幽霊船の秘密10 海野十三

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SOS信号受けて貨物船が向かった先には船がなく…

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問題文

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(にがすなゆうれいせん ゆうれいせんにゆきあうのは、これでいくどめであろうか。)

【逃がすな幽霊船】  幽霊船にゆきあうのは、これで幾度目であろうか。

(たしかわじままるがげきちんせられて、いちどうが4そうのぼーとにじょうじてかいじょうへのがれたとき)

たしか和島丸が撃沈せられて、一同が四艘のボートに乗じて海上へのがれたとき

(このゆうれいせんがとおった。それからこれでにどめである。 はじめのときは、)

この幽霊船がとおった。それからこれで二度目である。  はじめのときは、

(ゆうれいせんにいっぱつだんがんをおくってみただけで、そのままなにもしなかった。)

幽霊船に一発弾丸をおくってみただけで、そのままなにもしなかった。

(だが、きょうはゆうれいせんをべつなめでみる! なぜといって、ゆくえふめいになった)

だが、きょうは幽霊船を別な目でみる!  なぜといって、行方不明になった

(まるおむでんぎしのてくびがはっけんされ、そのてのひらのなかに、ただごとではないてがみが)

丸尾無電技士の手首が発見され、その掌の中に、ただごとではない手紙が

(にぎられていたのである。ことに「ゆうれいせんにちかよるな」とあるからには、)

握られていたのである。ことに『幽霊船に近よるな』とあるからには、

(このゆうれいせんはまるおたちもとの2ごうていののりくみいんにたいして、なにかおそろしいきがいを)

この幽霊船は丸尾たち元の二号艇の乗組員に対して、なにかおそろしい危害を

(くわえたものとおもわれる。いったいかれらはどんなおそろしいめにあったのか。)

加えたものと思われる。一体彼等はどんなおそろしい目にあったのか。

(そしてかれらはいったいどこへいってしまったのか。ーーいや、いってしまったなど)

そして彼等は一体どこへいってしまったのか。――いや、いってしまったなど

(というよりも、かれらはひとりのこらずころされてしまったのだとかくほうがただしいかも)

というよりも、彼等は一人のこらず殺されてしまったのだと書く方が正しいかも

(しれないのだ。いまらいうのなかにとつぜんあらわれたゆうれいせん! 「うぬ、ゆうれいせんめ、)

しれないのだ。いま雷雨のなかに突然現われた幽霊船! 「うぬ、幽霊船め、

(こんどはただじゃとおさないぞ。そうだ、そうだ。のりくみいんのてきだ。かたきうちを)

こんどは只じゃ通さないぞ。そうだ、そうだ。乗組員の敵だ。仇うちを

(しなくちゃ、はらのむしがおさまらないや」 にそうのぼーとからは、のりくみいんたちが)

しなくちゃ、腹の虫がおさまらないや」  二艘のボートからは、乗組員たちが

(いくどうおんに、いましもそばにきたゆうれいせんにたいしていかりのこえをなげかけた。)

異口同音に、いましも傍にきた幽霊船に対して怒りの声をなげかけた。

(ぼんをくつがえすようならいうも、やまのようなはろうも、それからゆうれいせんのおそろしさも)

盆をくつがえすような雷雨も、山のような波浪も、それから幽霊船の恐ろしさも

(かれらはすっかりわすれていた。それほどかれらにとって、ゆうれいせんはにくい)

彼等はすっかり忘れていた。それほど彼等にとって、幽霊船は憎い

(そんざいだったのである。 「せんちょう、わたしをあのゆうれいせんへやってください。わたしはなかまが)

存在だったのである。 「船長、私をあの幽霊船へやってください。私は仲間が

(どうしてころされたかをよくしらべてくるつもりです。きっとひみつは、あのふねのなかに)

どうして殺されたかをよく調べてくるつもりです。きっと秘密は、あの船の中に

(あるのです」 「わしもやってくだせえよ。せんちょうさん。まるおはいいせいねんで、)

