幽霊船の秘密6 海野十三

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SOS信号受けて貨物船が向かった先には船がなく…
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 kkk 6574 S+ 6.9 94.6% 539.2 3758 213 60 2024/09/25

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問題文

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(「うむ、これはますますあれてくるぞ。しんろをまひがしにとることはむりだ。)

「うむ、これはますます荒れてくるぞ。針路を真東にとることは無理だ。

(むりにそれをやるとぼーとがちんぼつしてしまうし、せんいんがつかれきってだいじを)

無理にそれをやるとボートが沈没してしまうし、船員が疲れ切って大事を

(ひきおこすきけんがある。よし、ふるやきょくちょう、ふうろうにさからわぬようにしてよあけを)

ひきおこす危険がある。よし、古谷局長、風浪にさからわぬようにして夜明けを

(まつことにしよう。ほかのぼーとへ、それをしらせてくれ」 せんちょうのことばに)

まつことにしよう。他のボートへ、それを知らせてくれ」  船長の言葉に

(したがって、ふるやきょくちょうはすぐにしんごうとうをふってほかのぼーとへしんごうをおくった。)

従って、古谷局長はすぐに信号灯をふって他のボートへ信号をおくった。

(そのしんごうは、どうやらこうやら、ほかのぼーとへもつうじたらしかった。)

その信号は、どうやらこうやら、他のボートへも通じたらしかった。

(それをあいずのように、ようじょうをふきまくるかぜはいっそうはげしさをくわえた。)

それを合図のように、洋上をふきまくる風は一層はげしさを加えた。

(どーんと、すごいものおととともに、しおがざざーっとあたまのうえからたきのように)

どーんと、すごい物音とともに、潮がざざーっと頭のうえから滝のように

(おちてくる。 「おい、てのあいているものは、みずをかいだせ。)

落ちてくる。 「おい、手の空いている者は、水をかい出せ。

(ぐずぐずしているとぼーとはひっくりかえるぞ」 せんちょうはぬかりなく)

ぐずぐずしているとボートはひっくりかえるぞ」  船長はぬかりなく

(めいれいをくだした。 せいかしか。ぼーとののりくみいんは、いまやぜんしんのちからを)

命令をくだした。  生か死か。ボートの乗組員は、いまや全身の力を

(かたむけてふうろうとたたかうのであった。)

傾けて風浪と闘うのであった。

(しんだようなようじょう のりくみいんのしとうは、よあけまでつづいた。)

【死んだような洋上】  乗組員の死闘は、夜明までつづいた。

(さすがのふうろうも、のりくみいんのねばりづよさにけいいをあらわしたものか、ひがしのそらが)

さすがの風浪も、乗組員のねばりづよさに敬意を表したものか、東の空が

(しらむとともに、だんだんといきおいをよわめていった。そしてよるが)

白むとともに、だんだんと勢いをよわめていった。そして夜が

(あけはなたれたころには、かぜもなみも、まるでうそのようにおだやかにおさまっていた。)

明けはなたれた頃には、風も浪も、まるで嘘のように穏やかにおさまっていた。

(「おう、たすかったぞ」 のりくみいんは、あんしんのいろをうかべると、そのままごろりと)

「おう、助かったぞ」  乗組員は、安心の色をうかべると、そのままごろりと

(よこになった。にわかにすいまがやってきた。みんなしんだようになって、)

横になった。俄かに睡魔がやってきた。みんな死んだようになって、

(すいみんをむさぼる。 せんちょうも、いつのまにかふかいねむりにおちていた。)

睡眠をむさぼる。  船長も、いつの間にか深い睡りにおちていた。

(が、かれは1じかんもするとぱっとめをさました。 「やっ、ふかくにもねむって)

が、彼は一時間もするとぱっと眼をさました。 「やっ、不覚にも睡って

など

(しまった。こいつはいけない」 せんちょうはめをこすりながらていないをみまわした。)

しまった。こいつはいけない」  船長は眼をこすりながら艇内を見まわした。

(だれもかれもしにんのようなかおをしている。 そらは、うすぐもりだ。)

誰も彼も死人のような顔をしている。  空は、うすぐもりだ。

(まだてんこうかいふくとまではゆかない。だからゆだんはきんもつである。 「そうだ。ほかの)

まだ天候回復とまではゆかない。だから油断は禁物である。 「そうだ。他の

(ぼーとはどうしたろう」 せんちょうは、めをぱちぱちさせながら、ようじょうをぐるっと)

ボートはどうしたろう」  船長は、眼をぱちぱちさせながら、洋上をぐるっと

(みわたした。だがもとめるぼーとのかげは、どこにもみえなかった。)

見わたした。だが求めるボートの影は、どこにも見えなかった。

(「おい、ふるやくんおきろ!」 せんちょうは、そばにたおれているむでんきょくちょうのからだを)

「おい、古谷君起きろ!」  船長は、傍に仆れている無電局長の身体を

(ゆすぶった。 きょくちょうは、びっくりしてはねおきた。)

ゆすぶった。  局長は、びっくりして跳ね起きた。

(「おい、とうとうほかのぼーととはぐれてしまったらしい、それともきみには)

「おい、とうとう他のボートとはぐれてしまったらしい、それとも君には

(みえるかね」 「えっ、ほかのぼーとがみえないのですか。3せきとも)

見えるかね」 「えっ、他のボートが見えないのですか。三隻とも

(みえませんか」 きょくちょうはおどろいたらしい。せんちょうがぼうえんきょうをわたすと、)

