巨人の研究 -22-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(「だけどまだわからないことがおおすぎる。)

「だけどまだ分からないことが多すぎる。

(なぜじぶんがきょじんだとかんじてしまうのか。それがしんこうしたときになにがおこるのか。)

何故自分が巨人だと感じてしまうのか。それが進行した時に何が起こるのか。

(そのしょうどう、ほうこうのしゅたいはいったいなんなのか・・・・・)

その衝動、咆哮の主体は一体なんなのか・・・・・

(でもげんじてんですいそくできることがひとつある」)

でも現時点で推測できることが一つある」

(「それはなんですか」)

「それはなんですか」

(どきどきする。ししょうとであってからなんどかあじわったかわからないこうようかん。)

ドキドキする。師匠と出会ってから何度か味わったか分からない高揚感。

(「それはね」とししょうはぼくのほうをむいていった。)

「それはね」と師匠は僕の方を向いて言った。

(「そのしょうどう、ほうこうにえいきょうをうけているのはそういうよわいにんげんだけでは)

「その衝動、咆哮に影響を受けているのはそういう弱い人間だけでは

(ないんじゃないかってこと。ふゆうするれいたい。じばくされるたましい。)

ないんじゃないかってこと。浮遊する霊体。地縛される魂。

(にんげんのしごにあらわれるそうしたそんざいも、えいきょうをうけうるとかんがえている。)

人間の死後に現れるそうした存在も、影響を受けうると考えている。

(ゆうれいに、そのものがせいぜんしんじていたしゅうはのきょうもんやのりとをとなえると)

幽霊に、その者が生前信じていた宗派の経文や祝詞を唱えると

(くるしがったりいやがったりする。これはもちろん「ゆうれいはこういうものによわい」)

苦しがったり嫌がったりする。これはもちろん「幽霊はこういうものに弱い」

(というせいぜんのきおくがそうさせるんだ。そしてにんげんがこわがるものを)

という生前の記憶がそうさせるんだ。そして人間が怖がるものを

(おなじようにこわがるというぱたーんもおおい。いぬがそのだいひょうか。)

同じように怖がるというパターンも多い。犬がその代表か。

(そんなゆうれいにこのえたいのしれないそんざいからのほうこうはどうえいきょうされるのか」)

そんな幽霊にこの得体の知れない存在からの咆哮はどう影響されるのか」

(「おなじ、なんですか」)

「同じ、なんですか」

(「そうだ。にんげんとおなじように、このまちにそんざいするゆうれいも、)

「そうだ。人間と同じように、この街に存在する幽霊も、

(そのいちぶがこのきょじんかんかくしょうこうぐんとおなじしょうじょうにおちいっている」)

その一部がこの巨人感覚症候群と同じ症状に陥っている」

(そらはまだたかく、ゆうやみにはまだじかんがある。あすふぁるとは)

空はまだ高く、夕闇にはまだ時間がある。アスファルトは

(にっちゅうのねつをこもらせて、ぶあついくうきをあしもとからたちのぼらせている。)

日中の熱をこもらせて、分厚い空気を足元から立ちのぼらせている。

など

(なのに、どこからともなくさむけがひたひたとおしよせてきているきがした。)

なのに、どこからともなく寒気がひたひたと押し寄せて来ている気がした。

(「れいたいたちが、きょじんかをするとでもいうんですか」)

「霊体たちが、巨人化をするとでも言うんですか」

(ししょうは「ちがう」とくびをふった。)

師匠は「違う」と首を振った。

(「おまえはしっているはずだ。れいはあるべきすがたであらわれると。)

「お前は知っているはずだ。霊はあるべき姿で現れると。

(わかくうつくしいころのすがたであらわれるじょせいのれい。そのあとにころされたときの)

若く美しいころの姿で現れる女性の霊。その後に殺された時の

(ちまみれのすがたであらわれるばあい。せいめいかつどうがていしし、ふらんしたじょうたいであらわれるばあい。)

血まみれの姿で現れる場合。生命活動が停止し、腐乱した状態で現れる場合。

(ふはいがすすみ、がいこつとなったすがたであらわれるばあい。どれもありうる。)

腐敗が進み、骸骨となった姿で現れる場合。どれもありうる。

(えらぶのはれいじしんだ。おのれのあるべきすがたを。いきているにんげんのようには)

選ぶのは霊自身だ。己のあるべき姿を。生きている人間のようには

(このぶっしつてきへんぼうをとげるばあいもある。ししのぞうげんやごたいのへんけい。)

この物質的変貌を遂げる場合もある。四肢の増減や五体の変形。

(どうしょくぶつとのゆうごう。かいぶつか。さまざまなけーすがある。そんなれいが、)

動植物との融合。怪物化。様々なケースがある。そんな霊が、

(きょじんかんかくをえてしまったらどうなるか。そうぞうしてみるといい。)

