古今和歌集より八十余首
12問 ランダム
和歌は日本語の美の極み。意味よりも響きを深く味わう
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(そでひじてむすびしみずのこほれるをはるたつけふのかぜやとくらむ)
袖ひじてむすびし水の凍れるを春立つ今日の風や解くらむ
(はなのかをかぜのたよりにたぐへてぞうぐいすさそふしるべにはやる)
花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯誘ふしるべにはやる
(かすがののとぶひののもりいでてみよいまいくひありてわかなつみてむ)
春日野の飛ぶ火の野守出でて見よ今幾日ありて若菜摘みてむ
(はるかすみたつをみすててゆくかりははななきさとにすみやならへる)
春霞立つを見捨てて行く雁は花なき里に住みやならへる
(はるのよのやみはあやなしうめのはないろこそみえねかやはかくるる)
春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる
(みわたせばやなぎさくらをこきまぜてみやこぞはるのにしきなりける)
見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける
(ひさかたのひかりのどけきはるのひにしづごころなくはなのちるらむ)
久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
(さくらばなちりぬるかぜのなごりにはみづなきそらになみぞたちける)
桜花散りぬる風のなごりには水なき空に波ぞ立ちける
(はるごとにはなのさかりはありなめどあひみむことはいのちなりけり)
春ごとに花の盛りはありなめどあひ見むことは命なりけり
(ぬれつつぞしひておりつるとしのうちにはるはいくひもあらじとおもへば)
濡れつつぞ強ひて折りつる年のうちに春は幾日もあらじと思へば
(さつきまつはなたちばなのかをかげばむかしのひとのそでのかぞする)
五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする
(さみだれにものおもひをれほととぎすよふかくなきていづちゆくらむ)
五月雨に物思ひをれ時鳥夜深く鳴きていづちゆくらむ
(はちすばのにごりにしまぬこころもてなにかはつゆをたまとあざむく)
蓮葉の濁りに染まぬ心もて何かは露を玉とあざむく
(なつのよはまだよひながらあけぬるをくものいづこにつきやどるらむ)
夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月やどるらぬ
(ちりをだにすえじとぞおもふさきしよりいもとわがねるとこなつのはな)
塵をだに据ゑじとぞ思ふ咲きしより妹と我が寝るとこ夏の花
(なつとあきとゆきかふそらのかよひじはかたへすずしきかぜやふくらむ)
夏と秋と行きかふ空の通ひ路はかたへ涼しき風や吹くらむ
(あききぬとめにはさやかにみえねどもかぜのおとにぞおどろかれぬる)
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる
(あまのがはあさせしらなみたどりつつわたりはてねばあけぞしにける)
天の川浅瀬しら波たどりつつ渡りはてねば明けぞしにける
(はるがすみかすみていにしかりがねはいまぞなくなるあきぎりのうへに)
春霞かすみていにし雁が音は今ぞ鳴くなる秋霧の上に
(やまざとはあきこそことにわびしけれしかのなくねにめをさましつつ)
山里は秋こそことにわびしけれ鹿の鳴く音に目を覚ましつつ
など
(はなにあかでなにかへるらむをみなへしおほかるのべにねなましものを)
花に飽かで何帰るらむ女郎花多かる野辺に寝なましものを
(しらつゆのいろはひとつをいかにしてあきのこのはをちぢにそむらむ)
白露の色は一つをいかにして秋の木の葉を千々に染むらむ
(こころあてにおらばやおらむはつしものおきまとはせるしらぎくのはな)
心あてに折らばや折らむ初霜の置きまとはせる白菊の花
(おくやまのいはかきもみぢちりぬべしてるひのひかりみるときなくて)
奥山の岩かき紅葉散りぬべし照る日の光見る時なくて
(たつたひめたむくるかみのあればこそあきのこのはのぬさとちるらめ)
立田姫手向くる神のあればこそ秋の木の葉の幣と散るらめ
