透明猫 4 海野十三
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | saty | 4042 | C | 4.4 | 90.9% | 864.9 | 3883 | 387 | 61 | 2024/09/29 |
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問題文
(みょうなふくのかみ どこというあてもなく、せいじはあるきつづけた。)
【 妙な福の神 】 どこというあてもなく、青二は歩きつづけた。
(あたまには、すきーぼうをかぶり、かざよけをふかくおろしてかおをかくした。それから)
頭には、スキー帽をかぶり、風よけをふかくおろして顔をかくした。それから
(おーとばいにのるひとがよくかけているかざよけめがねをかけた。そのがらすは)
オートバイに乗る人がよくかけている風よけ眼鏡をかけた。そのガラスは
(くろかった。 くびのところを、まふらーでぐるぐるまいた。くびのあたりを)
黒かった。 くびのところを、マフラーでぐるぐるまいた。くびのあたりを
(ひとにみられないためだった。またりょうてには、てぶくろをはめた。 こうしてあるいて)
人に見られないためだった。また両手には、手袋をはめた。 こうして歩いて
(いれば、「あいつはさむがりだな」とおもわれるぐらいで、とがめられることは)
いれば、「あいつは寒がりだな」と思われるぐらいで、とがめられることは
(なさそうであった。 あるきながら、どうしてよのなかにこんなきかいなことが)
なさそうであった。 歩きながら、どうして世の中にこんな奇怪なことが
(あるのか、またどうしてそれがじぶんのからだをおそったのであろうかと、)
あるのか、またどうしてそれが自分のからだをおそったのであろうかと、
(いろいろかんがえつづけた。 そのうちに、あるきくたびれて、せいじはしょうこうえんの)
いろいろ考えつづけた。 そのうちに、歩きくたびれて、青二は小公園の
(べんちにこしをおろした。 おなかもすいたので、つつみをあけて、ぱんをとりだして)
ベンチに腰をおろした。 おなかもすいたので、包をあけて、パンを取出して
(たべた。びんにつめていたみずをのんだ。おなかのすいたのがすこしなおり、)
たべた。びんにつめていた水をのんだ。おなかのすいたのが少しなおり、
(のどのかわきがとまった。 だが、せいじはかなしくなった。「このつぎの)
のどのかわきがとまった。 だが、青二はかなしくなった。「この次の
(しょくじから、じぶんでかって、たべなくてはならない。おかねはすこしあるが、)
食事から、自分で買って、たべなくてはならない。お金はすこしあるが、
(いちにちふつかたてばそれもなくなるだろう。それからさきはどうしたらいいのだろう」)
一日二日たてばそれもなくなるだろう。それから先はどうしたらいいのだろう」
(せいじはうちへもどろうかとかんがえた。 「いやいや、こんなばけものみたいな)
青二はうちへもどろうかと考えた。 「いやいや、こんな化け物みたいな
(からだをもってかえったら、おかあさんがなげきかなしむばかりだ。どんなにうちが)
からだを持って帰ったら、お母さんがなげきかなしむばかりだ。どんなにうちが
(こいしくても、じぶんはうちへかえれないのだ」 ぽたぽたとあついなみだがせいじの)
こいしくても、自分はうちへかえれないのだ」 ぽたぽたとあつい涙が青二の
(ほおをつたって、ひざのうえへおちた。 「おいぼうや。なにをそんなに)
ほおをつたって、膝のうえへ落ちた。 「おい坊や。なにをそんなに
(ふさいでいるんだい」とつぜんこえをせいじにかけたものがいた。 せいじはびっくり)
ふさいでいるんだい」とつぜん声を青二にかけた者がいた。 青二はびっくり
(してかおをあげた。するとそこにはひとりのせいねんがたっていた。だぶるのせびろをき、)
して顔をあげた。するとそこには一人の青年が立っていた。ダブルの背広を着、
(とうはつをながくのばして、きれいにわけたしんしふうのせいねんだった。しかしふくそうの)
頭髪をながくのばして、きれいに分けた紳士風の青年だった。しかし服装の
(こぎれいなわりに、かおはやけとたんのようにでこぼこし、しかくなほおには、)
小ぎれいなわりに、顔はやけトタンのようにでこぼこし、四角な頬には、
(にきびがたくさんふきでていた。 が、せいねんは、にこやかにえがおをつくって、)
にきびがたくさんふき出ていた。 が、青年は、にこやかに笑顔をつくって、
(せいじをみおろしていた。 「なくなんて、おとこのこのすることじゃないよ。)
青二を見下ろしていた。 「泣くなんて、男の子のすることじゃないよ。
(おれだってひきあげてきたときはなきたくなったさ。だけど、ないたって)
おれだって引揚げて来たときは泣きたくなったさ。だけど、泣いたって
(しょうがないとおもってあきらめて、あとはどんなくるしいことがあっても、)
しょうがないと思ってあきらめて、あとはどんな苦しいことがあっても、
(にこにこしてくらしているさ。らくてんしゅぎにかぎるよ。そしてこまったら、みっかでも)
にこにこして暮らしているさ。楽天主義にかぎるよ。そして困ったら、三日でも
(よっかでもよくかんがえるんだ。かんがえて、みちがひらけないことってないよ。ぼうやおまえは)
四日でもよく考えるんだ。考えて、道がひらけないことってないよ。坊やお前は
(うちがないんだろう」 いいえ、とこたえようとしたが、せいじはいまはうちを)
うちがないんだろう」 いいえ、と答えようとしたが、青二は今はうちを
