江戸川乱歩 D坂⑦

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1 甘木風寧(週末演 4948 B 5.2 94.3% 401.7 2114 126 33 2024/03/11

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問題文

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(さて、もしこのあいすくりーむやのしょうげんがしんようすべきものだとすると、)

さて、もしこのアイスクリーム屋の証言が信用すべきものだとすると、

(はんにんはたといこのいえのうらぐちからにげたとしても、そのうらぐちから)

犯人はたといこの家の裏口から逃げたとしても、その裏口から

(ゆいいつのつうろであるろじへはでなかったことになる。さればといって、)

唯一の通路である路地へは出なかったことになる。さればといって、

(おもてのほうからでなかったことも、わたしたちがはくばいけんからみていたのだから)

表の方から出なかったことも、私達が白梅軒から見ていたのだから

(まちがいはない。ではかれはいったいどうしたのであろう。)

間違いはない。では彼は一体どうしたのであろう。

(こばやしけいじのかんがえによれば、これは、はんにんがこのろじをとりまいている)

小林刑事の考えによれば、これは、犯人がこの路地を取りまいている

(うらおもてふたがわのながやの、どこかのいえにせんぷくしているか、それとも)

裏表二側の長屋の、どこかの家に潜伏しているか、それとも

(しゃくやにんのうちにはんにんがあるのかどちらかであろう。もっとも)

借家人の内に犯人があるのかどちらかであろう。尤も

(にかいからやねづたいににげるみちはあるけれど、にかいをしらべたところによると、)

二階から屋根伝いに逃げる路はあるけれど、二階を検べた所によると、

(おもてのほうのまどはとりつけのこうしがはまっていてすこしもうごかしたようすはないのだし、)

表の方の窓は取りつけの格子が嵌まっていて少しも動かした様子はないのだし、

(うらのほうのまどだって、このあつさでは、どこのいえもにかいはあけっぱなしで、)

裏の方の窓だって、この暑さでは、どこの家も二階は明けっぱなしで、

(なかにはものほしですずんでいるひともあるくらいだから、ここからにげるのは)

中には物干しで涼んでいる人もある位だから、ここから逃げるのは

(ちょっとむずかしいようにおもわれる。とこういうのだ。)

ちょっと難しい様に思われる。とこういうのだ。

(そこでりんけんしゃたちのあいだに、ちょっとそうさほうしんについてのきょうぎがひらかれたが、)

そこで臨検者達の間に、ちょっと捜査方針についての協議が開かれたが、

(けっきょく、てわけをしてきんじょをのきなみにしらべてみることになった。)

結局、手分けをして近所を軒並に検べて見ることになった。

(といっても、うらおもてのながやをあわせてじゅういっけんしかないのだから、)

といっても、裏表の長屋を合せて十一軒しかないのだから、

(たいしてめんどうではない。それとどうじにいえのなかもさいど、)

大して面倒ではない。それと同時に家の中も再度、

(えんのしたからてんじょううらまでのこるくまなくしらべられた。)

縁の下から天井裏まで残る隈なく検べられた。

(ところがそのけっかは、なんのうるところもなかったばかりでなく、)

ところがその結果は、何の得(う)る処もなかったばかりでなく、

(かえってじじょうをこんなんにしてしまったようにみえた。というのは、)

かえって事情を困難にしてしまった様に見えた。というのは、

など

(ふるほんやのいっけんおいてとなりのかしやのしゅじんが、ひぐれじぶんからついいましがたまで)

古本屋の一軒置いて隣の菓子屋の主人が、日暮れ時分からつい今し方まで

(おくじょうのものほしへでてしゃくはちをふいていたことがわかったが、かれははじめからしまいまで、)

屋上の物干へ出て尺八を吹いていたことが分ったが、彼は始めから終いまで、

(ちょうどふるほんやのにかいのまどのできごとをみのがすはずのないようないちにすわっていたのだ。)

丁度古本屋の二階の窓の出来事を見逃す筈のない様な位置に坐っていたのだ。

(どくしゃしょくん、じけんはなかなかおもしろくなってきた。)

読者諸君、事件はなかなか面白くなって来た。

(はんにんはどこからはいって、どこからにげたのか、)

犯人はどこから入って、どこから逃げたのか、

(うらぐちからでもない、にかいのまどからでもない、そしておもてからではもちろんない。)

裏口からでもない、二階の窓からでもない、そして表からでは勿論ない。

(かれはさいしょからそんざいしなかったのか、それともけむりのようにきえてしまったのか。)

彼は最初から存在しなかったのか、それとも煙の様に消えてしまったのか。

(ふしぎはそればかりでない。)

不思議はそればかりでない。

(こばやしけいじが、けんじのまえにつれてきたふたりのがくせいが、)

小林刑事が、検事の前に連れて来た二人の学生が、

(じつにみょうなことをもうしたてたのだ。それはうらがわのながやにまがりしている、)

実に妙なことを申立てたのだ。それは裏側の長屋に間借りしている、

(あるこうぎょうがっこうのせいとたちで、ふたりともでたらめをいうようなおとこともみえぬが、)

ある工業学校の生徒達で、二人とも出鱈目を云う様な男とも見えぬが、

(それにもかかわらず、かれらのちんじゅつは、このじけんをますますふかかいにするような)

それにも拘らず、彼等の陳述は、この事件を益々不可解にする様な

(せいしつのものだったのである。)

性質のものだったのである。

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