
それからにわかによだかは口を大きくひらいて、はねをまっすぐに張って、
(まるでやのようにそらをよこぎりました。)
まるで矢のようにそらをよこぎりました。
(ちいさなはむしがいくひきもそののどにはいりました。)
小さな羽虫が幾匹もその咽喉(のど)にはいりました。
(からだがつちにつくかつかないうちに、)
からだがつちにつくかつかないうちに、
(よだかはひらりとまたそらへはねあがりました。)
よだかはひらりとまたそらへはねあがりました。
(もうくもはねずみいろになり、むこうのやまにはやまやけのひがまっかです。)
もう雲は鼠色になり、向うの山には山焼けの火がまっ赤です。
(よだかがおもいきってとぶときは、そらがまるでふたつにきれたようにおもわれます。)
夜だかが思い切って飛ぶときは、そらがまるで二つに切れたように思われます。
(いっぴきのかぶとむしが、よだかののどにはいって、)
一疋(いっぴき)の甲虫(かぶとむし)が、夜だかの咽喉にはいって、
(ひどくもがきました。よだかはすぐそれをのみこみましたが、)
ひどくもがきました。よだかはすぐそれを呑みこみましたが、
(そのときなんだかせなかがぞっとしたようにおもいました。くもはもうまっくろく、)
その時何だかせなかがぞっとしたように思いました。雲はもうまっくろく、
(ひがしのほうだけやまやけのひがあかくうつって、おそろしいようです。)
東の方だけ山やけの火が赤くうつって、恐ろしいようです。
(よだかはむねがつかえたようにおもいながら、またそらへのぼりました。)
よだかはむねがつかえたように思いながら、またそらへのぼりました。
(またいっぴきのかぶとむしが、よだかののどに、はいりました。そしてまるでよだかの)
また一疋の甲虫が、夜だかののどに、はいりました。そしてまるでよだかの
(のどをひっかいてばたばたしました。)
咽喉をひっかいてばたばたしました。
(よだかはそれをむりにのみこんでしまいましたが、そのとき、)
よだかはそれを無理にのみこんでしまいましたが、その時、
(きゅうにむねがどきっとして、よだかはおおごえをあげてなきだしました。)
急に胸がどきっとして、夜だかは大声をあげて泣き出しました。
(なきながらぐるぐるぐるぐるそらをめぐったのです。)
泣きながらぐるぐるぐるぐる空をめぐったのです。
((ああ、かぶとむしや、たくさんのはむしが、まいばんぼくにころされる。)
(ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される。
(そしてそのただひとつのぼくがこんどはたかにころされる。それがこんなにつらいのだ。)
そしてそのただ一つの僕がこんどは鷹に殺される。それがこんなにつらいのだ。
(ああ、つらい、つらい。ぼくはもうむしをたべないでうえてしのう。)
ああ、つらい、つらい。僕はもう虫を食べないで飢えて死のう。
(いやそのまえにもうたかがぼくをころすだろう。いや、そのまえに、)
いやその前にもう鷹が僕を殺すだろう。いや、その前に、
(ぼくはとおくのとおくのそらのむこうにいってしまおう。))
僕は遠くの遠くの空の向うに行ってしまおう。)
(やまやけのひは、だんだんみずのようにながれてひろがり、くももあかくもえているようです。)
山焼けの火は、だんだん水の様に流れて広がり、雲も赤く燃えているようです。