セロ弾き群青

(どこでまちがえたんだろうな)

何処で間違えたんだろうな

(きづいたらしごともなかった)

気付いたら仕事もなかった

(きゅうりょうぶくろのかわりにもらえたのはらくだいのはんこだけ)

給料袋の代わりに貰えたのは落第の判子だけ

(ゆかにちらかったごみをかたづけることすらめんどうで)

床に散らかったゴミを片付けることすら面倒で

(にんげんにもどるきなんてなく)

人間に戻る気なんてなく

(ひびねっととげーむだけ)

日々ネットとゲームだけ

(へやのすみにたてかけられたせろは)

部屋の隅に立てかけられたセロは

(いまじゃものほしざおのかわりだ)

今じゃ物干し竿の代わりだ

(すてないだけだ)

捨てないだけだ

(せろをひいている)

セロを弾いている

(あのころにもどったみたいにへやがないている)

あの頃に戻ったみたいに部屋が泣いている

(せろをひいている)

セロを弾いている

(おもいでにこびりついたくもがあおくゆれる)

想い出にこびり付いた雲が青く揺れる

(どこでまちがえたんだろうな)

何処で間違えたんだろうな

(さいのうがないとしったときか)

才能がないと知ったときか

(みぎみみがきこえなくなったときか)

右耳が聞こえなくなったときか

(あのおーけすとらをやめたときか)

あのオーケストラを辞めたときか

(あるよるまちをあるいていたら)

ある夜街を歩いていたら

(すりにあってこんわくした)

スリにあって困惑した

(ぬすまれたのはせいかつひだけじゃない)

盗まれたのは生活費だけじゃない

(にんげんのこころがなくなった)

人間の心がなくなった

(みちゆくひとのむなぐらをつかんだ)

道行く人の胸ぐらを掴んだ

(だれでもいいからかえせとさけんだ)

誰でもいいから返せと叫んだ

(かえしてくれよやさしさってのを)

返してくれよ、優しさってのを

(せろをひいている)

セロを弾いている

(あのころにもどったみたいにへやがないている)

あの頃に戻ったみたいに部屋が泣いている

(せろをひいている)

セロを弾いている

(おもいでにこびりついたくもがあおくゆれる)

想い出にこびり付いた雲が青く揺れる

(まえをむかずあるかずとまってることがいけませんか)

前を向かず歩かず止まってることがいけませんか

(いつまでだってあせないおもいでを)

いつまでだって褪せない思い出を

(あいしたままじゃだめですか)

愛したままじゃ駄目ですか

(はるをあるいてまちをあるいてよるをあるいて)

春を歩いて、街を歩いて、夜を歩いて、

(やっとわかったんだ)

やっとわかったんだ

(あぁもういちどだけ)

あぁ、もう一度だけ

(もういちどだけ)

もう一度だけ

(せろがひきたい)

「セロが弾きたい」

(はるがさいているむねがないている)

春が咲いている、胸が泣いている

(きしゃにのるぼくはいくなにかいうきみがみえなくなる)

汽車に乗る僕は往く、何か言う君が見えなくなる

(せろをひいている)

セロを弾いている

(あのころにもどったみたいにへやがないている)

あの頃に戻ったみたいに部屋が泣いている

(せろをひいている)

セロを弾いている

(おもいでにこびりついたくもがあおくゆれる)

想い出にこびり付いた雲が青く揺れる

(せろをひいている)

セロを弾いている