君ノ花

(あさつゆをまつよつばのかおるちんちょうげ)

朝露を待つ四葉の香る沈丁花

(よるながしとうたういまさみだれ)

夜長しと詠う今五月雨

(おぼろげなよこがお)

朧げな横顔

(いろづいたひゃくねんの)

色づいた百年の

(そまるまちのいろがさびしい)

染まる街の色が淋しい

(くらやみにさくひとりごころが)

暗闇に咲く一人心が

(かなしくつめたくにじんだ)

哀しく冷たく滲んだ

(きみこいしせつなさ)

君恋いし切なさ

(くちもれるといきからあふれだす)

口漏れる吐息から溢れ出す

(あいたいきみにふれたいいまでも)

会いたい　君に触れたい　今でも

(きみだけのはなさかせたいから)

君だけの花　咲かせたいから

(がらすにけむるくもまの)

硝子に煙る雲間の

(あおいきりさめがふたりをへだててしまった)

青い霧雨が二人を隔ててしまった

(うつせみのかすんだあわいぎんしゃしん)

うつせみの掠んだ淡い銀写真

(いろづきはひゃくねんの)

色づきは百年の

(こどくつつむやさしきえにしの)

孤独包む優しき縁の

(ほつれたはなおをむすぶそのゆびが)

解れた鼻緒を結ぶその指が

(かじかむきせつはとおくて)

悴む季節は遠くて

(きみこいしせつなさ)

君恋いし切なさ

(くちもれるといきからあふれだす)

口漏れる吐息から溢れ出す

(あいたいきみにふれたいいまでも)

会いたい　君に触れたい　今でも

(きみだけのはなさかせたいから)

君だけの花　咲かせたいから

(ひとつひとつつまれていく)

ひとつひとつ摘まれていく

(きみのほほえみばかりが)

君の微笑みばかりが

(いまみなもにうかぶふねに)

今水面に浮かぶ船に

(つれさられていくから)

連れ去られて行くから

(きみこいしおもいが)

君恋いし想いが

(さいてはまたかれていく)

咲いてはまた枯れていく

(おもいだすしろくあわいよこがおいまでも)

思い出す　白く淡い横顔　今でも

(きみだけのはなさかせたい)

君だけの花　咲かせたい

(きみこいしせつなさ)

君恋いし切なさ

(くちもれるといきがあふれだす)

口漏れる吐息が溢れ出す

(あいたいきみにふれたいいまでも)

会いたい　君に触れたい　今でも

(きみだけのはなさかせたい)

君だけの花　咲かせたい

(ああきこえてますか)

嗚呼　聞こえてますか

(いまきみにむけてうたう)

今　君に向けて歌う

(ひとつしかないあいを)

一つしかない愛を

(きみだけのはなさかせたいから)

君だけの花　咲かせたいから