ボヘミアの醜聞 3
関連タイピング
-
プレイ回数10万歌詞200打
-
プレイ回数4044かな314打
-
プレイ回数96万長文かな1008打
-
プレイ回数3.2万歌詞1030打
-
プレイ回数1.8万長文かな102打
-
プレイ回数4.8万長文かな316打
-
プレイ回数1.1万313打
-
プレイ回数519歌詞886打
問題文
(「にとうだてだな、あのおとからすると」かれはいった。「やっぱりな」)
「二頭立てだな、あの音からすると」彼は言った。「やっぱりな」
(かれはまどからそとをながめながらつづけた。)
彼は窓から外を眺めながら続けた。
(「じょうとうなこがたよんりんばしゃにみごとなうまがにとうか。いっとう150ぎにーはするぞ。)
「上等な小型四輪馬車に見事な馬が二頭か。一頭150ギニーはするぞ。
(わとそん、ほかにはなにもないとしても、このけんにはかねはあるな」)
ワトソン、他には何もないとしても、この件には金はあるな」
(「わたしはでてゆかないとまずいとおもうが、ほーむず」)
「私は出て行かないとまずいと思うが、ホームズ」
(「いや、ぜんぜんかまわないよ、わとそん。そこにいてくれ。)
「いや、全然構わないよ、ワトソン。そこにいてくれ。
(ぼくのでんきさっかがいないとこまる。それにこれはまちがいなくおもしろくなりそうだ。)
僕の伝記作家がいないと困る。それにこれは間違いなく面白くなりそうだ。
(みのがすとざんねんなことになるかもしれないよ」「しかし、いらいぬしが・・・」)
見逃すと残念なことになるかもしれないよ」「しかし、依頼主が…」
(「いらいぬしはきにしなくていい。ぼくがきみのたすけをひつようとするかも)
「依頼主は気にしなくていい。僕が君の助けを必要とするかも
(しれないのだから、いらいぬしもおなじはずだ。さあきた。)
しれないのだから、依頼主も同じはずだ。さあ来た。
(そのひじかけいすにすわって、しっかりちゅういをはらっていてくれ」)
その肘掛け椅子に座って、しっかり注意を払っていてくれ」
(ゆっくりとしたおもいあしどりがかいだんとろうかできこえ、どあのすぐそとでとまった。)
ゆっくりとした重い足取りが階段と廊下で聞こえ、ドアのすぐ外で止まった。
(それからおおきなもったいぶったのっくがきこえた。)
それから大きなもったいぶったノックが聞こえた。
(「どうぞ」ほーむずがいった。)
「どうぞ」ホームズが言った。
(おとこがはいってきた。せたけは6ふぃーと6いんちはくだらず、むねとてあしは)
男が入ってきた。背丈は6フィート6インチは下らず、胸と手足は
(へらくれすのようにたくましかった。かれのふくそうはぜいたくだったが、)
ヘラクレスのようにたくましかった。彼の服装は贅沢だったが、
(そのぜいたくさはともするといぎりすではあくしゅみにつうじると)
その贅沢さはともするとイギリスでは悪趣味に通じると
(みられかねないものだった。あすとらかんけがわのはばひろのおびがそでぐちと)
見られかねないものだった。アストラカン毛皮の幅広の帯が袖口と
(だぶるのこーとのぜんめんについていた。うらじがしゅきぬのこんいろの)
ダブルのコートの前面についていた。裏地が朱絹の紺色の
(そでなしまんとがかたにはねあげられ、ぎらぎらしたえめらるどつき)
袖なしマントが肩に跳ね上げられ、ギラギラしたエメラルド付き
(ぶろーちでくびのところにとめられていた。ふくらはぎのとちゅうまである)
ブローチで首のところに留められていた。ふくらはぎの途中まである
(ぶーつは、じょうぶがこうきゅうなかっしょくのけがわでふちどりされており、)
ブーツは、上部が高級な褐色の毛皮で縁取りされており、