(もみぢばはそでにこきいれてもいでなむあきはかぎりとみむひとのため)
紅葉葉は袖にこきいれても出でなむ秋は限りと見む人のため
(やまざとはふゆぞさびしさまさりけるひとめもくさもかれぬとおもへば)
山里は冬ぞ寂しさまさりける人目も草もかれぬと思へば
(みよしののやまのしらゆきふみわけていりにしひとのおとづれもせぬ)
み吉野の山の白雪踏み分けて入りにし人のおとづれもせぬ
(ふゆながらそらよりはなのちりくるはくものあなたははるにやあるらむ)
冬ながら空より花の散りくるは雲のあなたは春にやあるらむ
(あさぼらけありあけのつきとみるまでによしののさとにふれるしらゆき)
あさぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪
(はなのいろはゆきにまじりてみえずともかをだににほへひとのしるべく)
花の色は雪にまじりて見えずとも香をだに匂へ人の知るべく
(あらたまのとしのおはりになるごとにゆきもわがみもふりまさりつつ)
新玉の年の終はりになるごとに雪も我が身もふりまさりつつ
(わがきみはちよにやちよにさざれいしのいはほとなりてこけのむすまで)
我が君は千世に八千世にさざれ石の巌となりて苔の生すまで
(やまかぜにさくらふきなむみだれなむはなのまぎれにたちとまるべく)
山風に桜吹きまき乱れなむ花のまぎれにたちとまるべく
(むすぶてのしづくににごるやまのいのあかでもひとにわかれぬるかな)
むすぶ手の雫に濁る山の井の飽かでも人に別れぬるかな
(あまのはらふりさけみればかすがなるみかさのやまにいでしつきかも)
天の原振り放け見れば春日なる三笠の山に出でし月かも
(われはけさうひにぞみつるはないろをあだなるものといふべかりけり)
我は今朝うひにぞ見つる花の色をあだなるものといふべかりけり
(ほととぎすなくやさつきのあやめぐさあやめもしらぬこひもするかな)
時鳥鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな
(かすがののゆきまをわけておひいでくるくさのはつかにみえしきみはも)
春日野の雪間を分けて生ひ出でくる草のはつかに見えし君はも
(よしのがはいはきりとほしゆくみづのおとにはたてじこひはしぬとも)
吉野川岩切り通し行く水の音には立てじ恋ひは死ぬとも
(ひとしれずおもへばくるしくれないのすえつむはなのいろにいでなむ)
人知れず思へば苦し紅の末摘花の色に出でなむ
(おもひつつねればやひとのみえつらむゆめとしりせばさめざらましを)
思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを
(ゆふさればほたるよりけにもゆれどもひかりみねばやひとのつれなき)
夕されば蛍よりけに燃ゆれども光見ねばや人のつれなき
(わがやどのきくのかきねにおくしものきえかへりてぞこひしかりける)
我が宿の菊の垣根に置く霜の消えかへりてぞ恋しかりける
(かはのせになびくたまものみがくれてひとにしられぬこひもするかな)
川の瀬に靡く玉藻の水隠れて人に知られぬ恋もするかな
(ささのはにおくしもよりもひとりねるわがころもでぞさえまさりける)
笹の葉に置く霜よりも一人寝る我が衣手ぞさえまさりける
(さつきやまこずえをたかみほととぎすなくねそらなくこひもするかな)
五月山木末を高み時鳥鳴く音空なく恋もするかな
(こえぬまはよしののやまのさくらばなひとづてにのみききわたるかな)
越えぬ間は吉野の山の桜花人づてにのみ聞きわたるかな
(おきもせずねもせでよるをあかしてははるのものとてながめくらしつ)
起きもせず寝もせで夜を明かしては春のものとてながめくらしつ
(みるめなきわがみをうらとしらねばやかれなであまのあしたゆくくる)
見るめなき我が身をうらと知らねばやかれなであまの足たゆくくる
(ありあけのつれなくみえしわかれよりあかつきばかりうきものはなし)
有明のつれなく見えし別れより暁ばかりうきものはなし
(しののめのほがらほがらとあけゆけばおのがきぬぎぬなるぞかなしき)
しののめのほがらほがらと明けゆけばおのがきぬぎぬなるぞ悲しき
(きみがなもわがなもたてじなにはなるみつともいふなあひきともいはじ)
君が名も我が名も立てじ難波なる見つともいふな逢ひきともいはじ
(いそのかみふるのなかみちなかなかにみずはこひしとおもはましやは)
