マザリンの宝石 3

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投稿者投稿者大樹野いいね3お気に入り登録
プレイ回数2823難易度(4.5) 5161打 長文
【シャーロック・ホームズの事件簿】より
長文なので、読書感覚でお楽しみください

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問題文

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(「いや、わとそん、ーーぼくのじゃまになる」「だが、とうていきみをおいてはいけん」)

「いや、ワトソン、――僕の邪魔になる」「だが、到底君を置いては行けん」

(「いや、いってくれ、わとそん。きっといってくれる。きみはいままでいちどもやくめを)

「いや、行ってくれ、ワトソン。きっと行ってくれる。君は今まで一度も役目を

(しくじったことがない。きみがさいごまでちゃんとやってくれるとしんじているよ。)

しくじったことがない。君が最後までちゃんとやってくれると信じているよ。

(このおとこはじぶんのもくてきでやってきている。しかしここにくればぼくのてのうちだ」)

この男は自分の目的でやってきている。しかしここにくれば僕の手の内だ」

(ほーむずはてちょうをとりあげてみじかいてがみをかいた。)

ホームズは手帳を取り上げて短い手紙を書いた。

(「ろんどんけいしちょうまでばしゃにのっていって、これをはんざいそうさかのよーるに)

「ロンドン警視庁まで馬車に乗って行って、これを犯罪捜査課のヨールに

(わたしけいさつをつれてもどってくれ。そのご、やつをたいほすることになる」)

渡し警察をつれて戻ってくれ。その後、奴を逮捕することになる」

(「よろこんでやるよ」「きみがもどってくるまえに、ぼくはほうせきがどこにあるかを)

「喜んでやるよ」「君が戻ってくる前に、僕は宝石がどこにあるかを

(みつけだせるかもしれない」かれはべるにふれた。「しんしつをとおって)

見つけ出せるかもしれない」彼はベルに触れた。「寝室を通って

(そとにでるのがいいとおもう。このうらぐちはほんとうにやくにたつな。)

外に出るのがいいと思う。この裏口は本当に役に立つな。

(ぼくはかれにみられずにあのさめをみたい。そして、きみもおぼえているとおもうが、)

僕は彼に見られずにあの鮫を見たい。そして、君も覚えていると思うが、

(ぼくはそうするためのじぶんりゅうのほうほうがあるんだ」こうして、いっぷんごに)

僕はそうするための自分流の方法があるんだ」こうして、一分後に

(びりーがしるびうすはくしゃくをまねきいれたとき、へやにはだれもいなかった。)

ビリーがシルビウス伯爵を招き入れた時、部屋には誰もいなかった。

(このゆうめいなしゅりょうか、すぽーつまん、しゃこうかは、せのたかいあさぐろいおとこだった。)

この有名な狩猟家、スポーツマン、社交家は、背の高い浅黒い男だった。

(おそろしいくろいくちひげをはやし、そのしたにざんこくそうなうすいくちびるのくちがあり、)

恐ろしい黒い口ひげを生やし、その下に残酷そうな薄い唇の口があり、

(ながいまがったはながたかのくちばしのようにそびえたっていた。)

長い曲がった鼻が鷹の嘴のようにそびえ立っていた。

(かれはいいみなりをしていた。しかし、きらきらしたねっくれす、)

彼はいい身なりをしていた。しかし、キラキラしたネックレス、

(ぴかぴかのぴん、ぎらぎらひかるゆびわは、けばけばしいいんしょうをあたえた。)

ピカピカのピン、ギラギラ光る指輪は、けばけばしい印象を与えた。

(かれがなかにはいってとびらがしめられると、このどうもうなめつきのおとこは、)

彼が中に入って扉が閉められると、この獰猛な目つきの男は、

(どこにわながあるかもしれないとおびえたしせんでまわりをみまわした。)

どこに罠があるかもしれないとおびえた視線で周りを見回した。

など

(するとまどぎわのひじかけいすのうえに、へいぜんとしたようすでにんげんのあたまと)

すると窓際の肘掛け椅子の上に、平然とした様子で人間の頭と

(がうんのえりがでているのをみつけてぎょうてんした。さいしょ、かれはたんじゅんに)

ガウンの襟が出ているのを見つけて仰天した。最初、彼は単純に

(おどろいただけだった。そのご、さっきをおびたくろいめにぶきみなきたいのいろが)

驚いただけだった。その後、殺気を帯びた黒い目に不気味な期待の色が

(うかんだ。かれはだれもみていないことをたしかめるためにもういちどまわりをみまわし、)

浮かんだ。彼は誰も見ていないことを確かめるためにもう一度回りを見回し、

(それからしのびあしで、ふといすてっきをひくくふりかざして、しずかなうしろすがたにちかよった。)

それから忍び足で、太いステッキを低くふりかざして、静かな後姿に近寄った。

(かれはさいごにとびかかってなぐろうとかがみこんだ。ひらいたしんしつのとびらから、)

