幽霊船の秘密14 海野十三
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | kkk | 6593 | S+ | 6.9 | 95.0% | 527.8 | 3671 | 191 | 59 | 2024/10/10 |
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問題文
(「でてこなければ、うつぞ。ーーもうあきらめて、こうさんしろ!」 きょくちょうは、)
「出てこなければ、撃つぞ。――もうあきらめて、降参しろ!」 局長は、
(もういちど、どなった。しかし、なかからは、だれもでてくるものがなかった。)
もう一度、どなった。しかし、中からは、だれもでてくるものがなかった。
(「おかしいじゃないか、かいたに」と、きょくちょうは、かいたにをかえりみていった。)
「おかしいじゃないか、貝谷」と、局長は、貝谷をかえりみていった。
(「そうですなあ」 と、かいたにはしあんをしていたが、)
「そうですなあ」 と、貝谷は思案をしていたが、
(「じゃあ、わたしがどなってみましょう」 そういってかいたには、だいおんじょうをあげ、)
「じゃあ、私がどなってみましょう」 そういって貝谷は、大音声をあげ、
(「こら、いのちがおしければ、でてこいというんだ。でてこなければ、)
「こら、いのちが惜しければ、出てこいというんだ。出てこなければ、
(てっぽうをぶっぱなすぞ!」 「おいおいかいたに。にほんごが、がいこくじんにわかるものか」)
鉄砲をぶっぱなすぞ!」 「おいおい貝谷。日本語が、外国人にわかるものか」
(「いや、わたしはおおきなこえをだすときには、にほんごでなくちゃあ、だめなんです」)
「いや、私は大きな声を出すときには、日本語でなくちゃあ、だめなんです」
(そういっているとき、くらがりのむこうから、わーっと、とびだして)
そういっているとき、暗がりの向うから、わーッと、とびだして
(きたものがあった。 「ほら、でてきやがった!」)
きたものがあった。 「ほら、出てきやがった!」
(ときょくちょういかのたいいんは、じゅうをかまえた。あやしいやつなら、ただいっぱつのもとに)
と局長以下の隊員は、銃をかまえた。怪しい奴なら、ただ一発のもとに
(うちとめるつもりだ。 「おおふるやきょくちょう!」くらがりからとびだしてきたあいては、)
撃ちとめるつもりだ。 「おお古谷局長!」暗がりからとびだしてきた相手は、
(いがいにも、にほんごでさけんだ。 「だ、だれだっ」)
意外にも、日本語で叫んだ。 「だ、だれだッ」
(「まるおです!」 「えっ、まるお?」)
「丸尾です!」 「えっ、丸尾?」
(ぼろぼろのずぼんをはいてあらわれたにんげん。それはやつれはてはいるが、)
ぼろぼろのズボンをはいて現れた人間。それはやつれ果てはいるが、
(まるおぎしだった。 「おお、まるおだ。まるおのゆうれいだ。おまえは、)
丸尾技士だった。 「おお、丸尾だ。丸尾の幽霊だ。お前は、
(うかばれないとみえるな」 と、かいたにはさけんだ。)
浮かばれないと見えるな」 と、貝谷は叫んだ。
(「ゆうれい?ばかをいうな。おれは、ちゃんといきているぞ。いきているまるおだ」)
「幽霊? ばかをいうな。おれは、ちゃんと生きているぞ。生きている丸尾だ」
(「ははあ、ゆうれいではなかったかな、なるほど」 かいたには、まるおのからだを、)
「ははあ、幽霊ではなかったかな、なるほど」 貝谷は、丸尾の身体を、
(きみわるげにさわってみて、かんしんしたりよろこんだり 「まるお、よくいきていた)
気味わるげにさわってみて、感心したりよろこんだり 「丸尾、よく生きていた
(わしは、ひょうりゅうしているとむじんのぼーとのなかでおまえのかたてをひろったんだ。)
わしは、漂流していると無人のボートの中でお前の片手を拾ったんだ。
(そのては、おまえのかいたてがみをにぎっていた。だから、おまえは、てっきり)
その手は、お前の書いた手紙を握っていた。だから、お前は、てっきり
(しんでしまったものとおもって、あきらめていた。ほんとうに、よくいきていたね。)
死んでしまったものと思って、あきらめていた。本当に、よく生きていたね。
(いったい、これはどうしたのか」 「いや、これには、たいへんなはなしがあるのです。)
一体、これはどうしたのか」 「いや、これには、たいへんな話があるのです。
(しかし、もうじゅうは、どうしました。らいおんだのひょうだのが、このふねには、)
しかし、猛獣は、どうしました。ライオンだの豹だのが、この船には、
(たくさんいるのです」 「それはもうみな、やっつけてしまった」)
たくさんいるのです」 「それはもう皆、やっつけてしまった」
(「えっ、やっつけてしまった。ほんとうですか。じゃあんしんしていいですね。)
「えっ、やっつけてしまった。本当ですか。じゃ安心していいですね。
(ああ、よかった」 とまるおはむねをとんとんとたたいた。)
ああ、よかった」 と丸尾は胸をとんとんと叩いた。
(「もうじゅうがりは、もうすんだから、しんぱいなしだ。それよりも、おまえのほうの)
「猛獣狩は、もうすんだから、心配なしだ。それよりも、お前の方の
(はなしというのは・・・・・・」 「ああ、そのことです。わじままるのどうりょうが、3めい)
