千年後の世界 8 海野十三
昭和初期の作家が書いた近未来のはなし
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問題文
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(「おお、ーー」
といっただけで、ふるはたは、あとにつぐべきことばを)
「おお、――」
といっただけで、フルハタは、あとにつぐべき詞を
(しらなかった。にんげんのびしゅうはさんまんねんのじんるいしをしはいしたようなものだと)
知らなかった。人間の美醜は三万年の人類史を支配したようなものだと
(おもっていたが、いまはいくらでもかおをかえられるようになったときいて)
思っていたが、今はいくらでも顔をかえられるようになったときいて
(たんそくするよりほかなかった。)
歎息するよりほかなかった。
(かせいとのせんそう
いよいよふるはたは、かんおけからそとにあしをふみだすときがきた)
【火星との戦争】
いよいよフルハタは、棺桶から外に足を踏み出すときがきた
(だいちをあるくなんて、いっせんねんいらいのことだとおもうと、じつにかんがいむりょうであった。)
大地を歩くなんて、一千年以来のことだと思うと、じつに感慨無量であった。
(そとへでてみると、そこはほりかけたとんねるのようなところだった。)
外へ出てみると、そこは掘りかけたトンネルのようなところだった。
(そばをみると、いっぽんのみずでっぽうのようなものがころがっている。)
そばを見ると、一本の水鉄砲のようなものが転がっている。
(「これはなんですか」
とふるはたがきくと、)
「これは何ですか」
とフルハタが訊くと、
(「これはあなをあけるきかいです。つちでもこんくりーとでもてっぺきでも、かんたんに)
「これは孔をあける器械です。土でもコンクリートでも鉄壁でも、かんたんに
(あながあきますわ。そのほらあなになっているところ、さっきさんじゅっぷんあまりかかって、)
孔があきますわ。その洞穴になっているところ、さっき三十分あまりかかって、
(わたしがほったのよ」
と、おどろくべきことをちたきょうじゅはいった。)
わたしが掘ったのよ」
と、おどろくべきことをチタ教授はいった。
(ふるはたは、うそかとおもったが、そのみずでっぽうみたいなきかいは、げんしほうかいによる)
フルハタは、嘘かと思ったが、その水鉄砲みたいな器械は、原子崩壊による
(きょだいなるえねるぎーのほうしゅつをりようしたものであるときいて、なるほどそうかと)
巨大なるエネルギーの放出を利用したものであると聞いて、なるほどそうかと
(おもった。
「じゃ、いまどうりょくはすべてげんしほうかいからえねるぎーをとるのですね」)
思った。
「じゃ、いま動力はすべて原子崩壊からエネルギーを取るのですね」
(ときくと、きょうじゅはそうだとこたえて、なんだそんなふるいことをきくと)
と訊くと、教授はそうだとこたえて、なんだそんな古いことを聞くと
(いわんばかりのかおをした。
ほらあなからそとへでてみると、かつてかがくざっしに)
いわんばかりの顔をした。
洞穴から外へ出てみると、かつて科学雑誌に
(でていたいっせんまんねんごのせかいというえそっくりのまちがあらわれた。)
出ていた一千万年後の世界という絵そっくりの街があらわれた。
(まずめについたのは、みちがたてよこじょうげにいくひゃくじょうとはしっていることであった。)
まず目についたのは、路が縦横上下に幾百条と走っていることであった。
(このおびただしいどうろは、ひとつとしてふるはたのしっているどうろのように)
このおびただしい道路は、一つとしてフルハタの知っている道路のように
など
(じゅうもんじにこうさしていなかった。いずれもじょうげにくいちがっているので、おうだんなど)
十文字に交叉していなかった。いずれも上下にくいちがっているので、横断など
(というようなことがなく、どこまでいっても、しんごうでとめられるといったような)
というようなことがなく、どこまで行っても、信号で停められるといったような
(ことがない。)
ことがない。