シャーロック・ホームズの事件簿 高名な依頼人7

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投稿者投稿者大樹野いいね4お気に入り登録
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シャーロック・ホームズの事件簿より
長文なので、読書感覚でお楽しみください

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問題文

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(「ある。しんうぇる・じょんそんにあのおんなをひなんさせるようにいってくれ。)

「ある。シンウェル・ジョンソンにあの女を避難させるように言ってくれ。

(あのひどいやつらがいまかのじょをおっているだろう。)

あのひどい奴らが今彼女を追っているだろう。

(かれらはもちろん、かのじょがこのじけんでぼくのみかたをしたとしっている。)

彼らはもちろん、彼女がこの事件で僕の味方をしたと知っている。

(もしかれらがだいたんにもぼくをこうげきするならかのじょをほうっておくことはかんがえにくい。)

もし彼らが大胆にも僕を攻撃するなら彼女を放っておくことは考えにくい。

(これはきんきゅうだ。こんややってくれ」「いますぐいくよ。ほかには?」)

これは緊急だ。今夜やってくれ」「今すぐ行くよ。他には?」

(「てーぶるにぱいぷとたばこのはいったすりっぱをおいてくれ。それでいい!)

「テーブルにパイプと煙草の入ったスリッパを置いてくれ。それでいい!

(まいあさきてくれ、それでけいかくをねろう」わたしはじょんそんとそのよる、)

毎朝来てくれ、それで計画を練ろう」私はジョンソンとその夜、

(みす・うぃんたーをめだたないこうがいにつれていき、)

ミス・ウィンターを目立たない郊外に連れて行き、

(きけんがさるまでなりをひそめているようにみはるてはずをととのえた。)

危険が去るまでなりを潜めているように見張る手はずを整えた。

(むいかかん、いっぱんのひとはほーむずがしのふちにあるようないんしょうをもっていた。)

六日間、一般の人はホームズが死の淵にあるような印象を持っていた。

(そくほうにはひじょうにしんこくで、しんぶんにはふきつなきじがのっていた。)

速報には非常に深刻で、新聞には不吉な記事が載っていた。

(わたしはひんぱんにあってきずがそれほどひどくはないことをかくしんしていた。)

私は頻繁に会って傷がそれほどひどくはないことを確信していた。

(がんじょうなからだとだんことしたいしがかれのとっこうやくだった。かれはきゅうそくにかいふくしていた。)

頑丈な体と断固とした意思が彼の特効薬だった。彼は急速に回復していた。

(そしてときどき、かれはわたしまでごまかし、じっさいにはもっとかいふくしている)

そして時々、彼は私までごまかし、実際にはもっと回復している

(のではないかというぎねんがわいた。かれのきみょうなひみつめいたせいかくは、)

のではないかという疑念が沸いた。彼の奇妙な秘密めいた性格は、

(おおくのげきてきなこうかをもたらしてきたが、もっともしたしいゆうじんにさえ、)

多くの劇的な効果をもたらしてきたが、最も親しい友人にさえ、

(ぐたいてきになにをくわだてているのかあかさなかった。)

具体的に何を企てているのか明かさなかった。

(かれは、さくをねったにんげんいがいにあんぜんなさくしはいないというきょくたんなげんそくにまで)

彼は、策を練った人間以外に安全な策士はいないという極端な原則にまで

(たっしていた。わたしはほかのだれよりもかれにちかいところにいたが、)

達していた。私は他の誰よりも彼に近いところにいたが、

(それでもいつもすきまがあることをかんじてきた。)

それでもいつも隙間がある事を感じてきた。

など

(なのかめにばっしされた。そのひのゆうかんにはたんどくがおきたというきじが)

七日目に抜糸された。その日の夕刊には丹毒が起きたという記事が

(でていた。おなじゆうかんに、ともかくほーむずにつたえておかねばならない)

出ていた。同じ夕刊に、ともかくホームズに伝えておかねばならない

(きじがのっていた。それはりばぷーるからきんようびにしゅっぱつする)

