指環3(終)江戸川乱歩
江戸川乱歩の小説「指環」です。
今はあまり使われていない、漢字や読み方、表現などがありますが、原文のままです。
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問題文
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(bところが、おめえがしっていながらなんともいいださねえ。)
B ところが、おめえが知って居ながらなんとも言い出さねえ。
(いまにいうかいまにいうかとまちかまえていても、うんともすんともくちをきかねえ。)
今に云うか今に云うかと待ち構えていても、ウンともスンとも口を利かねえ。
(とうとうしんたいけんさのだんどりになっても、まだだまっていやあがる。)
とうとう身体検査の段取りになっても、まだ黙っていやあがる。
(おれあ「さては」とおもったね「こいつはとんだくわせものだぞ。)
俺あ「さては」と思ったね「こいつは飛んだ食わせものだぞ。
(そのままそっとしておいて、あとからひろいにいこうとおもっていやがる」)
そのままソッとして置いて、後から拾いに行こうと思っていやがる」
(あのばあいだが、おれあおかしくなったね。)
あの場合だが、俺あおかしくなったね。
(aふふん、ざまあねえ・・・・・だがまちねえ。するってえと、)
A フフン、ざまあねえ・・・・・だが待ちねえ。するってえと、
(おめえはあれをいったいどこへかくしたんだね。しゃしょうのやつずいぶんきわどいところまで)
おめえはあれを一体どこへ隠したんだね。車掌の奴随分際どい所まで
(しらべやあがった。くちのなかからみみのあなまでくまなくしらべたが、)
検べやあがった。口の中から耳の穴まで隈なく検べたが、
(でも、とうとうみつからなかったじゃないか。)
でも、とうとう見つからなかったじゃないか。
(bおまえもずいぶんおめでてえやろうだな。)
B お前も随分お目出度え野郎だな。
(aはてね。こいつはめんようだね。こうなるてえと、おれあどうもきかずにゃ)
A はてね。こいつは面妖だね。こうなるてえと、俺あどうも聞かずにゃ
(おかれね。そうもったいぶらねえで、こうがくのためにごでんじゅにあずかりたいもんだね。)
置かれね。そう勿体ぶらねえで、後学の為に御伝授に預かり度いもんだね。
(bははは・・・・・まあいいよ。)
B ハハハ・・・・・まあいいよ。
(aよかあねえ、そうじらすもんじゃねえやな。)
A よかあねえ、そう焦らすもんじゃねえやな。
(おれにゃどうもほんとうとはうけとれねえからな。)
俺にゃどうも本当とは受取れねえからな。
(bうそだとおもわれちゃしゃくだから、じゃはなすがね。いかっちゃいけないよ。)
B 嘘だと思われちゃ癪だから、じゃ話すがね。怒っちゃいけないよ。
(じつはね、おめえがこしにさげていたたばこいれのそこへそっとしのばせて)
実はね、おめえが腰に下げていた煙草入れの底へソッとしのばせて
(おいたのさ。それにしても、あのときおまえのしんたいはまるですきだらけだったぜ。)
置いたのさ。それにしても、あの時お前の身体はまるで隙だらけだったぜ。
(はははははは、え、いつそのゆびわをとりもどしたかって、いうまでもねえ、)
ハハハハハハ、エ、いつその指環を取戻したかって、いうまでもねえ、
など
(おめえが、はやくみかんをひろいにいこうと、おおあわてでかいさつぐちをでるときによ。)
おめえが、早く蜜柑を拾いに行こうと、大慌てで改札口を出る時によ。