マザリンの宝石 5

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投稿者投稿者大樹野いいね1お気に入り登録
プレイ回数2475難易度(4.5) 5718打 長文
【シャーロック・ホームズの事件簿】より
長文なので、読書感覚でお楽しみください

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問題文

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(ばかでゆうずうのきかないひらたいかおをした、がんじょうなからだつきのぷろぼくさーの)

馬鹿で融通のきかない平たい顔をした、頑丈な体つきのプロボクサーの

(せいねんが、とうわくしたようなひょうじょうであたりをみまわしながら、きまずそうに)

青年が、当惑したような表情であたりを見回しながら、気まずそうに

(とぐちにたっていた。ほーむずのあいそのいいたいどはこれまでけいけんが)

戸口に立っていた。ホームズの愛想のいい態度はこれまで経験が

(なかったものだった。かれはなんとなくてきいをかんじていたが、どのように)

なかったものだった。彼はなんとなく敵意を感じていたが、どのように

(たちむかえばいいかわからなかった。かれはじぶんよりあたまのいいなかまに)

立ち向かえばいいか分からなかった。彼は自分より頭のいい仲間に

(たすけをもとめてふりむいた。「これはどういうことです、はくしゃく?こいつは)

助けを求めて振り向いた。「これはどういうことです、伯爵?こいつは

(なにをねらっているんだ?どうなっているんだ?」かれのこえはふとくみみざわりだった。)

何を狙っているんだ?どうなっているんだ?」彼の声は太く耳障りだった。

(はくしゃくはかたをすぼめた。しつもんにこたえたのはほーむずだった。)

伯爵は肩をすぼめた。質問に答えたのはホームズだった。

(「かんたんにいうとだな、まーとんくん、ばんじきゅうすということだ」)

「簡単に言うとだな、マートン君、万事休すと言う事だ」

(ぼくさーはまだなかまにむかってはなしかけていた。「こいつはじょうだんでも)

ボクサーはまだ仲間に向かって話しかけていた。「こいつは冗談でも

(いおうとしてるのか、でなけれりゃなんだ?おれはじょうだんをいうような)

言おうとしてるのか、でなけれりゃなんだ?俺は冗談を言うような

(きぶんにはなれない」「おそらくそうだろうな」ほーむずはいった。)

気分にはなれない」「おそらくそうだろうな」ホームズは言った。

(「きみにほしょうできるとおもうよ。よるがふけるにしたがって)

「君に保証できると思うよ。夜が更けるにしたがって

(さらにゆかいではなくなるだろうと。さあ、いいか、しるびうすはくしゃく。)

さらに愉快ではなくなるだろうと。さあ、いいか、シルビウス伯爵。

(ぼくはいそがしいみでじかんをむだにはできない。ぼくはしんしつにいく。)

僕は忙しい身で時間を無駄にはできない。僕は寝室に行く。

(ぼくがいないあいだゆっくりくつろいでくれ。きみのゆうじんにじょうきょうがどうなっているか)

僕がいない間ゆっくりくつろいでくれ。君の友人に状況がどうなっているか

(せつめいするといい。ぼくがいるとはなしづらいこともあるだろうからね。ばいおりんで)

説明するといい。僕がいると話しづらいこともあるだろうからね。バイオリンで

(はふまんの「ばるかろーれ」でもれんしゅうするよ。ごふんすればきみたちの)

ハフマンの『バルカローレ』でも練習するよ。五分すれば君達の

(さいごのへんじをききにもどってくる。にしゃたくいつについてはかんぜんに)

最後の返事を聞きに戻ってくる。二者択一については完全に

(りかいしているな?われわれは、きみたちをえるか、ほうせきをえるかだからね?」)

理解しているな?我々は、君達を得るか、宝石を得るかだからね?」

など

(ほーむずはとおりすがりにへやのすみからばいおりんをとりあげてでていった。)

ホームズは通りすがりに部屋の隅からバイオリンを取り上げて出て行った。

(しばらくして、いつまでもみみについてはなれないながくむせびなくようなせんりつが)

しばらくして、いつまでも耳について離れない長くむせび泣くような旋律が

(しんしつのとじたとびらからかすかにもれてきた。「それで、なんなんです?」)