記事が載っていた。それはリバプールから金曜日に出発する

(きゅーなーどきせんのるりたにあごうのじょうきゃくのなかにあでるばーと・ぐらなーの)

キューナード汽船のルリタニア号の乗客の中にアデルバート・グラナーの

(なまえがあったことだけだった。かれはもくぜんにひかえたみす・ヴぁいおれっと・)

名前があったことだけだった。彼は目前に控えたミス・ヴァイオレット・

(ど・めるヴぃるとのけっこんしきのまえに、あめりかにおいて、)

ド・メルヴィルとの結婚式の前に、アメリカにおいて、

(じゅうようなざいせいじょうのもんだいでちょうていがひつようとなった。かのじょのちちおやは・・・などなど。)

重要な財政上の問題で調停が必要となった。彼女の父親は・・・等々。

(ほーむずはあおじろいかおにくいいるようなひょうじょうをうかべて、)

ホームズは青白い顔に食い入るような表情を浮かべて、

(このはなしにみみをかたむけていた。そのひょうじょうで、これがかれにとって)

この話に耳を傾けていた。その表情で、これが彼にとって

(ひどいいたでだったことがわかった。)

ひどい痛手だったことが分かった。

(「きんようび!」かれはさけんだ。「まるみっかしかない。)

「金曜日!」彼は叫んだ。「丸三日しかない。

(ぼくにはかれがきけんからのがれるつもりだというかくしんがある。)

僕には彼が危険から逃れるつもりだという確信がある。

(だがのがさん、わとそん!ちかって、のがさんぞ!)

だが逃がさん、ワトソン!誓って、逃がさんぞ!

(これから、わとそん、ぼくのためにやってほしいことがあるんだ」)

これから、ワトソン、僕のためにやって欲しいことがあるんだ」

(「そのためにここにきているんだ、ほーむず」)

「そのためにここに来ているんだ、ホームズ」

(「よし、それでは、これから24じかん、ちゅうごくじきをてっていてきにべんきょうしてくれ」)

「よし、それでは、これから24時間、中国磁器を徹底的に勉強してくれ」

(かれはなにのせつめいもしなかったし、わたしもなにもたずねなかった。)

彼は何の説明もしなかったし、私も何も尋ねなかった。

(ながいけいけんでわたしはだまってかれのいうことをきくというちえをみにつけていた。)

長い経験で私は黙って彼の言う事を聞くという知恵を身につけていた。

(しかしわたしはかれのへやをでてべーかーがいをあるいていたとき、なぜこんなきみょうな)

しかし私は彼の部屋を出てベーカー街を歩いていた時、なぜこんな奇妙な

(しれいをすいこうするひつようがあるのかというぎもんがあたまのなかをめぐっていた。)

指令を遂行する必要があるのかという疑問が頭の中を巡っていた。

(さいごにわたしはせんとじょーんずすくえあのろんどんとしょかんまでばしゃでいき、)

最後に私はセントジョーンズスクエアのロンドン図書館まで馬車で行き、

(ふくとしょしのろーまっくすにこのことをつげ、そしてぶあついほんを)

副図書士のローマックスにこの事を告げ、そして分厚い本を

(わきにかかえてじぶんのいえへとむかった。)

脇に抱えて自分の家へと向かった。

(べんごしはひっしでじけんについてつめこめば、げつようびにせんもんかのしょうにんを)

弁護士は必死で事件について詰め込めば、月曜日に専門家の証人を

(じんもんすることができるが、どようびがくるまえにつめこんだちしきを)

尋問することが出来るが、土曜日が来る前に詰め込んだ知識を

(ぜんぶわすれるといわれている。もちろんわたしはいまとうじきのせんもんかを)

全部忘れると言われている。もちろん私は今陶磁器の専門家を

(きどりたいわけではない。それでもそのゆうがたちゅうずっと、そしていちど)

気取りたいわけではない。それでもその夕方中ずっと、そして一度

(すこしやすんだだけでそのよるのあいだじゅう、そしてつぎのひのごぜんちゅういっぱい、)

少し休んだだけでその夜の間中、そして次の日の午前中一杯、

(わたしはちしきをきゅうしゅうしなまえをおぼえることにつとめた。そこでわたしは、)