(でたんだからじぶんはうちなしだ。だからせいじはうなずいた。 せいねんは)
出たんだから自分はうちなしだ。だから青二はうなずいた。 青年は
(「そうだろうとおもった」といって「それから、くうにこまっているんだろう」)
「そうだろうと思った」といって「それから、食うに困っているんだろう」
(ときいた。 せいじは、やっぱりうなずくしかなかった。)
ときいた。 青二は、やっぱりうなずくしかなかった。
(「よおし、しんぱいするな。おれについてこい。おまえひとりぐらいは、たらふく)
「よおし、心配するな。おれについて来い。お前ひとりぐらいは、たらふく
(くわせてやる。さあいこう」 どうしてそのせいねんが、せいじにそうしんせつなのか)
食わせてやる。さあ行こう」 どうしてその青年が、青二にそう親切なのか
(わからなかった。しかしいまはそのせいねんにちからをかりるよりほかみちがないことが、)
分らなかった。しかし今はその青年に力を借りるよりほか道がないことが、
(せいじにわかっていた。そこでせいじは、このせいねんに、じゅうだいなひみつをあかすことにした)
青二に分っていた。そこで青二は、この青年に、重大な秘密をあかすことにした
(ただしせいじは、じぶんのことは、さすがにいいだすことができなかった。)
ただし青二は、自分のことは、さすがにいいだすことが出来なかった。
(ねこのことだけをはなしたのである。 するとせいねんむつさんは、めをかがやかして)
猫のことだけを話したのである。 すると青年六さんは、目をかがやかして
(よろこんだ。 「え、そいつは、すばらしいじゃないか。たいへんなかねもうけが)
喜んだ。 「え、そいつは、すばらしいじゃないか。たいへんな金もうけが
(ころがりこんだものだ。いや・・・・・・おまえ、これはおおもうけになるぜ。おれにばんじを)
ころがりこんだものだ。いや……お前、これは大もうけになるぜ。おれに万事を
(まかせなよ。そしてりえきはごぶごぶにわけよう」 むつさんはすっかり)
まかせなよ。そして利益は五分五分に分けよう」 六さんはすっかり
(のりきになった。 「ところでちょっと、そのほんぞんさまというのを)
乗り気になった。 「ところでちょっと、その本尊さまというのを
(みせてくれよ」 そこでせいじは、ねこのはいっているふろしきを、)
見せてくれよ」 そこで青二は、猫のはいっているふろしきを、
(むつさんにさわらせた。 「なるほど、たしかにこのなかに、ねこみたいなものが)
六さんにさわらせた。 「なるほど、たしかにこの中に、猫みたいなものが
(はいっているぞ」 「そこで、ふろしきのなかをのぞいてごらん」)
はいっているぞ」 「そこで、ふろしきの中をのぞいてごらん」
(せいじは、ふろしきのはしをすこしあけて、むつさんになかをのぞかせた。 「おや)
青二は、ふろしきのはしをすこしあけて、六さんに中をのぞかせた。 「おや
(いないね。あら、ふろしきのそとからさわると、ちゃんとはいってるんだが・・・・・・」)
いないね。あら、ふろしきの外からさわると、ちゃんとはいってるんだが……」
(ふしぎにおもったむつさんは、こんどはてぶくろをはめたてを、ふろしきのなかに)
ふしぎに思った六さんは、こんどは手袋をはめた手を、ふろしきの中に
(さしいれた。 「ありゃりゃ、おどろいたなあ。ちゃんとねこみたいなものの)
さしいれた。 「ありゃりゃ、おどろいたなあ。ちゃんと猫みたいなものの
(からだにさわる。ふーん、やっぱりとうめいねこだ。いんちきじゃねえ。へえーっ、)
からだにさわる。ふーん、やっぱり透明猫だ。インチキじゃねえ。へえーっ、
(おまえはまあ、たいしたかねのなるきをもっているじゃねえか。よし、これなら)
お前はまあ、大した金のなる木を持っているじゃねえか。よし、これなら
(こやがけをして、ひとり10えんのにゅうじょうりょうで、いらっしゃい、さあいらっしゃい、)
小屋がけをして、一人十円の入場料で、いらっしゃい、さあいらっしゃい、
(さあいらっしゃいとやればいちにち2せんにんははいる。すると1ん2が2で2まんえん」)
さあいらっしゃいとやれば一日に二千人ははいる。すると一ン二が二で二万円」
(せいじはおどろいた。なんといいけいさんのめいじんだろう。 「2まんえんはすこし)
青二はおどろいた。何といい計算の名人だろう。 「二万円はすこし
(すくないなあ。にゅうじょうりょうを20えんにあげる。そのかわりおきゃくをあおってしまう。)
少ないなあ。入場料を二十円にあげる。そのかわりお客をあおってしまう。
(ええっと「10まんえんのけんしょう」だとゆくんだ。「もしこのとうめいねこがいんちきなる)
ええっと『十万円の懸賞』だとゆくんだ。『もしこの透明猫がインチキなる
(ことをはっけんされたるおきゃくさんには、そっきんで、10まんえんをぞうていいたします」とかいて)
ことを発見されたるお客さんには、即金で、十万円を贈呈いたします』と書いて
(はりだすんだ。するてえと、よくのかわのつっぱったれんちゅうがわんさわんさと)
はりだすんだ。するてえと、慾の皮のつっぱった連中がわんさわんさと
(おしかけて、10まんえんとふしぎなみせもののりょうほうにつられてどんどんはいる。)
おしかけて、十万円とふしぎな見世物の両方につられてどんどんはいる。
(20えんのにゅうじょうりょうだってやすいくらいだ。まずいちにちに2まんにんははいるね。)
二十円の入場料だってやすいくらいだ。まず一日に二万人ははいるね。
(すると22んが4で、40まんえんだ。ほう、これはこたえられねえ」)
すると二二ンが四で、四十万円だ。ほう、これはこたえられねえ」