ツクツク法師1  夢野久作

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ツクツクボウシの名前の由来。集団心理は怖い。

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問題文

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(むかしあるところにひとりのよくばりのぼうさんがおりました。 まいにちまいにちほうぼうへ)

むかしあるところに一人の欲ばりの坊さんがおりました。  毎日毎日方々へ

(おきょうをよみにいってもらってきたおかねをひとつのおおきなかめのなかにためていましたが、)

お経を読みに行って貰って来たお金を一つの大きな甕の中に溜めていましたが、

(だんだんいっぱいになってくるにつれてどろぼうにとられそうなのでこわくてたまらなく)

だんだん一パイになってくるにつれて泥棒に取られそうなので怖くてたまらなく

(なりまして、あるばんのことこぞうにもだれにもしれないようにおにわのすみにうめ、)

なりまして、或る晩のこと小僧にも誰にも知れないようにお庭の隅に埋め、

(そのうえにかしのきをいっぽんうえました。)

その上に樫の木を一本植えました。

(「かしのきよかしのきよ、おまえにそのおかねはやるからたいせつにばんをするんだぞ」)

「樫の木よ樫の木よ、お前にそのお金はやるから大切に番をするんだぞ」

(こういってきかせると、ぼうさんはてやあしをあらってくわをかたづけてねてしまいました)

こう言ってきかせると、坊さんは手や足を洗って鍬を片づけて寝てしまいました

(あくるひからそのかしのきはずんずんおおきくなりましたが、ふしぎなことには)

あくる日からその樫の木はずんずん大きくなりましたが、不思議なことには

(よるになるとかぜがふくたんびに、そのかしのきのはのあいだでちゃらんちゃらんと)

夜になると風が吹くたんびに、その樫の木の葉の間でチャランチャランと

(おかねのぶつかるおとがします。 ぼうさんはよろこんで、)

お金のぶつかる音がします。  坊さんはよろこんで、

(「あのかしのきはかんしんだ。まいばんひとがねてしまってからおかねがへらないように)

「あの樫の木は感心だ。毎晩人が寝てしまってからお金が減らないように

(かぞえているのだな」 とおもっていました。)

数えているのだな」 と思っていました。

(しかしそのおとをきいたむらのひとはそうおもいませんでした。 「あのおてらでは)

しかしその音をきいた村の人はそう思いませんでした。 「あのお寺では

(よるになるとおかねをかぞえるおとがする。あのけちんぼのぼうさんがどっさりおかねを)

夜になるとお金を数える音がする。あのケチンボの坊さんがドッサリお金を

(ためているのにちがいない」 とみないいあっておりました。)

溜めているのに違いない」  と皆言い合っておりました。

(ところがあるとしのこと、そのきんじょのむらむらであめがふらないためにおこめがちっとも)

ところがある年のこと、その近所の村々で雨が降らないためにお米がちっとも

(できなくてひゃくしょうがたいへんにこまったことがありました。 むらのひとびとはもうしあわせて)

出来なくて百姓が大変に困ったことがありました。  村の人々は申し合わせて

(おてらへきて、 「おしょうさん、すみませんがあなたのおかねをかしていただけますまいか。)

お寺へ来て、 「和尚さん、すみませんが貴方のお金を貸して戴けますまいか。

(それでおこめをかってみんなたべますから。そのかわりらいねんはきっとおこめをつくって)

それでお米を買ってみんなたべますから。その代り来年はきっとお米を作って

(あなたにたくさんあげますから」 とてをあわせておがみながらたのみました。)

あなたにたくさん上げますから」  と手を合わせて拝みながら頼みました。

など

(しかしぼうさんはしらぬかおをしてこういいました。 「それはこまりましたね。)

しかし坊さんは知らぬ顔をしてこう言いました。 「それは困りましたね。

(わたしのところにはおかねはいちもんもありませんよ。あるならさがしてごらんなさい」)

私のところにはお金は一文もありませんよ。あるなら探して御覧なさい」

(これをきいたむらのひとはたいへんおこりました。 「あなたはぼうさんのくせにうそを)

これをきいた村の人は大変に怒りました。 「あなたは坊さんの癖に嘘を

(ついてはいけません。あんなにまいばんまいばんおかねをかぞえていながらいちもんもないはずは)

ついてはいけません。あんなに毎晩毎晩お金を数えていながら一文もない筈は

(ありません。みんなごはんがいただけないでしにそうになっているのに、)

ありません。みんな御飯がいただけないで死にそうになっているのに、

(そんないじのわるいことをいうのならひどいめにあわせますぞ」)

そんな意地のわるいことを言うのならひどい目に合わせますぞ」

(「ひどいめにあわせるならあわせろ。おかねはほんとうにないのだから」)

「ひどい目に合わせるなら合わせろ。お金は本当にないのだから」

(むらのひとたちはこれをきくとみんないきどおっていえじゅうをさがしましたが、なるほど、)

村の人たちはこれを聞くとみんな憤って家中を探しましたが、成る程、

(ぼうさんのいうとおりどこをさがしてもおかねはいちもんもありません。)

坊さんの言う通り何処を探してもお金は一文もありません。

(しかたがないのでみんなぼうさんにあやまって、うちへかえってしまいました。)

しかたがないのでみんな坊さんにあやまって、うちへ帰ってしまいました。

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