彼は最後に飛び掛って殴ろうとかがみ込んだ。開いた寝室の扉から、

(すずしいあざけるようなこえがかれをでむかえた。「こわすな、はくしゃく!こわすな!」)

涼しいあざけるような声が彼を出迎えた。「壊すな、伯爵!壊すな!」

(あんさつしゃはおどろいてどうようしたかおでよろめいてさがった。いっしゅん、かれはあたかも)

暗殺者は驚いて動揺した顔でよろめいて下がった。一瞬、彼はあたかも

(ぼうりょくをこぴーからほんものにむけようとでもするかのように、なまりをしこんだ)

暴力をコピーから本物に向けようとでもするかのように、鉛を仕込んだ

(すてっきをとちゅうまでもちあげた。しかししずかなはいいろのめとからかうような)

ステッキを途中まで持ち上げた。しかし静かな灰色の目とからかうような

(びしょうにはなにかがあり、それでかれはすてっきをからだのよこにおろした。)

微笑には何かがあり、それで彼はステッキを体の横に下ろした。

(「なかなかおもしろいだろう」ほーむずはぞうにあゆみよっていった。「ふらんすの)

「なかなか面白いだろう」ホームズは像に歩み寄って言った。「フランスの

(そぞうさっかのたべるにえがつくったものだ。きみのゆうじんのすとらうべんざの)

塑像作家のタベルニエが作ったものだ。君の友人のストラウベンザの

(くうきじゅうにまけないできのろうざいくだ」「くうきじゅう!なにがいいたいんだ?」)

空気銃に負けない出来の蝋細工だ」「空気銃!何が言いたいんだ?」

(「ぼうしとすてっきはそのさいどてーぶるにおいてくれ。ありがとう、まあ、)

「帽子とステッキはそのサイドテーブルに置いてくれ。ありがとう、まあ、

(すわってくれ。けんじゅうはだしておいたらどうなんだ?ほお、それもよかろう。)

座ってくれ。拳銃は出しておいたらどうなんだ?ほお、それもよかろう。

(しりにしいておきたいというなら。きみがきたのはほんとうにぜっこうのきかいだ。)

尻に敷いておきたいというなら。君が来たのは本当に絶好の機会だ。

(ぜひともきみとすうふんかんはなしたいとおもっていたんだ」はくしゃくはぶあつい)

是非とも君と数分間話したいと思っていたんだ」伯爵は分厚い

(きょうはくてきなまゆをひそめた。「おれもおまえとちょっとはなしをしたいと)

脅迫的な眉をひそめた。「俺もお前とちょっと話をしたいと

(おもっていたんだ、ほーむず。だからここにきたんだ。おれがたったいま)

思っていたんだ、ホームズ。だからここに来たんだ。俺がたった今

(おまえをおそおうとしたことはみとめるが」ほーむずはてーぶるのかどに)

お前を襲おうとしたことは認めるが」ホームズはテーブルの角に

(ももをのせた。「というよりも、さいしょからそういうつもりだったようにおもうがね」)

腿を乗せた。「というよりも、最初からそういうつもりだったように思うがね」

(かれはいった。「しかしどうしてぼくにわざわざこんなしんせつをしてくれるのかな?」)

彼は言った。「しかしどうして僕にわざわざこんな親切をしてくれるのかな?」

(「おまえがでしゃばっておれをこまらせるからだ。おまえがてしたにあとを)

「お前がでしゃばって俺を困らせるからだ。お前が手下に後を

(つけさせるからだ」「ぼくのてした!そんなものはいないよ、やくそくする」)

つけさせるからだ」「僕の手下!そんなものはいないよ、約束する」

(「ばかな!おれはそいつらにつけられた。そっちがそのきなら)

「馬鹿な!俺はそいつらにつけられた。そっちがその気なら

(おれもただではおかんぞ、ほーむず」「こまかいことだが、しるびうすはくしゃく、)

俺もただではおかんぞ、ホームズ」「細かいことだが、シルビウス伯爵、

(ぼくをよぶときにはけいしょうをつけていただけますかな。おわかりいただけるとおり、)

僕を呼ぶときには敬称をつけていただけますかな。お分かりいただける通り、

(ぼくはふだんのしごとがら、あくとうたちのはんぶんとなれなれしいはなしかたをしている。)

僕は普段の仕事柄、悪党達の半分となれなれしい話し方をしている。

(だが、きみはこのれいがいがふかいなのにはどういしてくれるだろう」)

だが、君はこの例外が不快なのには同意してくれるだろう」

(「ふん、じゃ、みすたー・ほーむず」「けっこう!しかしきみはぼくがてしたを)

「ふん、じゃ、ミスター・ホームズ」「結構!しかし君は僕が手下を

(つかったというところでまちがいをおかしているな」)

使ったというところで間違いを犯しているな」

(しるびうすはくしゃくはばかにするようにわらった。「かんさつりょくがあるのは)