巨人感覚を得てしまったらどうなるか。想像してみるといい。

(おのれのしゅういにあるものすべてがちいさい。ちいさい。ちいさい。)

己の周囲にあるものすべてが小さい。小さい。小さい。

(まるでちがうせかいにいるようだ。おのれがのぞんだわけでもないのに。)

まるで違う世界にいるようだ。己が望んだわけでもないのに。

(そのとき、あるべきすがたはなに?」)

その時、あるべき姿はなに?」

(さむけが。いしをもったようにからだじゅうをはいまわる。)

寒気が。意志を持ったように体中を這い回る。

(ししょうがぼくをためすようにみつめている。)

師匠が僕を試すように見つめている。

(「あるべきいすがたは・・・・・そのちいさなせかいにてきごうするためのからだ」)

「あるべきい姿は・・・・・その小さな世界に適合するための身体」

(ぼくはふるえるこえでつぶやく。そのあとをししょうがつぐ。)

僕は震える声で呟く。その後を師匠が継ぐ。

(「そうだ。そのためにみんなちいさくなる。)

「そうだ。そのためにみんな小さくなる。

(かれらはみな、きょじんであるがゆえに、こびとなんだ」)

彼らはみな、巨人であるがゆえに、小人なんだ」

(ししょうとぼくのあいだにあるわずかなくうかんを、みずしらずのひとびとがとおりぬけていく。)

師匠と僕の間にあるわずかな空間を、見ず知らずの人々が通り抜けていく。

(ぼくはいきをとめてそのしゅんかんにめにやきつける。)

僕は息を止めてその瞬間に目に焼き付ける。

(むかいあったししょうがまっすぐにこちらをみている。)

向かい合った師匠が真っ直ぐにこちらを見ている。

(こびとをみるひとがふえているということは、きょじんがふえているということだ。)

小人を見る人が増えているということは、巨人が増えているということだ。

(みずからじょうだんだとくしょうしたししょうのことばがあたまのなかによみがえる。)

自ら冗談だと苦笑した師匠の言葉が頭の中に蘇る。

(じょうだんだって?)

冗談だって?

(ただのほうべんだ。ししょうははじめからわかっていたにちがいない。)

ただの方便だ。師匠は始めから分かっていたに違いない。

(あんけーとでこびとをみたとこたえたひとたちが、ぜんいんゆうれいをみたことがあった)

アンケートで小人を見たと答えた人たちが、全員幽霊を見たことがあった

(ということもこれでせつめいがつく。かれらは、そしてこのぼくも、)

ということもこれで説明がつく。彼らは、そしてこの僕も、

(ただゆうれいをみていただけだったのだ。きょじんであるかのような)

ただ幽霊を見ていただけだったのだ。巨人であるかのような

(さっかくをえてしまったがために、こびとになってしまったれいたいを。)

錯覚を得てしまったがために、小人になってしまった霊体を。

(だからもくげきれいがぱたーんかされない。)

だから目撃例がパターン化されない。

(ゆうれいのあらわれかたなど、それこそせんさばんべつだからだ。)

幽霊の現れ方など、それこそ千差万別だからだ。

(ししょうはこうぎしゅうりょうとでもいいたげなひょうじょうをうかべ、ふたたびまえをむくとあるきはじめる。)

師匠は講義終了とでも言いたげな表情を浮かべ、再び前を向くと歩き始める。

(ぼくはそれをぼうぜんをみている。)

僕はそれを呆然を見ている。

(そのまわりをたくさんのひとびとがゆきかっている。だれもぼくらのことをみていない。)

その周りを沢山の人々が行き交っている。誰も僕らのことを見ていない。

(すーつすがたのししょうがじてんしゃのこうりんにたちのりしていたときに)

スーツ姿の師匠が自転車の後輪に立ち乗りしていた時に

(あれほどあつまっていたしせんが、いまはもうない。)

あれほど集まっていた視線が、今はもうない。

(おんながひとりただあるいているだけでは、おおどおりのなかのとるにたりない)

女が一人ただ歩いているだけでは、大通りの中の取るに足りない

(けしきのひとつにすぎないとでもいうように。)

景色の一つに過ぎないとでも言うように。

(けれどぼくはざっとうのなかでたちどまり、じてんしゃのはんどるをささえたまま、)

けれど僕は雑踏の中で立ち止まり、自転車のハンドルを支えたまま、

(かのじょのうしろすがたをみつめている。)

彼女の後ろ姿を見つめている。

(どうしてみんなはみていないのだろう。ぼくとおなじように。)

どうしてみんなは見ていないのだろう。僕と同じように。

(しんじられなかったのだ。)

信じられなかったのだ。

(このひとをしらないで、へいきでいられるせかいが。)

この人を知らないで、平気でいられる世界が。

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