私は知識を吸収し名前を覚えることに努めた。そこで私は、

(いだいなげいじゅつかたちのとくちょうや、ふしぎなかんれきほう、こうぶていじだいのしるしや)

偉大な芸術家たちの特徴や、不思議な還暦法、洪武帝時代の印や

(えいらくていのみりょく、とうえいのしょほう、そうとげんしょきのはんえいについてまなんだ。)

永楽帝の魅力、唐英の書法、宋と元初期の繁栄について学んだ。

(つぎのゆうがた、ほーむずをおとずれたときには、わたしはこういうちしきで)

次の夕方、ホームズを訪れた時には、私はこういう知識で

(いっぱいになっていた。こうひょうされたきじからはそうぞうできなかっただろうが、)

いっぱいになっていた。公表された記事からは想像できなかっただろうが、

(かれはすでにべっどからおきだしており、ほうたいでぐるぐるまきにされたあたまを)

彼はすでにベッドから起き出しており、包帯でぐるぐる巻きにされた頭を

(てでささえて、おきにいりのひじかけいすにふかぶかとこしをおろしていた。)

手で支えて、お気に入りの肘掛け椅子に深々と腰を下ろしていた。

(「どうした、ほーむず」わたしはいった。)

「どうした、ホームズ」私は言った。

(「しんぶんをしんじるなら、きみはしにかけているはずだ」)

「新聞を信じるなら、君は死にかけているはずだ」

(「それが」かれはいった。「ぼくがまさにつたえたかったいんしょうなんだ。)

「それが」彼は言った。「僕がまさに伝えたかった印象なんだ。

(ところで、わとそん、いわれたことはべんきょうしたか?」)

ところで、ワトソン、言われたことは勉強したか?」

(「すくなくともやろうとはしてみたが」)

「少なくともやろうとはしてみたが」

(「けっこう。このしゅだいでちてきなかいわがつづけられるかな?」「できるとおもう」)

「結構。この主題で知的な会話が続けられるかな?」「出来ると思う」

(「では、まんとるぴーすからあのちいさいはこをもってきてくれ」)

「では、マントルピースからあの小さい箱を持ってきてくれ」

(かれはそのはこのふたをあけ、うつくしいとうようのきぬでひじょうにていねいにつつまれた)

彼はその箱の蓋を開け、美しい東洋の絹で非常に丁寧に包まれた

(ちいさなぶったいをとりだした。かれはそれをといて、)

小さな物体を取り出した。彼はそれを解いて、

(ひじょうにうつくしいぐんじょういろのせんさいなこざらをとりだした。)

非常に美しい群青色の繊細な小皿を取り出した。

(「しんちょうにあつかわなければならないよ、わとそん。)

「慎重に扱わなければならないよ、ワトソン。

(これはほんもののみんちょうらんかくじきだ。これいじょうすばらしいものはくりすてぃの)

これは本物の明朝卵殻磁器だ。これ以上素晴らしいものはクリスティの

(おーくしょんにもかけられたことがない。これがかんぜんにそろっていれば)

オークションにも掛けられたことがない。これが完全にそろっていれば

(おうのみのしろきんにもなりうるものだ、ーーじっさい、ぺきんのおうきゅういがいに)

王の身代金にもなりうるものだ、 ―― 実際、北京の王宮以外に

(これのかんぜんせっとがあるかはうたがわしい。)

これの完全セットがあるかは疑わしい。

(これをひとめみれば、ほんとうのめききならむちゅうになるはずだ」)

これを一目見れば、本当の目利きなら夢中になるはずだ」

(「これでどうすればいいんだ?」ほーむずはめいしをてわたした。)

「これでどうすればいいんだ?」ホームズは名刺を手渡した。

(そこにはこのようにいんさつされていた。「むーんがい369ひる・ばーとん」)

そこにはこのように印刷されていた。「ムーン街369 ヒル・バートン」

(「これがこんやのきみのなまえだ、わとそん。きみはぐらなーだんしゃくをほうもんする。)