あるのです」 「わしもやってくだせえよ。船長さん。丸尾はいい青年で、

など

(わしにしんせつにしてくれた。ここでわしはまるおのためにかたきをうたなくちゃ、)

わしに親切にしてくれた。ここでわしは丸尾のために仇をうたなくちゃ、

(いきながらえているのがつらい」 あっちからもこっちからもせんちょうのところへ)

生きながらえているのがつらい」  あっちからもこっちからも船長のところへ

(ゆうれいせんたんけんをしがんするものがたくさんでてきて、さえきせんちょうもどうしてよいやら)

幽霊船探険を志願するものがたくさん出てきて、佐伯船長もどうしてよいやら

(すくなからずこまった。かれらは、ゆうれいせんのでてくるまえには、うえとかわきとで、)

すくなからず困った。彼等は、幽霊船の出てくる前には、飢えと渇きとで、

(びょうにんのようにへたばっていたのに、いまはせんしのようにげんきにふるいたっている)

病人のようにへたばっていたのに、いまは戦士のように元気にふるい立っている

(だいらいうもはろうも、かならずちかよるなというちゅういがきのあったおそろしいゆうれいせんも、)

大雷雨も波浪も、必ず近よるなという注意書のあったおそろしい幽霊船も、

(かれらにはたいしておそろしいものではなくなったらしい。さえきせんちょうは、このようすを)

彼等には大しておそろしいものではなくなったらしい。佐伯船長は、この様子を

(みていたが、このときおおきくうなずき、 「よし、みんなのいうことは、)

見ていたが、このとき大きく肯き、 「よし、みんなのいうことは、

(よくわかった。では、あのゆうれいせんへたんけんたいをやることにする」)

よくわかった。では、あの幽霊船へ探険隊をやることにする」

(にそうのぼーとのなかからは、どっとよろこびのこえがあがった。 「いまからめいれいを)

二艘のボートの中からは、どっと悦びの声があがった。 「いまから命令を

(だす。ふるやきょくちょうをたいちょうとし、2ごうていのぜんいんはたんけんたいとして、ただちにしゅっぱつ!)

出す。古谷局長を隊長とし、二号艇の全員は探険隊として、直ちに出発!

(1ごうていは、よびたいとしてしばらくかいじょうからゆうれいせんのようすをみていることにする」)

一号艇は、予備隊としてしばらく海上から幽霊船の様子を見ていることにする」

(それをきいて、よろこぶものと、ふまんのしたうちをするもの。 「これ、さわいでいる)

それをきいて、悦ぶ者と、不満の舌うちをする者。 「これ、さわいでいる

(ばあいではない。ぐずぐずしているうちにゆうれいせんがとおくへいってしまうぞ。)

場合ではない。ぐずぐずしているうちに幽霊船が遠くへいってしまうぞ。

(おい、2ごうてい、すぐしゅっぱつだ!」)

おい、二号艇、すぐ出発だ!」

(けっしのたんけんたい 「おい、なんでもいいからごしんようになるきぎれでも)

【決死の探険隊】 「おい、なんでもいいから護身用になる木片(きぎれ)でも

(ないふでもよういしろ。かいたにはじゅうをたいせつにしろ。じゅうは1ちょうしかないんだからな」)

ナイフでも用意しろ。貝谷は銃を大切にしろ。銃は一挺しかないんだからな」

(ふるやむでんきょくちょうは、たんけんたいちょうをめいぜられて、たいへんなはりきりかただ。)

古谷無電局長は、探険隊長を命ぜられて、たいへんなはりきり方だ。

(かれはかわいがっていたまるおぎしのためにも、すすんでこのたんけんたいに)

彼は可愛がっていた丸尾技士のためにも、すすんでこの探険隊に

(くわわりたいところだったのだ。 「さあ、よういはできたね。ではたんけんたいしゅっぱつ!)

