楠山正雄「ジャックと豆の木」7/8

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(さて、ばんめしがすむと、おおおとこはおかみさんに、「にわとりはとられる、きんのふくろ、)

さて、晩飯がすむと、大男はお上さんに、「にわとりはとられる、金の袋、

(ぎんのふくろはぬすまれる、しかたがない、こんやははーぷでもならすかな。」)

銀の袋はぬすまれる、しかたがない、今夜はハープでもならすかな。」

(といいました。じゃっくが、そっとおかまのふたをあけてのぞいてみますと、)

といいました。ジャックが、そっとお釜のふたをあけてのぞいてみますと、

(たまでかざった、みごとなはーぷのたてごとがめにはいりました。おにのおおおとこは、)

玉でかざった、みごとなハープのたて琴が目にはいりました。鬼の大男は、

(はーぷをてーぶるのうえにのせて、「なりだせ。」といいました。すると、)

ハープをテーブルの上にのせて、「なりだせ。」といいました。すると、

(はーぷは、ひとりでになりだしました。しかもそのおとのうつくしいことと)

ハープは、ひとりでになりだしました。しかもその音のうつくしいことと

(いったら、どんながっきだって、とてもこれだけのおとにはひびかないほど)

いったら、どんな楽器だって、とてもこれだけの音にはひびかないほど

(でしたから、じゃっくは、きんのたまごのにわとりよりも、きんとぎんとの)

でしたから、ジャックは、金のたまごのにわとりよりも、金と銀との

(いっぱいつまったふくろよりも、もっともっと、このはーぷがほしくなりました。)

いっぱいつまった袋よりも、もっともっと、このハープがほしくなりました。

(するうち、はーぷのおんがくを、たのしいこもりうたにして、さすがのおにが、)

するうち、ハープの音楽を、たのしい子守うたにして、さすがの鬼が、

(いいこころもちにねむってしまいました。じゃっくは、しめたとおもって、)

いい心もちにねむってしまいました。ジャックは、しめたとおもって、

(そっとおかまのなかからぬけだすと、すばやくはーぷをかかえてにげだしました。)

そっとお釜の中からぬけだすと、すばやくハープをかかえてにげだしました。

(ところが、あいにく、このはーぷには、まほうがしかけてあって、とたんに、)

ところが、あいにく、このハープには、魔法がしかけてあって、とたんに、

(おおきなこえで、「おきろよ、だんなさん、おきろよ、だんなさん。」と、)

大きな声で、「おきろよ、だんなさん、おきろよ、だんなさん。」と、

(どなりました。これで、おおおとこもめをさましました。むうんとたちあがってみると)

どなりました。これで、大男も目をさましました。むうんと立ち上がってみると

(ちっぽけなこぞうが、おおきなはーぷを、やっこらさとかかえて、にげていくのが)

ちっぽけな小僧が、大きなハープを、やっこらさとかかえて、にげて行くのが

(みえました。「まてこぞう、きさま、にわとりをぬすんで、きんのふくろ、ぎんのふくろを)

みえました。「待て小僧、きさま、にわとりをぬすんで、金の袋、銀の袋を

(ぬすんで、こんどははーぷまでぬすむのかあ。」と、おおおとこはわめきながら、)

ぬすんで、こんどはハープまでぬすむのかあ。」と、大男はわめきながら、

(あとをおっかけました。「つかまるならつかまえてみろ。」)

あとを追っかけました。「つかまるならつかまえてみろ。」

(じゃっくは、まけずにどなりながら、それでもいっしょうけんめいかけました。)

ジャックは、まけずにどなりながら、それでもいっしょうけんめいかけました。

など

(おおおとこも、おさけによったあしをふみしめふみしめ、よたよたはしりました。)

大男も、お酒によった足をふみしめふみしめ、よたよたはしりました。

(そのあいだ、はーぷは、たえず、からんからん、なりつづけました。)

そのあいだ、ハープは、たえず、からんからん、なりつづけました。

(やっとこさと、まめのきのはしごのところまでくると、じゃっくは、はーぷにむかって)

やっとこさと、豆の木のはしごの所までくると、ジャックは、ハープにむかって

(「もうやめろ。」といいますと、それなりはーぷはだまりました。じゃっくは、)

「もうやめろ。」といいますと、それなりハープはだまりました。ジャックは、

(はーぷをかかえて、まめのきのはしごをおりはじめました。はるかめのしたに、)

ハープをかかえて、豆の木のはしごをおりはじめました。はるか目の下に、

(おかあさんが、こやのまえにたって、なきはらしためで、そらをみつめていました。)

おかあさんが、こやの前に立って、泣きはらした目で、空をみつめていました。

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