怪人二十面相2 江戸川乱歩

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プレイ回数4106難易度(5.0) 2995打 長文
少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(てつのわな あざぶのとあるやしきまちに、100めーとるしほうもあるようなだいていたくが)

【鉄のわな】  麻布のとある屋敷町に、百メートル四方もあるような大邸宅が

(あります。 4めーとるぐらいもありそうな、たかいたかいこんくりーとべいが、)

あります。  四メートルぐらいもありそうな、高い高いコンクリート塀が、

(ずーっと、めもはるかにつづいています。いかめしいてつのとびらのもんをはいると、)

ズーッと、目も遥かに続いています。厳めしい鉄の扉の門を入ると、

(おおきなそてつがどっかりとうわっていて、そのしげったはのむこうにりっぱなげんかんが)

大きなソテツがドッカリと植わっていて、その茂った葉の向こうに立派な玄関が

(みえています。 いくまともしれぬひろいにほんだてと、きいろいけしょうれんがを)

見えています。  いく間とも知れぬ広い日本建てと、黄色い化粧煉瓦を

(はりつめたにかいだてのおおきなようかんとがかぎのてにならんでいて、そのうらには、)

貼り詰めた二階建ての大きな洋館とが鉤の手に並んでいて、その裏には、

(こうえんのように、ひろくてうつくしいおにわがあるのです。 これはじつぎょうかいのおおだてもの、)

公園のように、広くて美しいお庭があるのです。  これは実業界の大立者、

(はしばそうたろうしのていたくです。 はしばけには、いま、ひじょうなよろこびと、ひじょうなきょうふとが)

羽柴壮太郎氏の邸宅です。  羽柴家には、今、非常な喜びと、非常な恐怖とが

(おりまざるようにして、おそいかかっていました。 よろこびというのは、いまから)

織り交ざるようにして、襲いかかっていました。  喜びというのは、今から

(10ねんいぜんにいえでをしたちょうなんのそういちくんが、なんようぼるねおとうから、おとうさんに)

十年以前に家出をした長男の壮一君が、南洋ボルネオ島から、お父さんに

(おわびをするためににほんへかえってくることでした。 そういちくんはせいらいのぼうけんじで)

お詫びをする為に日本へ帰って来る事でした。  壮一君は生来の冒険児で

(ちゅうがっこうをそつぎょうすると、がくゆうとふたりでなんようのしんてんちにとこうし、なにかそうかいな)

中学校を卒業すると、学友と二人で南洋の新天地に渡航し、何か壮快な

(じぎょうをおこしたいとねがったのですが、ちちのそうたろうしはがんとしてそれを)

事業を興したいと願ったのですが、父の壮太郎氏は頑としてそれを

(ゆるさなかったので、とうとうむだんでいえをとびだしちいさなはんせんにびんじょうして、)

許さなかったので、とうとう無断で家を飛び出し小さな帆船に便乗して、

(なんようにわたったのでした。それから10ねんかん、そういちくんからはまったくなんのたよりもなく)

南洋に渡ったのでした。それから十年間、壮一君からは全く何の便りもなく

(ゆくえさえわからなかったのですが、つい3かげつほどまえ、とつぜんぼるねおとうの)

行方さえ分からなかったのですが、つい三ヵ月程前、突然ボルネオ島の

(さんだかんからてがみをよこして、やっといちにんまえのおとこになったから、)

サンダカンから手紙を寄越して、やっと一人前の男になったから、

(おとうさまにおわびにかえりたいといってきたのです。そういちくんはげんざいでは)

お父様にお詫びに帰りたいと言って来たのです。壮一君は現在では

(さんだかんふきんにおおきなごむしょくりんをいとなんでいて、てがみにはそのごむばやしのしゃしんと、)

サンダカン付近に大きなゴム植林を営んでいて、手紙にはそのゴム林の写真と、

(そういちくんのさいきんのしゃしんとがどうふうしてありました。もう30さいです。)

壮一君の最近の写真とが同封してありました。もう三十歳です。

など

(はなしたにきどったひげをはやして、りっぱなおとなになっていました。おとうさまも)