寝室の閉じた扉からかすかに漏れて来た。「それで、なんなんです?」

(まーとんははくしゃくがかれのほうをむいたとき、しんぱいそうにたずねた。「あいつは)

マートンは伯爵が彼の方を向いた時、心配そうに尋ねた。「あいつは

(ほうせきのことをしっているのか?」「かれはあのけんについてしりすぎている。)

宝石のことを知っているのか?」「彼はあの件について知りすぎている。

(なにもかもしっているかもしれない」「そりゃたいへんだ!」)

何もかも知っているかもしれない」「そりゃ大変だ!」

(ぼくさーのきばんだかおはまっさおになった。)

ボクサーの黄ばんだ顔は真っ青になった。

(「あいきー・さんだーずがわれわれのことをしゃべった」「やつが?)

「アイキー・サンダーズが我々のことをしゃべった」「奴が?

(しばりくびになろうがこてんぱんにぶちのめしてやる」「それでどうなるもの)

縛り首になろうがこてんぱんにぶちのめしてやる」「それでどうなるもの

(でもないだろう。どうするかかくごをきめんといかん」「ちょっとまった」)

でもないだろう。どうするか覚悟を決めんといかん」「ちょっと待った」

(ぼくさーはしんしつのとびらをうたがわしそうにみながらいった。「あいつは)

ボクサーは寝室の扉を疑わしそうに見ながら言った。「あいつは

(みはりがすきなずるがしこいやつだ。ききみみをたてちゃいませんかね?」)

見張りが好きなずる賢い奴だ。聞き耳を立てちゃいませんかね?」

(「がっきをえんそうしながらどうやってききみみをたてられる?」「そりゃそうだ。)

「楽器を演奏しながらどうやって聞き耳を立てられる?」「そりゃそうだ。

(かーてんのうしろにだれかかくれていないかな。このへやにはかーてんがおおすぎる」)

カーテンの後ろに誰か隠れていないかな。この部屋にはカーテンが多すぎる」

(あたりをみまわしたとき、はじめてまどぎわのにんぎょうがぱっとかれのめにはいった。)

あたりを見回した時、初めて窓際の人形がぱっと彼の目に入った。

(かれはおどろいてこえもでず、ぼうだちになったままにんぎょうをみつめてゆびさした。)

彼は驚いて声も出ず、棒立ちになったまま人形を見つめて指差した。

(「ちっ!ただのだみーだ」はくしゃくがいった。「にせものですかい?いや、おどろいた!)

「チッ!ただのダミーだ」伯爵が言った。「偽物ですかい?いや、驚いた!

(まだむ・たっそーがつくったんじゃないか。こりゃあいつのいきうつしだ、)

マダム・タッソーが作ったんじゃないか。こりゃあいつの生き写しだ、

(がうんもなにもかも。しかしこのかーてんだ、はくしゃく!」)

ガウンもなにもかも。しかしこのカーテンだ、伯爵!」

(「おい、かーてんがどうした、じかんをむだにしているぞ。)

「おい、カーテンがどうした、時間を無駄にしているぞ。

(もうそれほどのこっていない。やつはこのほうせきのけんでおれたちをひっぱるつもりだ」)

もうそれほど残っていない。奴はこの宝石の件で俺達をひっぱるつもりだ」

(「なんでそんなことが!」「しかしやつはもしどこにほうせきがあるかを)

「なんでそんなことが!」「しかし奴はもしどこに宝石があるかを

(いいさえすればおれたちをにがすらしい」「なんだ!わたすのか?)

言いさえすれば俺達を逃がすらしい」「なんだ!渡すのか?