「これが今夜の君の名前だ、ワトソン。君はグラナー男爵を訪問する。

(ぼくはかれのせいかつしゅうかんをすこししっているから、はちじはんになればかれはおそらくてが)

僕は彼の生活習慣を少し知っているから、八時半になれば彼は恐らく手が

(すいているはずだ。まえもってきみは、ほうもんしたいというてがみをだしておき、)

すいているはずだ。前もって君は、訪問したいという手紙を出しておき、

(そこでひるいなきみんちょうのくみざらのみほんをもっていくつもりだといっておく。)

そこで比類なき明朝の組皿の見本を持っていくつもりだと言っておく。

(きみはいしゃになりすますのがいい。そうするとこのぶぶんについてはうそをつかずに)

君は医者になりすますのがいい。そうするとこの部分については嘘をつかずに

(やくをえんじられるだろう。きみはこのせっとをてにいれたしゅうしゅうかだ。)

役を演じられるだろう。君はこのセットを手に入れた収集家だ。

(きみはだんしゃくがこういうものにきょうみをもっているときいた。)

君は男爵がこういうものに興味を持っていると聞いた。

(そしてきみはそうおうのねだんならうってもかまわないとおもっている」)

そして君は相応の値段なら売っても構わないと思っている」

(「いくらなんだ?」「よくきいた、わとそん。きみはもしじぶんじしんのしなものの)

「いくらなんだ?」「よく訊いた、ワトソン。君はもし自分自身の品物の

(かちをしらないならまちがいなくひどいしっぱいをするだろう。)

価値を知らないなら間違いなくひどい失敗をするだろう。

(このさらはさー・じぇいむずがぼくのところにもってきたもので、)

この皿はサー・ジェイムズが僕のところに持ってきたもので、

(ぼくのりかいでは、これはかれのいらいにんのしょぞうひんからでたものだ。)

僕の理解では、これは彼の依頼人の所蔵品から出たものだ。

(これにひってきするものはせかいじゅうどこにもないといってもおおげさではない」)

これに匹敵するものは世界中どこにもないといっても大げさではない」

(「このせっとはせんもんかがねだんをつけるべきだとていあんしようか」)

「このセットは専門家が値段をつけるべきだと提案しようか」

(「すばらしい、わとそん!きょうはさえてるな。くりすてぃやさざびーずの)

「素晴らしい、ワトソン!今日は冴えてるな。クリスティやサザビーズの

(はなしもにおわせろ。きみはつつしみぶかいのでじぶんでねをつけにくいというわけだ」)

話も匂わせろ。君は慎み深いので自分で値をつけにくいというわけだ」

(「しかし、もしかれがあおうとしなかったら?」)

「しかし、もし彼が会おうとしなかったら?」

(「ああ、いいや、かれはきっとあう。かれはこのうえなくねっしんなしゅうしゅうきょうだ、)

「ああ、いいや、彼はきっと会う。彼はこの上なく熱心な収集狂だ、

(ーーとくにとうじきは、これにかんしてかれはひろくしられたけんいだ。)

―― 特に陶磁器は、これに関して彼は広く知られた権威だ。

(すわってくれ、わとそん、ぼくがてがみのぶんめんをいう。へんじをもらうひつようはない。)

座ってくれ、ワトソン、僕が手紙の文面を言う。返事をもらう必要はない。

(ただいくということと、そのりゆうをかけばいいだけだ」)

ただ行くということと、その理由を書けばいいだけだ」

(それはみごとなぶんだった。みじかく、ていねいで、かんていかのこうきしんをくすぐるものだった。)

それは見事な文だった。短く、丁寧で、鑑定家の好奇心をくすぐるものだった。

(ちほうはいたつにんがよていどおりにそれをはいたつした。)

地方配達人が予定通りにそれを配達した。

(おなじひのゆうがた、きちょうなさらをてにし、ひる・ばーとんはかせのめいしを)

同じ日の夕方、貴重な皿を手にし、ヒル・バートン博士の名刺を

(ぽけっとにいれ、わたしはじぶんのぼうけんにしゅっぱつした。)

ポケットに入れ、私は自分の冒険に出発した。

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