(うえからしたまでかんぺきにいなかのかねもちといういんしょうだった。かれはひろいつばの)
上から下まで完璧に田舎の金持ちという印象だった。彼は広いツバの
(ぼうしをてにもっており、かおのじょうぶからほおぼねをこえてさらにしたにまで)
帽子を手に持っており、顔の上部から頬骨を越えてさらに下にまで
(たっするくろいふくめんをつけていた。かれがはいってきたときはまだかたてをあげたまま)
達する黒い覆面をつけていた。彼が入ってきた時はまだ片手を挙げたまま
(だったので、あきらかにこのばでふくめんをつけたようだった。かおのかぶは、)
だったので、明らかにこの場で覆面をつけたようだった。顔の下部は、
(つよいこせいをあらわしているようにみえた。ぶあついひきしめられたくちびる、ながい)
強い個性を表しているように見えた。分厚い引き締められた唇、長い
(まっすぐのしたあごはがんこものといえるほどきょうこないしをもったにんげんをおもわせた。)
まっすぐの下顎は頑固者と言えるほど強固な意志を持った人間を思わせた。
(「てがみはうけとったかね?」かれはつよいどいつなまりのみみざわりなこえでたずねた。)
「手紙は受け取ったかね?」彼は強いドイツなまりの耳障りな声で尋ねた。
(「わたしがくるということはれんらくしてあったはずだが」)
「私が来るということは連絡してあったはずだが」
(かれはどちらにいってよいかわからないようすでわれわれをじゅんにみた。)
彼はどちらに言ってよいか分からない様子で我々を順に見た。
(「どうぞおかけください」ほーむずはいった。)
「どうぞお掛けください」ホームズは言った。
(「こちらはゆうじんでしごとなかまのわとそんはかせです。ときどきじけんを)
「こちらは友人で仕事仲間のワトソン博士です。時々事件を
(てつだってもらっています。しつれいですがごきめいをうかがわせていただけますか」)
手伝ってもらっています。失礼ですが御貴名を伺わせていただけますか」
(「ふぉん・くらむはくしゃくとよんでくれ。ぼへみあのきぞくだ。)
「フォン・クラム伯爵と呼んでくれ。ボヘミアの貴族だ。
(きみのゆうじんというこちらのしんしだが、このうえなくじゅうようなできごとをしんようして)
君の友人というこちらの紳士だが、この上なく重要な出来事を信用して
(はなすことができるしんぎとふんべつをそなえたじんぶつかな?)
話すことができる信義と分別を備えた人物かな?
(もしそうでなければ、できればぜひきみひとりとはなしをしたいのだが」)
もしそうでなければ、できればぜひ君一人と話をしたいのだが」
(わたしはたちあがってでてゆこうとした。しかしほーむずはてくびをつかんで、)
私は立ち上がって出て行こうとした。しかしホームズは手首をつかんで、
(いすにもどした。「ふたりがだめならそうだんしないことです」かれはいった。)
椅子に戻した。「二人が駄目なら相談しないことです」彼は言った。
(「わたしにはなせることで、このしんしのまえではなせないことはありません」)
「私に話せる事で、この紳士の前で話せない事はありません」
(はくしゃくはひろいかたをすぼめた。「やむをえん、はなそう」かれはいった。)
伯爵は広い肩をすぼめた。「やむをえん、話そう」彼は言った。
(「そのまえに、きみたちふたりにはにねんかんぜったいにたごんしないというせいやくをしてもらう。)
「その前に、君達二人には二年間絶対に他言しないという誓約をしてもらう。
(そのじきがすぎればこのけんはまったくじゅうようでなくなるのだ。だがいまは、)
その時期が過ぎればこの件は全く重要でなくなるのだ。だが今は、
(よーろっぱのれきしにえいきょうをあたえかねないほどじゅうようだといってもかごんではない」)
