レイトショーを観に行きませんか

(そういえばあなたとざいらいせんにのって)

そういえば、あなたと在来線に乗って

(しらないまちのしらないうみにいるゆめだった)

知らない町の、知らない海にいる夢だった。

(むじんえきのかいさつをとおりこしあなたもきょうはんしゃだってわらった)

無人駅の改札を通り越し、あなたも共犯者だって笑った。

(わらった)

笑った。

(しらないげんごでみたえいがきれいだったな)

知らない言語で見た映画。綺麗だったな。

(じまくがなくてもないてしまう)

字幕がなくても泣いてしまう。

(かえろうか)

「帰ろうか。」

(そういうとあなたはさんばんせんをまった)

そう言うと、あなたは三番線を待った。

(せいはんたいのいえのほうこうをのろった)

正反対の、家の方向を呪った。

(つぎをきめないのがわたしたちのためだ)

次を決めないのが、私たちのためだ。

(ここにしばることのないよう)

ここに縛ることのないよう。

(そういえばあなたとかんらんしゃにのった)

そういえば、あなたと観覧車に乗った。

(ちょうじょうふきんふたりがうまれたまちがみえる)

頂上付近、二人が生まれた町が見える。

(かへんせいのかんけいをのぞまずに)

可変性の関係を望まずに

(よけいなかんじょうをこっけいにいだかぬようせんをした)

余計な感情を、滑稽に抱かぬよう栓をした。

(こんなこときづかずともだちがよかった)

こんなこと、気付かず友達がよかった。

(きずついたことすらしらないでよかった)

傷ついたことすら知らないでよかった。

(ここでいわないのはせめてものはんげき)

ここで言わないのは、せめてもの反撃。

(わたしのことかんがえてしまえ)

私のこと、考えてしまえ。

(がたんごとんゆれるきおくがふえる)

がたんごとん揺れる。記憶が増える。

(これだけあればいきてしまえるようで)

これだけあれば、生きてしまえるようで。

(きづいてるんだねそのたいど)

気付いてるんだね、その態度。

(ぶきようだねっておたがいさまか)

不器用だね、ってお互い様か。

(そういえばあなたとざいらいせんにのって)

そういえば、あなたと在来線に乗って

(しらないまちのしらないうみにいるゆめだった)

知らない町の、知らない海にいる夢だった。

(むじんえきのかいさつをとおりこしあなたもきょうはんしゃだってわらった)

無人駅の改札を通り越し、あなたも共犯者だって笑った。

(わらってたんだよふたりは)

笑ってたんだよ、二人は。

(えいがのようにはいきれない)

映画のようには生きれない。

(はっぴーえんどじゃおわれない)

ハッピーエンドじゃ終われない。

(かえろっか)

「帰ろっか。」

(そういうとわたしはよんばんせんにのった)

そう言うと、私は四番線に乗った。

(おいかけてこないでとこえをしぼった)

追いかけてこないで、と声を絞った。

(じぶんでいったくせにきたいしてしまった)

自分で言ったくせに、期待してしまった。

(なくなまどにうつるわたし)

泣くな、窓に映る私。

(そういえばあなたとざいらいせんにのって)

そういえば、あなたと在来線に乗って。

(せいはんたいのいえのほうこうがおなじで)

正反対の家の方向が、同じで。

(そんなゆめだったよあなたもきょうはんしゃだ)

そんな夢だったよ。あなたも共犯者だ。

(つみをかぶろうわけあっていきて)

罪を被ろう。分け合って、生きて。

(からんころんゆれたきおくにふれた)

からんころん揺れた、記憶に触れた。

(あなたがいたよふりむかないで)

あなたがいたよ。振り向かないで。