怪人二十面相9 江戸川乱歩
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問題文
(「ははは・・・・・・、やっとおわかりになったようですね。ごあんしんなさい。)
「ハハハ……、やっとお分かりになったようですね。ご安心なさい。
(ぼくは、あなたのむすこのそういちくんじゃありません。おさっしのとおり、あなたがたが)
僕は、あなたの息子の壮一君じゃありません。お察しの通り、あなた方が
(にじゅうめんそうとよんでいるとうぞくです」 そうたろうしはおばけでもみるように、)
二十面相と呼んでいる盗賊です」 壮太郎氏はお化けでも見るように、
(あいてのかおをみつめました。どうしても、とけないなぞがあったからです。)
相手の顔を見詰めました。どうしても、解けない謎があったからです。
(では、あのぼるねおとうからのてがみはだれがかいたのだ。あのしゃしんはだれのしゃしんなのだ)
では、あのボルネオ島からの手紙は誰が書いたのだ。あの写真は誰の写真なのだ
(「ははは・・・・・・、にじゅうめんそうはどうわのなかのまほうつかいです。だれにでもできないことを)
「ハハハ……、二十面相は童話の中の魔法使いです。誰にでも出来ない事を
(じっこうしてみせるのです。はしばさん、だいやもんどをちょうだいしたおれいに、)
実行してみせるのです。羽柴さん、ダイヤモンドを頂戴したお礼に、
(たねあかしをしましょうか」 かいせいねんはみのきけんをしらぬように、)
種明しをしましょうか」 怪青年は身の危険を知らぬように、
(おちつきはらってせつめいしました 「ぼくは、そういちくんのゆくえふめいになっていることを)
落ちつきはらって説明しました 「僕は、壮一君の行方不明になっている事を
(さぐりだしました。どうくんのいえでいぜんのしゃしんもてにいれました。そして10ねんのあいだに)
探り出しました。同君の家出以前の写真も手に入れました。そして十年の間に
(そういちくんがどんなかおにかわるかということをそうぞうして、まあ、こんなかおを)
壮一君がどんな顔に変わるかということを想像して、まあ、こんな顔を
(つくりあげたのです」 かれはそういって、じぶんのほおをぴたぴたとたたいて)
作りあげたのです」 彼はそう言って、自分の頬をピタピタと叩いて
(みせました。 「ですからあのしゃしんはほかでもない、このぼくのしゃしんなのです。)
見せました。 「ですからあの写真は他でもない、この僕の写真なのです。
(てがみもぼくがかきました。そしてぼるねおとうにいるぼくのともだちに、あのてがみと)
手紙も僕が書きました。そしてボルネオ島にいる僕の友達に、あの手紙と
(しゃしんをおくって、そこからあなたあてにゆうそうさせたわけですよ。おきのどくですが、)
写真を送って、そこからあなた宛てに郵送させた訳ですよ。お気の毒ですが、
(そういちくんはいまだにゆくえふめいなのです。ぼるねおとうなんかにいやしないのです。)
壮一君は未だに行方不明なのです。ボルネオ島なんかにいやしないのです。
(あれはすっかり、はじめからおしまいまで、このにじゅうめんそうのしくんだおしばいですよ」)
あれはすっかり、始めからお終いまで、この二十面相の仕組んだお芝居ですよ」
(はしばいっかのひとびとは、おとうさまもおかあさまもなつかしいちょうなんがかえったというよろこびに、)
羽柴一家の人々は、お父様もお母様も懐かしい長男が帰ったという喜びに、
(とりのぼせて、そこにこんなおそろしいからくりがあろうとは、まったくおもいも)
とりのぼせて、そこにこんな恐ろしいカラクリがあろうとは、全く思いも
(およばなかったのでした。 「ぼくはにんじゅつつかいです」)
及ばなかったのでした。 「僕は忍術使いです」
(にじゅうめんそうは、さも、とくいらしくつづけました。 「わかりますか。ほら、)
二十面相は、さも、得意らしく続けました。 「分かりますか。ホラ、
(さっきのぴんぽんのたまです。あれがにんじゅつのたねなんです。あれはぼくがぽけっとから)
先刻のピンポンの玉です。あれが忍術の種なんです。あれは僕がポケットから
(じゅうたんのうえにほうりだしたのですよ。あなたは、すこしのあいだたまにきをとられていました)
絨毯の上に放り出したのですよ。あなたは、少しの間玉に気を取られていました
(つくえのしたをのぞきこんだりしました。そのすきにほうせきばこのなかから、だいやもんどを)
机の下を覗き込んだりしました。その隙に宝石箱の中から、ダイヤモンドを
(とりだすのは、なんのぞうさもないことでした。ははは・・・・・・、では、さようなら」)
取り出すのは、何の造作もないことでした。ハハハ……、では、さようなら」
(ぞくはぴすとるをかまえながらあとずさりをしていって、ひだりてでかぎあなにはめたままに)
賊はピストルを構えながら後退りをしていって、左手で鍵穴に嵌めたままに
(なっていたかぎをまわし、さっとどあをひらくと、ろうかへとびだしました。)
なっていた鍵を回し、サッとドアを開くと、廊下へ飛び出しました。
(ろうかには、にわにめんしてまどがあります。ぞくはそのかけがねをはずして、)
廊下には、庭に面して窓があります。賊はその掛け金を外して、
(がらすどをひらき、ひらりとまどわくにまたがったかとおもうと、 「これ、そうじくんの)
ガラス戸を開き、ヒラリと窓枠に跨ったかと思うと、 「これ、壮二君の
(おもちゃにあげてください。ぼくはひとごろしなんてしませんよ」)
玩具にあげてください。僕は人殺しなんてしませんよ」
(といいながら、ぴすとるをへやのなかへなげこんで、そのまますがたを)
と言いながら、ピストルを部屋の中へ投げこんで、そのまま姿を
(けしてしまいました。2かいからにわへととびおりたのです。 そうたろうしは、)
消してしまいました。二階から庭へと飛び降りたのです。 壮太郎氏は、
(またしてもだしぬかれました。 ぴすとるはおもちゃだったのです。)
またしても出し抜かれました。 ピストルは玩具だったのです。
(さいぜんから、おもちゃのぴすとるにおびえて、ひとをよぶこともできなかったのです。)
最前から、玩具のピストルに怯えて、人を呼ぶ事も出来なかったのです。
(しかし、どくしゃしょくんはごきおくでしょう。ぞくのとびおりたまどというのは、)
しかし、読者諸君はご記憶でしょう。賊の飛び降りた窓というのは、
(しょうねんそうじくんがゆめにみたあのまどです。そのしたには、そうじくんがしかけておいた)
少年壮二君が夢に見たあの窓です。その下には、壮二君が仕掛けておいた
(てつのわなが、のこぎりのようなくちをあいてえものをまちかまえているはずです。)
鉄の罠が、鋸のような口を開いて獲物を待ち構えている筈です。
(ゆめはまさゆめでした。すると、もしかしたら、あのわなもなにかのやくにたつのでは)
夢は正夢でした。すると、もしかしたら、あの罠も何かの役に立つのでは
(ありますまいか。 ああ、もしかしたら!)
ありますまいか。 ああ、もしかしたら!