太宰治 「桜桃」 1

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問題文
(こどもよりおやがだいじ、とおもいたい。)
子供より親が大事、と思いたい。
(こどものために、などとこふうなどうがくしゃみたいなことをしゅしょうらしくかんがえてみても、)
子供のために、などと古風な道学者みたいな事を殊勝らしく考えてみても、
(なに、こどもよりも、そのおやのほうがよわいのだ。)
何、子供よりも、その親のほうが弱いのだ。
(すくなくとも、わたしのかていにおいては、そうである。)
少なくとも、私の家庭においては、そうである。
(まさか、じぶんがろうじんになってから、)
まさか、自分が老人になってから、
(こどもにたすけられ、せわになろうなどというずうずうしいむしのよいこころは、)
子供に助けられ、世話になろうなどという図々しい虫のよい心は、
(まったくもちあわせていないけれども、)
まったく持ち合わせていないけれども、
(このおやは、そのかていにおいて、)
この親は、その家庭において、
(つねにこどもたちのごきげんばかりうかがっている。)
常に子供たちのご機嫌ばかり伺っている。
(こども、といっても、わたしのところのこどもたちは、みなまだひどくおさない。)
子供、といっても、私のところの子供たちは、皆まだひどく幼い。
(ちょうじょはななさい、ちょうなんはよんさい、じじょはいっさいである。)
長女は七歳、長男は四歳、次女は一歳である。
(それでも、すでにそれぞれ、りょうしんをあっとうしかけている。)
それでも、既にそれぞれ、両親を圧倒し掛けている。
(ちちとははは、さながらこどもたちげなんげじょのおもむきをていしているのである。)
父と母は、さながら子供たち下男下女の趣を呈しているのである。
(なつ、かぞくぜんぶさんじょうまにあつまり、だいにぎやか、だいこんらんのゆうしょくをしたため、)
夏、家族全部三畳間に集まり、大にぎやか、大混乱の夕食をしたため、
(ちちはたおるでやたらにかおのあせをふき、)
父はタオルでやたらに顔の汗を拭き、
(「めしくっておおあせかくもげひたこと、とやなぎたるにあったけれども、)
「めし食って大汗かくもげひた事、と柳多留にあったけれども、
(どうも、こんなにこどもたちがうるさくては、)
どうも、こんなに子供たちがうるさくては、
(いかにおじょうひんなおとうさんといえども、あせがながれる」)
いかにお上品なお父さんといえども、汗が流れる」
(と、ひとりぶつぶつふへいをいいだす。)
と、ひとりぶつぶつ不平を言い出す。