(ひゃくまんぽんどのぶつをわたす?」「ふたつにひとつだ」まーとんはすんづまりの)

百万ポンドのブツを渡す?」「二つに一つだ」マートンは寸詰まりの

(のうてんをかいた。「かれはあそこでひとりきりだ。やっちまおう。)

脳天を掻いた。「彼はあそこで一人きりだ。やっちまおう。

(もしあいつがいなくなればおれたちはなにもこわがるものはない」)

もしあいつがいなくなれば俺達は何も怖がるものはない」

(はくしゃくはくびをふった。「あいつはぶきをもってじゅんびしている。)

伯爵は首を振った。「あいつは武器を持って準備している。

(もしあいつをうてば、こんなばしょからはとてもにげられないぞ。)

もしあいつを撃てば、こんな場所からはとても逃げられないぞ。

(それに、やつがにゅうしゅしたしょうこはけいさつもしっているかのうせいがたかい。)

それに、奴が入手した証拠は警察も知っている可能性が高い。

(おや!いまのはなんだったんだ?」まどからかすかなおとがしたようだった。)

おや!今のはなんだったんだ?」窓からかすかな音がしたようだった。

(ふたりともあわててあたりをみまわした。しかしきみょうなにんぎょうがいったいいすに)

二人とも慌ててあたりを見回した。しかし奇妙な人形が一体椅子に

(すわっているいがい、しずまりかえっており、へやのなかはたしかにひとけがなかった。)

座っている以外、静まりかえっており、部屋の中は確かに人気がなかった。

(「とおりのおとか」まーとんがいった。「じゃいいか、だんな、あんたはあたまがいい。)

「通りの音か」マートンが言った。「じゃいいか、旦那、あんたは頭がいい。

(きっとなにかいいてをかんがえられるだろう。もしわんりょくがやくにたたんなら、)

きっと何かいい手を考えられるだろう。もし腕力が役に立たんなら、

(あんたのやくめだ」「おれはあいつよりかしこいやつをだましてきた」はくしゃくはこたえた。)

あんたの役目だ」「俺はあいつより賢い奴を騙してきた」伯爵は答えた。

(「ほうせきはこのひみつのぽけっとにある。これをおいていくようなきけんは)

「宝石はこの秘密のポケットにある。これを置いていくような危険は

(おかせない。これはこんやにもいぎりすからもちだして、にちようまでに)

冒せない。これは今夜にもイギリスから持ち出して、日曜までに

(あむすてるだむでよっつにきる。やつはヴぁん・せだのことはなにもしらん」)

アムステルダムで四つに切る。奴はヴァン・セダのことは何も知らん」

(「ヴぁん・せだはらいしゅういくよていだったとおもっていたが」「そうだ。)

「ヴァン・セダは来週行く予定だったと思っていたが」「そうだ。

(しかしこうなればつぎのふねでにげなければならない。おれたちのどちらかが、)

しかしこうなれば次の船で逃げなければならない。俺達のどちらかが、

(このほうせきをもってらいむがいにいってかれにれんらくしなければならない」)

この宝石をもってライム街に行って彼に連絡しなければならない」

(「しかしにじゅうぞこはまだできていませんぜ」「いちかばちかそのままもって)

「しかし二重底はまだ出来ていませんぜ」「一か八かそのまま持って

(いかざるをえんな。いっこくもむだにはできない」もういちど、しゅりょうかの)

いかざるをえんな。一刻も無駄には出来ない」もう一度、狩猟家の

(ほんのうとなっているきけんのかんかくで、かれははなしをやめてまどをじっとにらみつけた。)

本能となっている危険の感覚で、彼は話をやめて窓をじっと睨みつけた。

(よし、あのかすかなおとはまちがいなくとおりからきていたようだ。)

よし、あのかすかな音は間違いなく通りから来ていたようだ。

(「ほーむずだが」かれはつづけた、「やつはかんたんにだませる。いいか、あのばかやろうは)

「ホームズだが」彼は続けた、「奴は簡単に騙せる。いいか、あの馬鹿野郎は

(もしほうせきがてにはいればおれたちをたいほせん。いいだろう、ほうせきをかえすと)

もし宝石が手に入れば俺達を逮捕せん。いいだろう、宝石を返すと

(やくそくしよう。かれにまちがったじょうほうをおわせて、やつがまちがったじょうほうだと)

約束しよう。彼に間違った情報を追わせて、奴が間違った情報だと

(きづくまえに、ほうせきはおらんだで、おれたちはこのくにからだっしゅつしているだろう」)

気づく前に、宝石はオランダで、俺達はこの国から脱出しているだろう」

(「よさそうだな!」さむ・まーとんはまんめんのえがおでさけんだ。「おまえは)