シルビウス伯爵は馬鹿にするように笑った。「観察力があるのは

(おまえだけではない。きのうはとしよりのあそびにんふうのおとこ。きょうはろうばだ。)

お前だけではない。昨日は年寄りの遊び人風の男。今日は老婆だ。

(やつらはいちにちじゅうおれをみはっていた」「ほんとうにおせじがうまいな。)

やつらは一日中俺を見張っていた」「本当にお世辞がうまいな。

(どーそんだんしゃくはこうしゅけいのまえのばん、ぼくについてこういったな。けいさつが)

ドーソン男爵は絞首刑の前の晩、僕についてこう言ったな。警察が

(とくをしたぶん、えんげきかいはそんをしたと。いま、きみにぼくのそまつなへんそうじゅつをしんせつにも)

得をした分、演劇界は損をしたと。今、君に僕の粗末な変装術を親切にも

(しょうさんしてもらえるとはね?」「あれはおまえ、ーーおまえだったのか?」)

賞賛してもらえるとはね?」「あれはお前、 ―― お前だったのか?」

(ほーむずはかたをすぼめた。「あのへやのすみにおいてあるひがさは、)

ホームズは肩をすぼめた。「あの部屋の隅に置いてある日傘は、

(きみがあやしいとおもいはじめるまえにまいのりーずでていねいにもぼくにわたしてくれたやつだ」)

君が怪しいと思い始める前にマイノリーズで丁寧にも僕に渡してくれたやつだ」

(「もしおれがしっていたら、おまえはぜったいに・・」「このそまつないえにかえれなかった。)

「もし俺が知っていたら、お前は絶対に・・」「この粗末な家に帰れなかった。

(それはよくわかっていたよ。だれでもちゃんすをふいにしてくやしいけいけんがあるさ。)

それはよく分かっていたよ。誰でもチャンスをふいにして悔しい経験があるさ。

(あいにく、きみはきづかなかった。だからここであっている!」)

あいにく、君は気づかなかった。だからここで会っている!」

(はくしゃくのひきよせられたまゆはおそろしいめのうえでいっそうしかめられた。)

伯爵の引き寄せられた眉は恐ろしい目の上で一層しかめられた。

(「おまえのいっていることはじたいをいっそうわるくしているだけだ。)

「お前の言っている事は事態を一層悪くしているだけだ。

(おまえのてしたではなくておまえのものまねだった。おせっかいやろうじしんだった!)

お前の手下ではなくてお前の物まねだった。お節介野郎自身だった!

(おまえはおれをつけていたことをみとめたわけだ。なぜだ?」「おやおや、はくしゃく。)

お前は俺をつけていたことを認めたわけだ。なぜだ?」「おやおや、伯爵。

(きみはあるじぇりあでよくらいおんをうっただろう」「それが?」「しかし、)

君はアルジェリアでよくライオンを撃っただろう」「それが?」「しかし、

(なぜそんなまねを?」「なぜ?すぽーつだ、ーーしげき、ーーきけんだからだ!」)

なぜそんな真似を?」「なぜ?スポーツだ、――刺激、――危険だからだ!」

(「それにもちろん、くにからがいじゅうをくちくするためだな?」「そうだ!」)

「それにもちろん、国から害獣を駆逐するためだな?」「そうだ!」

(「ようするにそういうことだ!」はくしゃくはさっとたちあがり、むいしきのうちに)

「要するにそういうことだ!」伯爵はさっと立ち上がり、無意識のうちに

(てをうしろのこしぽけっとにまわした。「すわるんだ、すわれ!もうひとつ)

手を後ろの腰ポケットに回した。「座るんだ、座れ!もう一つ

(もっとじつようてきなりゆうがある。きいろいだいやもんどをだしてもらおうか!」)

もっと実用的な理由がある。黄色いダイヤモンドを出してもらおうか!」

(しるびうすはくしゃくはいじわるいえみをうかべていすでふんぞりかえった。)

シルビウス伯爵は意地悪い笑みを浮かべて椅子でふんぞり返った。

(「あいたくちがふさがらんわ!」かれはいった。「きみはぼくがそのためにあとを)

「あいた口がふさがらんわ!」彼は言った。「君は僕がそのために後を

(おっていたことがわかっていた。こんや、きみがここにきたほんとうのりゆうは)

追っていた事が分かっていた。今夜、君がここに来た本当の理由は

(しらべるためだ。ぼくがこのけんについてどこまでしっていて、そしてぼくをしまつする)

調べるためだ。僕がこの件についてどこまで知っていて、そして僕を始末する

(ひつようがどれくらいあるかをな。まあ、ぼくはこういわざるをえないな。)

必要がどれくらいあるかをな。まあ、僕はこう言わざるをえないな。

(きみのたちばからすればそれはひつようふかけつだ。ぼくはすべてをしっているのだ。)

君の立場からすればそれは必要不可欠だ。僕は全てを知っているのだ。

(ただひとつ、きみがこれからはなしてくれることをのぞいてはね」)

ただ一つ、君がこれから話してくれることを除いてはね」

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