あやつり人形／谷山浩子

(あたしかなしいあやつりにんぎょう)

あたし 悲しいあやつり人形

(あなたはあたしのにんぎょうつかい)

あなたは あたしの人形使い

(いくらにげてもすぐにひきもどされて)

いくら 逃げても すぐに ひきもどされて

(なきながらなきながらあなたのうでのなか)

泣きながら 泣きながら あなたの腕の中

(にんぎょうごやのまくがあがれば)

人形小屋の幕が上がれば

(まぶしいらいとにてらされながら)

まぶしいライトに 照らされながら

(あたしはおどるのあやつりにんぎょう)

あたしは踊るの あやつり人形

(あなたのつくったぶたいのうえで)

あなたのつくった舞台の上で

(なんどもおもったあなたをころせば)

何度も思った あなたを殺せば

(わたしはひとりであるけるかしら)

わたしはひとりで 歩けるかしら

(だけどかぼそいこんなうででは)

だけど かぼそい こんな腕では

(ないふひとつもにぎれはしない)

ナイフひとつも握れはしない

(あたしかなしいあやつりにんぎょう)

あたし 悲しいあやつり人形

(あなたはあたしのにんぎょうつかい)

あなたは あたしの人形使い

(いくらにげてもすぐにひきもどされて)

いくら 逃げても すぐに ひきもどされて

(なきながらなきながらあなたのうでのなか)

泣きながら 泣きながら あなたの腕の中

(あなたはいつもかたてまにしか)

あなたはいつも 片手間にしか

(あたしのいとをたぐりよせない)

あたしの糸を たぐり寄せない

(あなたはいつもよそみしている)

あなたはいつも よそ見している

(あたしひとりがおどりつづける)

あたしひとりが 踊りつづける

(あいしているわとあたしがいえば)

愛しているわと あたしが言えば

(あいしているよとあなたもこたえる)

愛しているよと あなたも答える

(ふしぎなものねあたしとあなた)

不思議なものね あたしとあなた

(ひとつのことばがこんなにちがう)

ひとつの言葉が こんなにちがう

(あたしかなしいあやつりにんぎょう)

あたし 悲しいあやつり人形

(あなたはあたしのにんぎょうつかい)

あなたは あたしの人形使い

(いくらにげてもすぐにひきもどされて)

いくら 逃げても すぐに ひきもどされて

(なきながらなきながらあなたのうでのなか)

泣きながら 泣きながら あなたの腕の中

(あるひきづくとあなたいなくて)

ある日気づくと あなたいなくて

(あたしひとりがおどっていたわ)

あたしひとりが 踊っていたわ

(あなたのうごかすくせのとおりに)

あなたの動かす癖のとおりに

(あたしそれでもおどっていたわ)

あたし それでも 踊っていたわ

(あたしかなしいあやつりにんぎょう)

あたし 悲しいあやつり人形

(にんぎょうつかいのゆびをはなれて)

人形使いの指をはなれて

(ひとりになってもどこへもゆけない)

ひとりになっても どこへも行けない

(いつまでもいつまでもあなたのかげのなか)

いつまでも いつまでも あなたの影の中