見えませんか」  局長はおどろいたらしい。船長が望遠鏡をわたすと、

(それをめにあてて、すいへいせんをいくどもみまわした。 「どうだ、みえるか」)

それを眼にあてて、水平線をいくども見まわした。 「どうだ、見えるか」

(きょくちょうは、それにたいしてへんじもせず、そのかわりにぼうえんきょうをめからはなして、)

局長は、それに対して返事もせず、その代りに望遠鏡を眼から放して、

(くびをさゆうにふった。 「どこへいってしまったんだろうな」)

首を左右にふった。 「どこへいってしまったんだろうな」

(せんちょうは、ためいきをついた。 「さあ、たすかるにはたすかって、どこかにひょうりゅうして)

船長は、ため息をついた。 「さあ、助かるには助かって、どこかに漂流して

(いるんだとはおもいますが・・・・・・」 きょくちょうはそういったが、しかしそれはなにも)

いるんだとはおもいますが……」  局長はそういったが、しかしそれはなにも

(じしんがあっていったことではなかった。 ぼーとはにしへにしへとながれていた。)

自信があっていったことではなかった。  ボートは西へ西へと流れていた。

(どうやらちょうりゅうのうえにのっているらしい。 「おいふるやくん、むでんそうちを)

どうやら潮流のうえにのっているらしい。 「おい古谷君、無電装置を

(もってこなかったかね」 とせんちょうがきいた。)

持ってこなかったかね」  と船長がきいた。

(「はあ、もってきたことにはきたんですけれど、だめなんです。ゆうべ、)

「はあ、持って来たことには来たんですけれど、駄目なんです。ゆうべ、

(ぼーとのなかがみずびたしになって、ぜつえんがすっかりだめになりました。)

ボートの中が水浸しになって、絶縁がすっかり駄目になりました。

(はなはだざんねんです」 「ふうむ、そいつはおしいことをした」)

はなはだ残念です」 「ふうむ、そいつは惜しいことをした」

(せんちょうはめをようじょうにむけた。 そのうちどこからか、きせんがとおりあわすかも)

船長は眼を洋上にむけた。  そのうちどこからか、汽船が通りあわすかも

(しれない。だがそれはうんしだいであって、そんなものをきたいしていては)

しれない。だがそれは運次第であって、そんなものを期待していては

(いけないのであった。かくたるこんごのほうしんをどうするか、それをきめて)

いけないのであった。確たる今後の方針をどうするか、それをきめて

(おかなければならない。 そのころ、のりくみいんたちが、ぼつぼつおきてきた。)

置かなければならない。  そのころ、乗組員たちが、ぼつぼつ起きてきた。

(「ああゆめだったか。おれはまだふうろうとたたかっているきがしていたが・・・・・・」)

「ああ夢だったか。俺はまだ風浪と闘っている気がしていたが……」

(ふうろうはないだ。だがふうろうよりもわるいものが、かれらをまっているのだ。)

風浪は凪いだ。だが風浪よりもわるいものが、彼等を待っているのだ。

(それはうえとかつとであった。いや、うえよりかつのほうがはるかにおそろしい。)

それは飢と渇とであった。いや、飢より渇の方がはるかに恐ろしい。

(くもはだんだんうすくなって、あついひざしがじりじりとぼーとのうえへさしてきた。)

雲はだんだん薄くなって、熱い陽ざしがじりじりとボートのうえへさしてきた。

(このぶんでは、いんりょうすいのたるは、すぐからになるだろう。 「せんちょう、こがなくても)

この分では、飲料水の樽は、すぐからになるだろう。 「船長、漕がなくても

(いいのですか」 「うむ、23にちはこのままひょうりゅうをつづけるかくごでいこう。)

いいのですか」 「うむ、二三日はこのまま漂流をつづける覚悟でいこう。

(そのうちに、なにかいいことがむこうからやってくるだろう」 せんちょうは、)

そのうちに、なにかいいことが向こうからやってくるだろう」  船長は、

(たいへんのんきそうなくちをきいた。だがかれは、ほんとうはひとり、こころのうちでこまかい)

たいへん呑気そうな口をきいた。だが彼は、本当はひとり、心のうちでこまかい

(ところまでかんがえていたのだ。こうなれば、ぶかのたいりょくをむだにつかわないことが)

ところまで考えていたのだ。こうなれば、部下の体力を無駄につかわないことが

(たいせつだった。できるだけながく、ぶかをげんきにたもっておかなければならない。)

大切だった。できるだけ永く、部下を元気に保っておかなければならない。

(「おーい、みずをのませてくれ。のどがやけつきそうだ」 せんいんのひとりが、)

「おーい、水を呑ませてくれ。咽喉が焼けつきそうだ」  船員の一人が、

(くるしそうなこえをあげた。 「せんちょう、みずをのませていいですか」)

くるしそうなこえをあげた。 「船長、水を呑ませていいですか」

(「うん、みずはいちばんたいせつなものだ。とにかくけさは、ちいさいにゅーむのこっぷに)

「うん、水は一番大切なものだ。とにかく今朝は、小さいニュームのコップに

(いっぱいずつのむことにしよう。あとはゆうがたまではいけない」)

一杯ずつ呑むことにしよう。あとは夕方まではいけない」

(「えっ、あとはゆうがたまでいけないのですか」 )

「えっ、あとは夕方までいけないのですか」

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