忘却のクオーレ

(はじめてしるむねのくうはくとおいむかしにおとした)

初めて知る胸の空白　遠い昔に落とした

(そううめられないこのつうかくをひとはいのちとよんだのだろう)

そう埋められないこの痛覚を　人はイノチと呼んだのだろう

(ならこたえはひとつだろうおっことしたままのぺーじに)

なら答えは一つだろう　落っことしたのページに

(かんしょくのないこのりょうきゃくではるかちのはてまであいにいこう)

感触のないこの両脚で　はるか地の果てまで会いに行こう

(かのうせいをおいもとめたすえにひとびとはおぼれ)

可能性を追い求めた末に　人々は溺れ

(かみさまにもみはなされたじょうほうのかいじょうでかなしみもいかりもかれるほどに)

神様にも見放された情報の海上で　悲しみも怒りも枯れるほどに

(だれもいつしかきづけばじぶんじしんをわすれてた)

誰もいつしか気づけば　自分自身を忘れてた

(きみとぼくのきょりのあいだにはふさぎこんだどあがたってて)

君と僕の距離の間には　塞ぎ込んだドアが立ってて

(こじあけることもこわすこともいまのぼくはできない)

抉じ開けることも壊すことも　今の僕はできない

(なまえといみがあったよななつかしいかんじょうのでーたに)

名前と意味があったよな　懐かしい感情のデータに

(ないはずのこころがそっといっしゅんきおくのかたすみでしずかにこきゅうした)

ないはずの心がそっと一瞬　記憶の片隅で静かに呼吸した

(かこにきいたかぜのたよりこどくにはかてないらしい)

過去に聞いた風の便り　孤独には勝てないらしい

(じゃあなぜそれをうめようとしてひとはいのちをみすてたの)

じゃあなぜそれを埋めようとして　人はイノチを見捨てたの

(ならこのせかいにはもうこどくなんていないでしょう)

ならこの世界には　もう孤独なんていないでしょう

(どうりにあわないこのそうしつもいつかはれるひびがくるのかな)

道理に合わないこの喪失も　いつか晴れる日々が来るのかな

(かがやくめにうかびおちていくひとつぶのしずくこのまちにはそれらしいものはないけれど)

輝く目に浮かび落ちていく一粒の雫　この廃都にはこれらしいものはないけれど

(このほしのどこかでみかけたような)

この星の何処かで見かけたような

(あかるいでもくらいそのいろをどういうわけかおぼえている)

明るいでも暗いその色を　どういうわけか覚えている

(ふたつのあしもとをおうのにはたよりないきえそうならんぷで)

2つの足元を追うのには　頼りない消えそうなランプで

(ひざをかかえてはくるはずのないあさをまちのぞんでいた)

膝を抱えては来るはずのない　朝を待ち望んでいた

(かかえこむにはおおすぎておきざりにしたことばが)

抱え込むには多すぎて　置き去りにした言葉が

(みゃくをうつかのようにそっといっしゅんきおくのかたすみでかすかにえこーした)

脈を打つかのようにそっと　一瞬記憶の片隅でエコーした

(よびあうかのようにこうさするむねのおくのしぐなる)

呼び合うかのように交差する　胸の奥のシグナル

(くらやみでさえもなりつづけるそれをせいめいとなづけよう)

暗闇でさえも鳴り続ける　それをセイメイと名付けよう

(めにはみえないようだけどひびくしいんぞうさえあればいい)

目には見えないようだけど　響くシンゾウさえあればいい

(まるでしってたみたいだったこのこどうはなんらかのまちがいじゃないとして)

まるで知ってたみたいだった　この鼓動は何らかの間違いじゃないとして

(ならいのちいがいないだろう)

ならイノチ以外ないだろう