千年後の世界 5 海野十三
昭和初期の作家が書いた近未来のはなし
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問題文
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(「ほほほほ。そんなことをおっしゃると、わたしはたいへんゆかいですわ。)
「ほほほほ。そんなことをおっしゃると、わたしはたいへん愉快ですわ。
(せんねんまえのじんるいが、どんなちのうていどだったのかということが、いまはっきり)
千年前の人類が、どんな知能程度だったのかということが、いまはっきり
(めのまえにみえるようで、たいへんさんこうになります」と、しきりにひとりで)
目の前に見えるようで、たいへん参考になります」と、しきりにひとりで
(よろこびつつ、「ですけれど、わたしばかりがよろこんでいないであなたのため、)
悦びつつ、「ですけれど、わたしばかりが悦んでいないであなたのため、
(はやくいっせんねんごのこんにちのせかいはどんなになっているかそのじょうしきをつけて)
早く一千年後の今日の世界はどんなになっているかその常識をつけて
(さしあげましょう」
といって、ちたきょうじゅが、きんぱつをなでながらはなしを)
さしあげましょう」
といって、チタ教授が、金髪をなでながら話を
(したところによると、なんでもじんるいは、いまからきゅうひゃくねんまえに、しのかみをせいふく)
したところによると、なんでも人類は、今から九百年前に、死の神を征服
(したというはなしだった。つまりじんるいは、しななくてもよくなったのだ。)
したという話だった。つまり人類は、死ななくてもよくなったのだ。
(なんというだいはっけんであろう。
なぜ、そんなことになったかというと、)
なんという大発見であろう。
なぜ、そんなことになったかというと、
(じんたいにかんするせいりがくのけんきゅうがしんぽして、いっさいのびょうきがでんきがくによって)
人体に関する生理学の研究が進歩して、いっさいの病気が電気学によって
(しんだんされ、そしてでんきてきりょうほうでいえることになった。しんぞうのわるいにんげんは、)
診断され、そして電気的療法で癒えることになった。心臓の悪い人間は、
(すぐだいようしんぞうにとりかえることができる。けつあつのたかいにんげんは、)
すぐ代用心臓にとりかえることができる。血圧の高い人間は、
(はんにちぐらいかければ、すっかりけっかんをとりかえることができる。)
半日ぐらいかければ、すっかり血管をとりかえることができる。
(だから、もししぬのがいやなら、けっしてしなないのである。)
だから、もし死ぬのがいやなら、決して死なないのである。
(それでも、このおどろくべきいがくのしんぽがおこなわれたとうじは、だいようぞうきが)
それでも、このおどろくべき医学の進歩がおこなわれた当時は、代用臓器が
(たいへんこうかであったし、そしてきんぞくでつくったかんけいじょう、そうとうにおもく、ために)
たいへん高価であったし、そして金属でつくった関係上、相当に重く、ために
(だいようぞうきをそうちしたにんげんは、やむをえずあるくことができなくなった。)
代用臓器を装置した人間は、やむをえず歩くことができなくなった。
(しんぞうにはいぞうにじんぞうなどと、みっつのぞうきをとりかえると、はじめはぜんじゅうりょうがにんげんの)
心臓に肺臓に腎臓などと、三つの臓器をとりかえると、はじめは全重量が人間の
(さんばいぐらいになったそうで、それではひとりあるきはできない。じぶんでまちを)
三倍ぐらいになったそうで、それでは一人歩きはできない。自分で町を
(あっちへいったりこっちへいったりするためじどうしゃのうえにのりはなし)
あっちへいったりこっちへいったりするため自動車のうえに乗り放し
など
(ということにしておくよりほかにみちがない。
だがいまはそんなことはない。)
ということにしておくよりほかに道がない。
だが今はそんなことはない。