蜘蛛の糸 3/3

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投稿者投稿者邪王真眼いいね2お気に入り登録
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芥川龍之介の蜘蛛の糸です
難しい漢字にふりがなを振ってあります。
是非やってみてください。

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問題文

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(このぶんでのぼっていけば、じごくからぬけだすのも、ぞんがいわけが)

この分でのぼって行けば、地獄からぬけ出すのも、存外わけが

(ないかもしれません。かんだたはりょうてをくものいとに)

ないかも知れません。カンダタは両手を蜘蛛の糸に

(からみながら、ここへきてからなんねんにもだしたことのないこえで、)

からみながら、ここへ来てから何年にも出した事のない声で、

(「しめた。しめた。」とわらいました。ところがふときが)

「しめた。しめた。」と笑いました。ところがふと気が

(つきますと、くものいとのしたのほうには、かずかぎりもないざいにんたちが、)

つきますと、蜘蛛の糸の下の方には、数限もない罪人たちが、

(じぶんののぼったあとをつけて、まるでありのぎょうれつのように、)

自分ののぼった後をつけて、まるで蟻の行列のように、

(やはりうえへうえへいっしんによじのぼってくるではございませんか。)

やはり上へ上へ一心によじのぼって来るではございませんか。

(かんだたはこれをみると、おどろいたのとおそろしいのとで、)

カンダタはこれを見ると、驚いたのと恐しいのとで、

(しばらくはただ、ばかのようにおおきなくちをひらいたまま、)

しばらくはただ、莫迦(ばか)のように大きな口を開いたまま、

(めばかりうごかしておりました。じぶんひとりでさえたたれそうな、)

眼ばかり動かして居りました。自分一人でさえ断れそうな、

(このほそいくものいとが、どうしてあれだけのにんずうのおもみに)

この細い蜘蛛の糸が、どうしてあれだけの人数の重みに

(たえることができましょう。もしまんいちとちゅうでたたれたと)

堪える事が出来ましょう。もし万一途中で断れたと

(いたしましたら、せっかくここへまでのぼってきたこのかんじんな)

致しましたら、折角ここへまでのぼって来たこの肝腎な

(じぶんまでも、もとのじごくへさかおとしにおちてしまわなければ)

自分までも、元の地獄へ逆落(さかおと)しに落ちてしまわなければ

(なりません。そんなことがあったら、たいへんでございます。)

なりません。そんな事があったら、大変でございます。

(が、そういううちにも、ざいにんたちはなんびゃくとなくなんぜんとなく、)

が、そう云う中(うち)にも、罪人たちは何百となく何千となく、

(まっくらなちのいけのそこから、うようよとはいあがって、)

まっ暗な血の池の底から、うようよと這い上って、

(ほそくひかっているくものいとを、いちれつになりながら、せっせと)

細く光っている蜘蛛の糸を、一列になりながら、せっせと

(のぼってまいります。いまのうちにどうかしなければ、いとは)

のぼって参ります。今の中(うち)にどうかしなければ、糸は

(まんなかからふたつにたたれて、おちてしまうのにちがいありません。)

まん中から二つに断れて、落ちてしまうのに違いありません。

など

(そこでかんだたはおおきなこえをだして、「こら、ざいにんども。)

そこでカンダタは大きな声を出して、「こら、罪人ども。

(このくものいとはおのれのものだぞ。おまえたちはいったいだれにきいて、)

この蜘蛛の糸は己のものだぞ。お前たちは一体誰に尋(き)いて、

(のぼってきた。おりろ。おりろ。」とわめきました。)

のぼって来た。下りろ。下りろ。」と喚きました。

(そのとたんでございます。いままでなんともなかったくものいとが、)

その途端でございます。今まで何ともなかった蜘蛛の糸が、

(きゅうにかんだたのぶらさがっているところから、ぷつりとおとをたてて)

急にカンダタのぶら下っている所から、ぷつりと音を立てて

(たたれました。ですからかんだたもたまりません。あっというまも)

断れました。ですからカンダタもたまりません。あっと云う間も

(なくかぜをきって、こまのようにくるくるまわりながら、)

なく風を切って、独楽のようにくるくるまわりながら、

(みるみるうちにやみのそこへ、まっさかさまにおちてしまいました。)

見る見る中(うち)に暗(やみ)の底へ、まっさかさまに落ちてしまいました。

(あとにはただごくらくのくものいとが、きらきらとほそくひかりながら、)

後にはただ極楽の蜘蛛の糸が、きらきらと細く光りながら、

(つきもほしもないそらのちゅうとに、みじかくたれているばかりでございます。)

月も星もない空の中途に、短く垂れているばかりでございます。

(おしゃかさまはごくらくのはすいけのふちにたって、このいちぶしじゅうをじっと)

御釈迦様は極楽の蓮池のふちに立って、この一部始終をじっと

(みていらっしゃいましたが、やがてかんだたがちのいけのそこへ)

見ていらっしゃいましたが、やがてカンダタが血の池の底へ

(いしのようにしずんでしまいますと、かなしそうなおかおを)

石のように沈んでしまいますと、悲しそうな御顔を

(なさりながら、またぶらぶらおあるきになりはじめました。)

なさりながら、またぶらぶら御歩きになり始めました。

(じぶんばかりじごくからぬけだそうとする、かんだたのむじひな)

自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、カンダタの無慈悲な

(こころが、そうしてそのこころそうとうなばつをうけて、もとのじごくへおちて)

心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちて

(しまったのが、おしゃかさまのおめからみると、あさましく)

しまったのが、御釈迦様の御目から見ると、浅間しく

(おぼしめされたのでございましょう。しかしごくらくのはすいけのはすは、)

思召(おぼしめ)されたのでございましょう。しかし極楽の蓮池の蓮は、

(すこしもそんなことにはとんちゃくいたしません。そのたまのようなしろいはなは、)

少しもそんな事には頓着致しません。その玉のような白い花は、

(おしゃかさまのおあしのまわりに、ゆらゆらがくをうごかして、)

御釈迦様の御足のまわりに、ゆらゆら萼(がく)を動かして、

(そのまんなかにあるきんいろのしべからは、なんともいえないいいにおいが、)

そのまん中にある金色の蕊(しべ)からは、何とも云えない好い匂が、

(たえまなくあたりへあふれております。)

絶間なくあたりへ溢れて居ります。

(ごくらくももうひるにちかくなったのでございましょう。)

極楽ももう午(ひる)に近くなったのでございましょう。

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