加わりたいところだったのだ。 「さあ、用意はできたね。では探険隊出発!

(こげ!おいち、にい、おいち、にい」 ふるやきょくちょうのしきのもとに、)

漕げ! お一チ、二イ、お一チ、二イ」  古谷局長の指揮のもとに、

(ぼーとはおおあめのなかをやのようになみがしらをつらぬいてすすむ。そのときゆうれいせんはと)

ボートは大雨の中を矢のように波頭をつらぬいてすすむ。そのとき幽霊船はと

(みれば、あらしのなかにまるでふりとめられたようにじっとうごかない。きょぞうがぎょうずい)

見れば、嵐の中にまるで降りとめられたようにじっとうごかない。巨象が行水

(しているようでもある。せんたいからは、れいのあおじろいりんこうがちらちらと)

しているようでもある。船体からは、例の青白い燐光がちらちらと

(もえている。さすがにものすさまじいこうけいで、かいをにぎるわがゆうしたちのうでも、)

燃えている。さすがにものすさまじい光景で、櫂をにぎるわが勇士たちの腕も、

(ちょっとにぶったようにみえたが、それもむりのないことであった。)

ちょっとにぶったように見えたが、それも無理のないことであった。

(「おい、しっかりこげ!いのちのおしいやつは、いまのうちにてをあげろ。)

「おい、しっかり漕げ! 生命の惜しい奴は、今のうちに手をあげろ。

(すぐ1ごうていへもどしてやる」 もちろんだれもてをあげるものはいない。)

すぐ一号艇へ戻してやる」  もちろん誰も手をあげる者はいない。

(えいやえいやと、またかけごえがいさましくなった。 「そこだ。しっかりこげ。)

えいやえいやと、また懸け声がいさましくなった。 「そこだ。しっかり漕げ。

(かいたに、じゅうをかまえていろ。ーーそこでこのぼーとをゆうれいせんのせんびにぶらさがって)

貝谷、銃を構えていろ。――そこでこのボートを幽霊船の船尾にぶらさがって

(いるなわばしごのしたへつける。おれがのぼったらおまえたちもあとからついてのぼれ」)

いる縄梯子の下へつける。おれがのぼったらお前たちもあとからついてのぼれ」

(やがてぼーとはぐんぐんとゆうれいせんのしたにちかづいていった。みあげるような)

やがてボートはぐんぐんと幽霊船の下に近づいていった。見上げるような

(きょせんだ。すっかりさびがでているうえに、なみにたたかれてか、せんめいさえはっきり)

巨船だ。すっかり錆が出ているうえに、浪に叩かれてか、船名さえはっきり

(よめない。しかしとにかくがいこくせんであることはたしかである。)

読めない。しかしとにかく外国船であることはたしかである。

(なにしろしゅううはまだおさまらず、はろうがたかいので、ぼーとは)

なにしろ驟雨(しゅうう)はまだおさまらず、波浪が高いので、ボートは

(いくたびかゆうれいせんにちかづきながら、いくたびとなくはなれた。 「えい!」)

いくたびか幽霊船に近づきながら、いくたびとなく離れた。 「えい!」

(いくどめであったかしらぬが、とうとうふるやきょくちょうは、みをおどらせて)

いくど目であったかしらぬが、とうとう古谷局長は、身をおどらせて

(ふねとふねとのあいだをとんだ。つなばしごはおおきくゆれているが、きょくちょうのからだは)

船と船との間を飛んだ。綱梯子は大きく揺れているが、局長の身体は

(そのうえにのっている。 「おい、はやくこぎよせろ。きょくちょうをみごろしにしちゃ、)

そのうえに乗っている。 「おい、はやく漕ぎよせろ。局長を見殺しにしちゃ、

(おれたちのかおにかかわる」 「ほら、いまだ。とびうつれ」)

おれたちの顔にかかわる」 「ほら、いまだ。とびうつれ」

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