石上布留の中道なかなかに見ずは恋しと思はましやは
(さむしろにころもかたしきこよひもやわれをまつらむうぢのはしひめ)
狭筵に衣片敷き今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫
(いまこむといひしばかりにながつきのありあけのつきをまちいでつるかな)
今来むといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな
(つきよよしよよしとひとにつげやらばこてふににたりまたずしもあらず)
月夜よし夜よしと人に告げやらば来てふに似たり待たずしもあらず
(わたつみとあれにしとこをいまさらにはらはばそでやあわとうきなむ)
渡津海とあれにし床を今さらに払はば袖や泡と浮きなむ
(つきやあらぬはるやむかしのはるならぬわがみひとつはもとのみにして)
月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身ひとつはもとの身にして
(あひにあひてものおもふころのわがそでにやどるつきさへぬるるかほなる)
あひにあひて物思ふ頃の我が袖に宿る月さへ濡るる顔なる
(いろみえでうつろふものはよのなかのひとのこころのはなにぞありける)
色見えで移ろふものは世の中の人の心の花にぞありける
(わすれぐさなにをかたねとおもひしはつれなきひとのこころなりけり)
忘れ草何をか種と思ひしはつれなき人の心なりけり
(ながれてはいもせのやまのなかにおつるよしののかはのよしやよのなか)
流れては妹背の山の中に落つる吉野の川のよしや世の中
(みなひとははなのころもになりぬなりこけのたもとよかわきだにせよ)
みな人は花の衣になりぬなり苔の袂よかわきだにせよ
(ぬしやたれとへどしらたまいはなくにさらばなべてやあはれとおもはむ)
主や誰問へど白玉いはなくにさらばなべてやあはれと思はむ
(かたちこそみやまがくれのくちきなれこころははなになさばなりなむ)
かたちこそみ山隠れの朽木なれ心は花になさばなりなむ
(おもひせくこころのうちのたきなれやおつとはみれどおとのきこえぬ)
思ひせく心のうちの滝なれや落つとは見れど音の聞こえぬ
(よのなかはなにかつねなるあすかがはきのふのふちぞけふはせになる)
世の中は何か常なるあすか川昨日の淵ぞ今日は瀬になる
(わくらばにとふひとあらばすまのうらにもしほたれつつわぶとこたへよ)
わくらばに問ふ人あらば須磨の浦に藻塩垂れつつわぶとこたへよ
(かんなづきしぐれふりおけるならのはのなにおふみやのふることぞこれ)
神無月時雨降りおけるならの葉の名に負ふ宮の古言ぞこれ
(よのうきめみえぬやまぢへいらむにはおもふひとこそほだしなりけれ)
世の憂き目見えぬ山路へいらむには思ふ人こそほだしなりけれ
(あたらしきとしのはじめにかくしこそちとせをかねてたのしきをつめ)
新しき年の初めにかくしこそ千歳をかねて楽しきを積め
(きみをおきてあだしごころをわがもたばすえのまつやまなみもこえなむ)
君をおきてあだし心を我が持たば末の松山波も越えなむ
(ことならばさかずやはあらぬさくらばなみるわれさへにしづごころなし)
ことならば咲かずやはあらぬ桜花見る我さへにしづ心なし
(ひとはいさこころもしらずふるさとははなぞむかしのかににほひける)
人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香に匂ひける
(さくらばなちりかひくもれおいらくのこむといふなるみちまがふがに)
桜花散りかひくもれ老いらくの来むといふなる道まがふがに
(はなのいろはうつりにけりないたづらにわがみよにふるながめせしまに)
花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに
(はつかりのはつかにこえをききしよりなかぞらにのみものをおもふかな)
初雁のはつかに声を聞きしより中空にのみ物を思ふかな
(おとはやまけさこえくればほととぎすこずえはるかにいまぞなくなる)
音羽山今朝越え来れば時鳥梢遥かに今ぞ鳴くなる
(きのふといひけふとくらしてあすかがはながれてはやきつきひなりけり)
昨日といひ今日と暮らしてあすか川流れてはやき月日なりけり
(ときしもあれあきやはひとのわかるべきあるをみるだにこひしきものを)
時しもあれ秋やは人の別るべきあるを見るだに恋しきものを