鼻下に気取った髭を生やして、立派な大人になっていました。お父様も

(おかあさまもいもうとのさなえさんも、まだしょうがくせいのおとうとのそうじくんもおおよろこびでした。)

お母様も妹の早苗さんも、まだ小学生の弟の壮二君も大喜びでした。

(しものせきでふねをおりてひこうきでかえってくるというので、そのひがまちどおしくて)

下関で船を降りて飛行機で帰って来るというので、その日が待ち遠しくて

(しかたがありません。 さて、いっぽうはしばけをおそったひじょうなきょうふといいますのは)

仕方がありません。  さて、一方羽柴家を襲った非常な恐怖といいますのは

(ほかならぬ「にじゅうめんそう」のおそろしいよこくじょうです。よこくじょうのぶんめんは、)

他ならぬ「二十面相」の恐ろしい予告状です。予告状の文面は、

(「よがいかなるじんぶつであるかは、きかもしんぶんしじょうにてごしょうちであろう。)

「余が如何なる人物であるかは、貴下も新聞紙上にてご承知であろう。

(きかは、かつてろまのふおうけのほうかんをかざりしだいだいやもんど6こを、)

貴下は、かつてロマノフ王家の宝冠を飾りし大ダイヤモンド六個を、

(きかのかほうとして、ちんぞうせられるとかくぶんする。 よはこのたび、みぎ6この)

貴家の家宝として、珍蔵せられると確聞する。  余はこのたび、右六個の

(だいやもんどを、きかよりむしょうにてゆずりうけるけっしんをした。きんじつちゅうに)

ダイヤモンドを、貴下より無償にて譲り受ける決心をした。近日中に

(ちょうだいにさんじょうするつもりである。 せいかくなにちじはおってごつうちする。)

頂戴に参上するつもりである。  正確な日時は追ってご通知する。

(ずいぶんごようじんなさるがよかろう」 というので、おわりに「にじゅうめんそう」と)

随分ご用心なさるがよかろう」 というので、終わりに「二十面相」と

(しょめいしてありました。 そのだいやもんどというのは、ろしあのていせいぼつらくののち)

署名してありました。  そのダイヤモンドというのは、ロシアの帝政没落の後

(あるはっけいろしあじんがきゅうろまのふけのほうかんをてにいれて、かざりのほうせきだけを)

ある白系ロシア人が旧ロマノフ家の宝冠を手に入れて、飾りの宝石だけを

(とりはずし、それをちゅうごくしょうにんにうりわたしたのがまわりまわって、にほんのはしばしに)

取り外し、それを中国商人に売り渡したのが回り回って、日本の羽柴氏に

(かいとられたもので、あたいにして200まんえんというきちょうなたからものでした。)

買い取られた物で、価にして二百万円という貴重な宝物でした。

(その6このほうせきは、げんにそうたろうしのしょさいのきんこのなかにおさまっているのですが、)

その六個の宝石は、現に壮太郎氏の書斎の金庫の中に収まっているのですが、

(かいとうはそのありかまで、ちゃんとしりぬいているようなぶんめんです。)

怪盗はその在処まで、ちゃんと知り抜いているような文面です。

(そのよこくじょうをうけとると、しゅじんのそうたろうしはさすがにかおいろもかえませんでしたが)

その予告状を受け取ると、主人の壮太郎氏はさすがに顔色も変えませんでしたが

(ふじんをはじめ、おじょうさんも、めしつかいなどまでが、ふるえあがってしまいました。)

夫人をはじめ、お嬢さんも、召使いなどまでが、震え上がってしまいました。

(ことにはしばけのしはいにんこんどうろうじんは、しゅかのいちだいじとばかりにさわぎたてて、)

殊に羽柴家の支配人近藤老人は、主家の一大事とばかりに騒ぎ立てて、

(けいさつへしゅっとうしてほごをねがうやら、あたらしくもうけんをかいいれるやら、)

警察へ出頭して保護を願うやら、新しく猛犬を買い入れるやら、

(あらゆるしゅだんをめぐらして、ぞくのしゅうらいにそなえました。)

あらゆる手段を巡らして、賊の襲来に備えました。

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