若紫との出会い

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タグ国語 古文
源氏物語 若紫
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1 奈良の子 3542 D+ 3.7 95.2% 350.6 1307 65 29 2024/11/20

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(ひもいとながきに、つれづれなれば、ゆうぐれのいたうかすみたるにまぎれて、)

日もいと長きに、つれづれなれば、夕暮れのいたうかすみたるに紛れて、

(かのこしばがきのもとにたちいでたまふ。)

かの小柴垣のもとに立ち出でたまふ。

(ひとびとはかえしたまひて、これみつのあそんとのぞきたまへば、)

人々は帰したまひて、惟光朝臣とのぞきたまへば、

(ただこのにしおもてにしも、じぶつすえたてまつりておこなふ、あまなりけり。)

ただこの西面にしも、持仏据ゑたてまつりて行ふ、尼なりけり。

(すだれすこしあげて、はなたてまつるめり。)

簾少し上げて、花奉るめり。

(なかのはしらによりいて、きょうそくのうえにきょうをおきて、)

中の柱に寄りゐて、脇息の上に経を置きて、

(いとなやましげによみいたるあまぎみ、ただびととみえず。)

いとなやましげに読みゐたる尼君、ただ人と見えず。

(よそじよばかりにて、いとしろうあてに、やせたれどつらつきふくらかに、)

四十余ばかりにて、いと白うあてに、痩せたれど面つきふくらかに、

(まみのほど、かみのうつくしげにそがれたるすえも、)

まみのほど、髪のうつくしげにそがれたる末も、

(なかなかながきよりもこよなういまめかしきものかな、とあはれにみたまふ。)

なかなか長きよりもこよなう今めかしきものかな、とあはれに見たまふ。

(きよげなるおとなふたりばかり、さてはわらわべぞいでいりあそぶ。)

清げなる大人二人ばかり、さては童べぞ出で入り遊ぶ。

(なかに、とおばかりにやあらむとみえて、)

中に、十ばかりにやあらむと見えて、

(しろききぬ、やまぶきなどのなえたるきてはしりきたるおんなご、)

白き衣、山吹などのなえたる着て走り来たる女子、

(あまたみえつるこどもににるべうもあらず、)

あまた見えつる子どもに似るべうもあらず、

(いみじくおひさきみえてうつくしげなるかたちなり。)

いみじく生ひ先見えてうつくしげなるかたちなり。

(かみはおうぎをひろげたるやうにゆらゆらとして、)

髪は扇を広げたるやうにゆらゆらとして、

(かおはいとあかくすりなしてたてり。)

顔はいと赤くすりなして立てり。

(「なにごとぞや。わらわべとはらだちたまへるか。」とて、)

「何事ぞや。童べと腹立ちたまへるか。」とて、

(あまぎみのみあげたるに、すこしおぼえたるところあれば、こなめりとみたまふ。)

尼君の見上げたるに、少しおぼえたるところあれば、子なめりと見たまふ。

(「すずめのこをいぬきがにがしつる。)

「すずめの子を犬君が逃がしつる。

など

(ふせごのなかにこめたりつるものを。」とて、)

伏籠の中にこめたりつるものを。」とて、

(いとくちおしとおもへり。)

いと口惜しと思へり。

(このいたるおとな、)

このゐたる大人、

(「れいの、こころなしのかかるわざをしてさいなまるるこそ、いとこころづきなけれ。)

「例の、心なしのかかるわざをしてさいなまるるこそ、いと心づきなけれ。

(いづかたへかまかりぬる。)

いづ方へかまかりぬる。

(いとをかしうやうやうなりつるものを。)

いとをかしうやうやうなりつるものを。

(からすなどもこそみつくれ。」とてたちていく。)

烏などもこそ見つくれ。」とて立ちて行く。

(かみゆるるかにいとながく、めやすきひとなめり。)

髪ゆるるかにいと長く、目安き人なめり。

(しょうなごんのめのととぞひといふめるは、このこのうしろみなるべし。)

少納言乳母とぞ人いふめるは、この子の後ろ見なるべし。

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