話というのは……」 「ああ、そのことです。和島丸の同僚が、三名
(いるのです。それから、このきせんぼるくごうのいきのこりせんいんが78めいいますが、)
いるのです。それから、この汽船ボルク号の生き残り船員が七八名いますが、
(こいつらは、かなりじゅうたいです」 「ほう、ぼるくごう。このきせんは、)
こいつらは、かなり重態です」 「ほう、ボルク号。この汽船は、
(ぼるくごうというのか。どこのふねか」 「のーるうぇいせんです」)
ボルク号というのか。どこの船か」 「ノールウェイ船です」
(「うん、はなしをききたいけれど、それよりまえに、わじままるのなかまをよんできてやれ。)
「うん、話をききたいけれど、それより前に、和島丸の仲間をよんできてやれ。
(しんぱいしているだろう。わたしもよくかおをみたい。いったいだれがいきのこっているのか」)
心配しているだろう。私もよく顔をみたい。一体だれが生きのこっているのか」
(「はい、やじまに、かわさきに、そしてふじわらです」 「ほうそうか。よくいってやれ。)
「はい、矢島に、川崎に、そして藤原です」 「ほうそうか。よくいってやれ。
(そして、あとでゆっくり、はなしをきこう」 と、ふるやきょくちょうがいえば、まるおは、)
そして、あとでゆっくり、話をきこう」 と、古谷局長がいえば、丸尾は、
(おおごえをあげながら、もとのくらがりへ、とびこんでいった。 かたくとざされた)
大ごえをあげながら、元の暗がりへ、とびこんでいった。 かたく閉された
(せんないからは、ゆうれいがでてくるかそれとももうじゅうがとびだしてくるかとおもわれたのに)
船内からは、幽霊が出てくるかそれとも猛獣がとびだしてくるかと思われたのに
(そのよそうをうらぎって、おもいがけなくも、まるおたちせいぞんしゃをはっけんして、)
その予想をうらぎって、思いがけなくも、丸尾たち生存者を発見して、
(ふるやきょくちょういかは、たいへんなよろこびかただった。 さっそく、かいたにを)
古谷局長以下は、たいへんなよろこびかただった。 早速、貝谷を
(じょうかんぱんへやって、かいじょうにかんしをつづけているさえきせんちょうにしらせることにした。)
上甲板へやって、海上に監視をつづけている佐伯船長にしらせることにした。
(かいたには、じゅうをひっかついで、じょうかんぱんへ、かけのぼった。 「おい、おーい」)
貝谷は、銃をひっかついで、上甲板へ、かけのぼった。 「おい、おーい」
(かいたには、ぼーとをよんだ。 「おーい、どうした?」)
貝谷は、ボートをよんだ。 「おーい、どうした?」
(ぼーとからは、まっていましたとばかり、ただちにこたえがあった。)
ボートからは、待っていましたとばかり、直ちに応えがあった。
(「すばらしいはっけんだ。わじままるのせんいんが、このぼるくごうのなかにいた。)
「すばらしい発見だ。和島丸の船員が、このボルク号の中にいた。
(ひとくいじゅうは、もうぜんぶやっつけた!」 と、かいたには、はたのないてばたしんごうで、)
人喰い獣は、もう全部やっつけた!」 と、貝谷は、旗のない手旗信号で、
(おどろくべきにゅーすをしらせた。 ぼーとのなかでも、よほどおどろいた)
おどろくべきニュースを知らせた。 ボートの中でも、よほどおどろいた
(ものとみえ、りょうてをあげてよろこびのばんざいであった。これから、しばらくは、)
ものと見え、両手をあげてよろこびの万歳であった。これから、しばらくは、
(かいたにとぼーととのあいだに、しきりにしんごうがこうかんされた。そしてさえきせんちょうののった)
貝谷とボートとの間に、しきりに信号が交換された。そして佐伯船長の乗った
(ぼーとはぼるくごうのほうにこぎよせてきた。 「きせきだ。しんずべからざるきせきだ」)
ボートはボルク号の方に漕ぎよせてきた。 「奇蹟だ。信ずべからざる奇蹟だ」
(さえきせんちょうは、つぶやきながら、たらっぷをのぼってきた。 「おお、まるおか。)
佐伯船長は、つぶやきながら、タラップをのぼって来た。 「おお、丸尾か。
(よくいきていたのう。おう、やじまもかわさきもふじわらも、よくまあぶじでいたなあ」)
よく生きていたのう。おう、矢島も川崎も藤原も、よくまあ無事でいたなあ」
(そこで、せんちょうといきのこりのせんいんとは、ひしとだきあって、よろこびのなみだを)
そこで、船長と生残りの船員とは、ひしと抱きあって、よろこびの涙を
(ながしたのであった 「せんちょうまるおのはなしによってなにもかもすっかりわかりましたぜ」)
流したのであった 「船長丸尾の話によってなにもかもすっかり分りましたぜ」
(「なにもかもというと、このゆうれいせんのことかね」 「ふねのことはもちろん、)
「なにもかもというと、この幽霊船のことかね」 「船のことはもちろん、
(れいのあやしいsosのむでんしんごうのことまで、だいたいわかりました」 「ほほう、)
例の怪しいSOSの無電信号のことまで、大体分りました」 「ほほう、
(あのことまで、わかったか」 「まるお、せんちょうに、いまのはなしをもういちどほうこくしなさい」)
あのことまで、分ったか」 「丸尾、船長に、今の話をもう一度報告しなさい」
(「はい」 と、まるおはせんちょうのまえに、しせいをただして、かたりはじめたのであった。)
「はい」 と、丸尾は船長の前に、姿勢を正して、語りはじめたのであった。