O・ヘンリー「賢者の贈り物」4/5

(どあがひらき、じむがはいり、どあをしめました。じむはやせていて、きまじめな)

ドアが開き、ジムが入り、ドアを閉めました。ジムはやせていて、生真面目な

(かおつきをしていました。かわいそうに、まだ２２さいなのにかれはかていをせおって)

顔つきをしていました。かわいそうに、まだ２２歳なのに彼は家庭を背負って

(いるのです。あたらしいおーばーもひつようだし、てぶくろもしていませんでした。)

いるのです。新しいオーバーも必要だし、手袋もしていませんでした。

(じむは、どあのうちでたちどまりました。うずらのにおいにじっとしているりょうけんと)

ジムは、ドアの内で立ち止まりました。うずらの匂いにじっとしている猟犬と

(おなじように、そのままうごきませんでした。じむのめはでらにくぎづけでした。)

同じように、そのまま動きませんでした。ジムの目はデラに釘付けでした。

(そしてそのめにはよみとることのできないかんじょうがこめられていて、でらはこわく)

そしてその目には読み取ることのできない感情が込められていて、デラは恐く

(なってしまいました。それはふんぬではなく、きょうたんでもなく、きょひでもなく、)

なってしまいました。それは憤怒ではなく、驚嘆でもなく、拒否でもなく、

(きょうふでもなく、でらがこころしていたどんなかんじょうでもありませんでした。じむはかおに)

恐怖でもなく、デラが心していたどんな感情でもありませんでした。ジムは顔に

(そのきみょうなひょうじょうをうかべながら、ただ、じっとでらをみつめていたのです。)

その奇妙な表情を浮かべながら、ただ、じっとデラを見つめていたのです。

(でらはてーぶるをまわってじむのほうへあゆみよりました。)

デラはテーブルを回ってジムの方へ歩み寄りました。

(「じむ、ねえ、あなた」でらはこえをあげました。「そんなかおしてみないで。)

「ジム、ねえ、あなた」デラは声をあげました。「そんな顔して見ないで。

(かみのけはきって、うっちゃったの。だって、あなたにぷれぜんとひとつあげずに)

髪の毛は切って、売っちゃったの。だって、あなたにプレゼント一つあげずに

(くりすますをすごすなんてぜったいできないんだもの。かみはまたのびるわきにしない)

クリスマスを過ごすなんて絶対できないんだもの。髪はまた伸びるわ気にしない

(でしょ？こうしなきゃだめだったの。ほら、わたしのかみってすごくはやくのびるし)

でしょ？こうしなきゃ駄目だったの。ほら、わたしの髪ってすごく早く伸びるし

(「めりーくりすます」っていってよ、じむ。そしてたのしくすごしましょ。)

『メリー・クリスマス』って言ってよ、ジム。そして楽しく過ごしましょ。

(どんなにきれいですてきなぷれぜんとをあなたによういしたか、あてられないわよ」)

どんなに綺麗で素敵なプレゼントをあなたに用意したか、当てられないわよ」

(「かみをきったって？」とじむはくろうしつつたずねました。まるで、けんめいに)

「髪を切ったって？」とジムは苦労しつつ尋ねました。まるで、懸命に

(あたまをはたらかせてもめいはくなじじつにたどりつけないようなありさまでした。)

頭を働かせても明白な事実にたどり着けないようなありさまでした。

(「きって、うっちゃったの」とでらはいいました。「それでも、わたしのこと、)

「切って、売っちゃったの」とデラは言いました。「それでも、わたしのこと、

(かわらずにすきでいてくれるわよね。かみがなくても、わたしはわたしよね？」)

変わらずに好きでいてくれるわよね。髪がなくても、わたしはわたし…よね？」