「よさそうだな!」サム・マートンは満面の笑顔で叫んだ。「お前は

(ヴぁん・せだのところにいって、せかしてくれ。おれはあのくそやろうにあって)

ヴァン・セダのところに行って、せかしてくれ。俺はあの糞野郎に会って

(うそのじはくをふきこんでやる。ほうせきはりばぷーるにあるというつもりだ。)

嘘の自白を吹き込んでやる。宝石はリバプールにあると言うつもりだ。

(このしめっぽいおんがくはうっとうしいな、いらいらするぞ!ほうせきがりばぷーるに)

この湿っぽい音楽はうっとうしいな、イライラするぞ!宝石がリバプールに

(ないときづくまえに、いしはよんぶんかつされておれたちはおおうなばらのうえだ。)

ないと気づく前に、石は四分割されて俺達は大海原の上だ。

(ちょっとこっちへこい。あのかぎあなのせんからずれろ。これがほうせきだ」)

ちょっとこっちへ来い。あの鍵穴の線からずれろ。これが宝石だ」

(「よくもちあるいたりできるもんだなあ」「ほかにもっとあんぜんなところがあるか?)

「よく持ち歩いたりできるもんだなあ」「他にもっと安全なところがあるか?

(おれたちがほわいとおーるからもちだせるなら、まちがいなくおれのいえから)

俺たちがホワイトオールから持ち出せるなら、間違いなく俺の家から

(べつのやつがもちだすこともできるさ」「ちょっとみせてくれ」しるびうすはくしゃくは)

別の奴が持ち出すこともできるさ」「ちょっと見せてくれ」シルビウス伯爵は

(さしだされたきたないてをむしし、ちょっとうたがわしそうになかまにめをやった。)

差し出された汚い手を無視し、ちょっと疑わしそうに仲間に目をやった。

(「なんだ、ーーおれがあんたからひったくろうとしているとでもおもっているのか?)

「何だ、――俺があんたからひったくろうとしているとでも思っているのか?

(おいだんな、いいかげんにそんなたいどにはうんざりしてきたぞ」)

おい旦那、いい加減にそんな態度にはうんざりしてきたぞ」

(「よし、よし、わるぎじゃない、さむ。けんかしているばあいじゃない。)

「よし、よし、悪気じゃない、サム。喧嘩している場合じゃない。

(もしこのすばらしさをちゃんとみたいなら、こっちのまどべにくるがいい。)

もしこの素晴らしさをちゃんと見たいなら、こっちの窓辺に来るがいい。

(さあ、ひかりにかざすぞ、ほら!」「ありがとう!」ひととびで、)

さあ、光にかざすぞ、ほら!」「ありがとう!」ひと跳びで、

(ほーむずがにんぎょうのいすからはねでてきちょうなほうせきをつかんでいた。)

ホームズが人形の椅子から跳ね出て貴重な宝石をつかんでいた。

(かれはそれをかたてにもち、もういっぽうのてではくしゃくのあたまにじゅうをつきつけた。)

彼はそれを片手に持ち、もう一方の手で伯爵の頭に銃を突きつけた。

(ふたりのあくとうはかんぜんにきょをつかれてあとずさりした。)

二人の悪党は完全に虚を突かれて後ずさりした。

(かれらがたいせいをたてなおすまえに、ほーむずはでんきべるをおしていた。)

彼らが体勢を立て直す前に、ホームズは電気ベルを押していた。

(「じたばたするな、しんししょくん、ーーじたばたするなよ、いいな!)

「じたばたするな、紳士諸君、 ―― じたばたするなよ、いいな!

(かぐをたいせつに!おまえらがふくろのねずみなのはいうまでもなくわかるはずだ。)

家具を大切に!お前らが袋の鼠なのは言うまでもなく分かるはずだ。

(したでけいさつがまちかまえている」はくしゃくはこんらんし、いかりやきょうふしんが)

下で警察が待ちかまえている」伯爵は混乱し、怒りや恐怖心が

(まだわいてこなかった。「しかし、いったいぜんたい・・・?」かれはあえいだ。)

まだわいてこなかった。「しかし、一体全体・・・?」彼はあえいだ。

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