めおと蝶 山本周五郎 ⑤
妻に頑なな大目付の夫・良平、結婚は失敗だと思い夫を拒む信乃。
信乃は情の薄い夫・良平を好きになることができない。ある日かつて思いを寄せていた智也が投獄される。
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問題文
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(そのやはんのことであるが、しんじょでりょうへいはしのにあやまった、)
その夜半のことであるが、寝所で良平は信乃にあやまった、
(らんぼうなことをしてわるかったというのである。)
乱暴なことをして悪かったというのである。
(「やくめのことでむずかしいもんだいがおこっている、)
「役目のことでむずかしい問題が起っている、
(きもちがすこしもおちつかない、いらいらしていたのでついあんなことを)
気持が少しもおちつかない、苛々していたのでついあんなことを
(いったのだ、しかし、・・・いやわるかった、わすれてくれ」)
云ったのだ、しかし、・・・いや悪かった、忘れて呉れ」
(りょうへいはこちらへてをのばした。)
良平はこちらへ手を伸ばした。
(けれどもしのはだまってはんたいのほうへねがえった。)
けれども信乃は黙って反対のほうへ寝返った。
(うえむらのえんだんはいまきこくろうからでたものであった。)
上村の縁談は井巻国老から出たものであった。
(そのときしのがどうしてことわれなかったのか、)
そのとき信乃がどうして断われなかったのか、
(まだいきていたちちも、ははもあにもきょうせいはしなかった。)
まだ生きていた父も、母も兄も強制はしなかった。
(しかもしのはしょうだくしたのである。)
しかも信乃は承諾したのである。
(あおいかはんのよるのできごとが、しのにはつみのようにかんじられていた。)
青井河畔の夜の出来事が、信乃には罪のように感じられていた。
(そのときのいっしゅんのせんりつににたふかいかんかくのよろこびは、)
そのときの一瞬の戦慄に似た深い感覚の歓びは、
(はばかりかくすべきもの、ふどうとくなもの、)
憚り隠すべきもの、不道徳なもの、
(うけてはならぬもの、はずべきものというふうにおもえた。)
受けてはならぬもの、恥ずべきものというふうに思えた。
(おそらくそういういしきが、うえむらとのえんだんをしょうちさせたのであろう。)
おそらくそういう意識が、上村との縁談を承知させたのであろう。
(たしかに、しょうだくのへんじをしたあとでは、)
たしかに、承諾の返辞をしたあとでは、
(ながいあいだのせいしんてききんちょうからかいほうされたかのように、)
ながいあいだの精神的緊張から解放されたかのように、
(しずかにこころのやすらいだのをおぼえている。)
静かに心のやすらいだのを覚えている。
(うえむらとのけっこんにいもうとだけははんたいした。)
上村との結婚に妹だけは反対した。
など
(もちろんだれもあいてにしなかった。)
もちろん誰も相手にしなかった。
(いもうとはしのがうえむらへきてからもはんたいのいしをかえぬふうで、)
妹は信乃が上村へ来てからも反対の意志を変えぬふうで、
(ひんぱんにたずねてきながら、どうしてもりょうへいになじもうとしなかった。)
頻繁に訪ねて来ながら、どうしても良平になじもうとしなかった。
(おにいさまのめはよのなかをぜんあくのふたつにしかくべつできないめだわ、)
お義兄さまの眼は世の中を善悪の二つにしか区別できない眼だわ、
(よろこびもかなしみもしらない、ゆるすこともひとをあいすることもしらない、)
喜びも悲しみも知らない、赦すことも人を愛することも知らない、
(つめたい、いしのようなめだわ。)
冷たい、石のような眼だわ。
(ふみよはしばしばむきになってそういった。)
文代はしばしばむきになってそう云った。
(おにいさまをみるとこっちがぞっとしてくるの、)
お義兄さまを見るとこっちがぞっとしてくるの、
(こおったいしにでもさわったように、ぞうっとさむけだってくるわ。)
氷った石にでも触ったように、ぞうっと寒気立ってくるわ。
(しのはわらってききながすかごくかるくたしなめるていどであしらった。)
信乃は笑って聞きながすかごく軽くたしなめる程度であしらった。
(じぶんのこころをみすかされないために、)
自分の心をみすかされないために、
(あなたにはなにもわかっていないのだ、そういうたいどをとってきた。)
あなたにはなにもわかっていないのだ、そういう態度をとって来た。
(そうしてついにはけっこんのこうふこうについて、)
そうしてついには結婚の幸不幸について、
(せつゆめいたことさえいってしまった。)
説諭めいたことさえ云ってしまった。
(それにたいして、いもうとはただひとことでこたえた。)
それに対して、妹はただひと言で答えた。
(おかわいそうなおねえさま。)
お可哀そうなお姉さま。
(かなりひがたってからも、それをおもいだすとしのはぞっとした。)
かなり日が経ってからも、それを思いだすと信乃はぞっとした。
(からだをちぢめ、かたくめをつむって、いきぐるしさのあまりあえぐのであった。)
体を縮め、かたく眼をつむって、息苦しさの余りあえぐのであった。
(じゅういちがつになってから、りょうへいはじょうちゅうでとまることがおおくなった。)
十一月になってから、良平は城中で泊ることが多くなった。
(やくどころのしごとがたぼうだそうで、それは「むずかしいもんだいがおこって」)
役所の仕事が多忙だそうで、それは「むずかしい問題が起って」
(といったことにかんけいがあるらしい、)
と云ったことに関係があるらしい、
(ときにはし、ごにんのどうりょうをつれてかえり、)
ときには四、五人の同僚を伴れて帰り、
(までよをてっすることなどもあった。)
間で夜を徹することなどもあった。
(きゃくがさんにんとまったよくちょうのことである。)
客が三人泊った翌朝のことである。
(まだほのぐらいじぶんにちょうしょくをめいじ、)
まだほの暗いじぶんに朝食を命じ、
(それがすむとりょうへいもきゃくといっしょにでていった。)
それが済むと良平も客といっしょに出ていった。
(そのあと、おっとのいまをそうじしていると、)
そのあと、良人の居間を掃除していると、
(ひとつづりのしょるいをみつけた。)
ひと綴りの書類をみつけた。
(これまでけっしてそんなことはなかった、)
これまで決してそんなことはなかった、
(とくにこうようにかんするものはたいせつにしていて、)
特に公用に関する物は大切にしていて、
(つくえのうえにだしておくことさえなかったのであるが、)
机の上に出して置くことさえなかったのであるが、
(それはつくえのむこうにおちていたし、いそいでいたのでわすれたものだろう。)
それは机の向うに落ちていたし、いそいでいたので忘れたものだろう。
(そのままつくえへのせようとして、しのはなにげなくばらばらとめくってみた。)
そのまま机へ載せようとして、信乃はなにげなくばらばらとめくってみた。
(それはごろくはのつづりで、つみとががきだろう、)
それは五六葉の綴りで、罪科書だろう、
(じんめいにすうぎょうのざいじょうをふしたものがれっきしてあり、)
人名に数行の罪状を附したものが列記してあり、
(そのかっこのうえに「し」「つい」「えい」などのじがかいてある、)
その各個の上に「死」「追」「永」などの字が書いてある、
(しというじはしゅであった。)
死という字は朱であった。