中島敦「鏡花の文章」 2

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中島敦「鏡花の文章」より引用
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問題文

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(きょうかしこそは、まことにことばのまじゅつし。かんじょうそうしょくのげんじゅつしゃ。)

鏡花氏こそは、まことに言葉の魔術師。感情装飾の幻術者。

(「けしつぶをりんごのごとくみすというけれんのうつわ」と)

「芥子粒を林檎のごとく見すという欺罔の器」と

(「はらいそのそらをものぞく、のびちぢむきなるめがね」とをもった)

「波羅葦僧の空をも覗く、伸び縮む奇なる目鏡」とを持った

(きかいなようじゅつしである。)

奇怪な妖術師である。

(しのげいじゅつはいっこのますいざいであり、あへんであるともいえよう。)

氏の芸術は一箇の麻酔剤であり、阿片であるともいえよう。

(じじつ、しのげいじゅつきょうは、にほんぶんがくちゅうにあってとくいなものであるばかりでなく、)

事実、氏の芸術境は、日本文学中にあって得意なものであるばかりでなく、

(またせかいぶんがくちゅうにおいてもゆにいくなものといえるであろう。)

又世界文学中に於いてもユニイクなものと言えるであろう。

(そのしんぴせいにおいて、ぽおかれのかがくせいはまったくなしとするもにまさり、)

その神秘性に於て、ポオ(彼の科学性はまったくなしとするも)にまさり、

(そのひょうびょうたるじょうちょにおいてはるかにほふまんをしのぐものがあるとかんがえるのは)

その縹渺たる情緒に於てはるかにホフマンを凌ぐものがあると考えるのは

(たんなるわたしのおもいすごしであろうか。)

単なる私の思いすごしであろうか。

(くうそうてきなるもののなかの、もっともくうそうてきなもの、ろまんてきなるもののなかの、)

空想的なるものの中の、最も空想的なもの、浪漫的なるものの中の、

(もっともろまんてきなもの、じょうちょてきもちろんにほんてきなもののなかで、もっともじょうちょてきなもの、)

最も浪漫的なもの、情緒的(勿論日本的な)ものの中で、最も情緒的なもの、

(それらがあいよりあいあつまって、)

――それらが相寄り相集って、

(ここにゆうぜつ・かいきをきわめたきょうかせかいなるものをつくりだす。)

ここに幽絶・怪奇を極めた鏡花世界なるものを造り出す。

(そこではしゅうおなげんじつはすべて、しのほんぽうなくうそうのまえにすがたをひそめて、)

其処では羞悪な現実はすべて、氏の奔放な空想の前に姿をひそめて、

(ただ、しいっこのしんびがん、もしくはせいぎかんにてらされて、)

ただ、氏一箇の審美眼、もしくは正義感に照らされて、

(「び」あるいは「せい」とおもわれるもののみがじゅうおうにかつやくする。)

「美」あるいは「正」と思われるもののみが縦横に活躍する。

(そこにとうじょうするおんなは、げじょのすえといえども、)

そこに登場する女は、下女の末といえども、

(ことごとく、いろがぬけるようにしろくなければならぬ。)

悉く、色が抜けるように白くなければならぬ。

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