ヨーロッパの歴史に影響を与えかねないほど重要だと言っても過言ではない」
(「ちかいましょう」ほーむずはいった。「わたしもちかいます」)
「誓いましょう」ホームズは言った。「私も誓います」
(「このふくめんはおゆるしねがいたい」きみょうなほうもんしゃはつづけた。)
「この覆面はお許し願いたい」奇妙な訪問者は続けた。
(「わたしをやとったさるこうきなかたが、つかいのもののみもとがきみにしられぬようにと、)
「私を雇ったさる高貴な方が、使いの者の身元が君に知られぬようにと、
(のぞんでおられるのだ。このあたりでうちあけておいたほうがよいかもしれんが、)
望んでおられるのだ。このあたりで打ち明けておいた方がよいかもしれんが、
(じつはさきほどじしょうしたしゃくいもかならずしもじじつとはいえないのだ」)
実は先ほど自称した爵位も必ずしも事実とは言えないのだ」
(「きづいておりました」ほーむずはそっけなくいった。)
「気付いておりました」ホームズはそっけなく言った。
(「ひじょうにでりけーとなじょうきょうなのだ。たいへんなすきゃんだるにひがつき、)
「非常にデリケートな状況なのだ。大変なスキャンダルに火がつき、
(よーろっぱおうけのひとつがたいめんをきわめてよごすことになるかもしれないじたいを)
ヨーロッパ王家の一つが体面を極めて汚すことになるかもしれない事態を
(みぜんにふせぐために、あらゆるようじんはしておかねばならない。)
未然に防ぐために、あらゆる用心はしておかねばならない。
(そっちょくにいうと、このじけんはれきだいのぼへみあおうをはいしゅつしている)
率直に言うと、この事件は歴代のボヘミア王を輩出している
(おるむしゅたいんけにかかわることだ」「それもきづいておりました」)
オルムシュタイン家に関わることだ」「それも気付いておりました」
(ほーむずはひじかけいすにふかくこしかけて、めをとじたまま)
ホームズは肘掛け椅子に深く腰掛けて、目を閉じたまま
(つぶやくようにいった。いらいにんはあきらかにおどろいたようすでちらりとみた。)
つぶやくように言った。依頼人は明らかに驚いた様子でちらりと見た。
(このうえなくするどいすいりをするというひょうばんがあり、よーろっぱでもっともかつどうてきな)
この上なく鋭い推理をするという評判があり、ヨーロッパで最も活動的な
(たんていといわれていたはずのほーむずは、むきりょくでたいだなようすだった。)
探偵と言われていたはずのホームズは、無気力で怠惰な様子だった。
(ほーむずはゆっくりとめをあけて、いらいらしたようにきょかんのいらいしゃをみた。)
ホームズはゆっくりと目を開けて、イライラしたように巨漢の依頼者を見た。
(「もし、おそれおおくもこくおうへいかがごじしんでこのけんについてせつめいいただければ」)
「もし、恐れ多くも国王陛下がご自身でこの件について説明いただければ」
(かれはいった。「さらによいあどばいすができるはずですが」)
彼は言った。「さらに良いアドバイスが出来るはずですが」
(おとこはいすからとびあがると、どうようをおさえきれず、せかせかと)
男は椅子から跳び上がると、動揺を抑えきれず、せかせかと
(へやをいききした。とつぜん、やけになったようすでふくめんをかおからひきはがすと、)
部屋を行き来した。突然、やけになった様子で覆面を顔から引き剥がすと、
(ゆかにたたきつけた。「そのとおり」かれはおおごえでいった。)
床に叩きつけた。「その通り」彼は大声で言った。
(「わたしがぼへみあおうだ。なぜそれをかくさねばならん?」)
「私がボヘミア王だ。なぜそれを隠さねばならん?」
(「なぜでしょうね、まったく」ほーむずはつぶやいた。)
「なぜでしょうね、まったく」ホームズはつぶやいた。