怪人二十面相14 江戸川乱歩

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プレイ回数3075難易度(5.0) 3220打 長文
少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(そうわかってみますと、そうじくんたちをがっこうへおくっていったうんてんしゅは、いよいよ)

そう分かってみますと、壮二君達を学校へ送って行った運転手は、いよいよ

(にせものときまりました。たいせつなおじょうさんぼっちゃんが、ひともあろうに、)

偽者と決まりました。大切なお嬢さん坊ちゃんが、人もあろうに、

(にじゅうめんそうじしんのうんてんするじどうしゃで、どこかへいってしまったのです。)

二十面相自身の運転する自動車で、何処かへ行ってしまったのです。

(ひとびとのおどろき、おとうさまおかあさまのごしんぱいは、くどくどせつめいするまでもありません。)

人々の驚き、お父様お母様のご心配は、くどくど説明するまでもありません。

(まずさなえさんのいくさき、かどわきちゅうがっこうへでんわがかけられました。するといがいにも、)

まず早苗さんの行く先、門脇中学校へ電話が掛けられました。すると意外にも、

(さなえさんはぶじにがっこうへついていることがわかりました。では、ぞくはべつにゆうかいする)

早苗さんは無事に学校へ着いている事が分かりました。では、賊は別に誘拐する

(つもりではなかったのだなとだいあんしんをして、つぎにはそうじくんのがっこうへでんわをして)

つもりではなかったのだなと大安心をして、次には壮二君の学校へ電話をして

(たずねますと、もうじゅぎょうがはじまっているのにそうじくんのすがたはみえないというへんじです)

尋ねますと、もう授業が始まっているのに壮二君の姿は見えないという返事です

(それをきくと、おとうさまおかあさまのかおいろがかわってしまいました。 ぞくはわなを)

それを聞くと、お父様お母様の顔色が変わってしまいました。  賊は罠を

(しかけたのがそうじくんであることをしったのかもしれません。そして、あしにうけた)

仕掛けたのが壮二君である事を知ったのかもしれません。そして、足に受けた

(きずのふくしゅうをするために、そうじくんだけをゆうかいしたのかもしれません。)

傷の復讐をする為に、壮二君だけを誘拐したのかもしれません。

(さあ、おおさわぎになりました。なかむらそうさかかりちょうは、ただちにこのことをけいしちょうにほうこくし、)

さあ、大騒ぎになりました。中村捜査係長は、直ちにこの事を警視庁に報告し、

(とうきょうぜんとにひじょうせんをはって、はしばけのじどうしゃをさがしだすてはいをとりました。)

東京全都に非常線を張って、羽柴家の自動車を捜し出す手配を取りました。

(さいわいじどうしゃのかたやばんごうはわかっているのですから、てがかりはじゅうぶんあるわけです。)

幸い自動車の型や番号は分かっているのですから、手掛かりは十分ある訳です。

(そうたろうしはほとんど30ふんごとにがっこうとけいしちょうとへでんわをかけて、そのごのようすを)

壮太郎氏は殆ど三十分毎に学校と警視庁とへ電話を掛けて、その後の様子を

(たずねさせていましたが、1じかん、2じかん、3じかん、ときはようしゃなくたっていくのに)

尋ねさせていましたが、一時間、二時間、三時間、時は容赦なく経っていくのに

(そうじくんのしょうそくは、いつまでもわかりませんでした。 ところが、そのひの)

壮二君の消息は、いつまでも分かりませんでした。  ところが、その日の

(おひるすぎになって、ひとりのうすよごれたせびろにとりうちぼうのせいねんが、はしばけのげんかんに)

お昼過ぎになって、一人の薄汚れた背広に鳥打ち帽の青年が、羽柴家の玄関に

(あらわれて、みょうなことをいいだしました。 「あたしは、おたくのうんてんしゅさんに)

現れて、妙な事を言い出しました。 「あたしは、お宅の運転手さんに

(たのまれたんですがね。うんてんしゅさんが、なんだかとちゅうできゅうにしようができたとかで、)

頼まれたんですがね。運転手さんが、何だか途中で急に私用が出来たとかで、

など

(たのまれてじどうしゃをはこんできたのですよ。くるまはもんのなかへいれておきましたから、)

頼まれて自動車を運んで来たのですよ。車は門の中へ入れておきましたから、

(しらべてうけとってほしいんですがね」 ひしょが、そのことをおくへほうこくする。)

調べて受け取って欲しいんですがね」  秘書が、その事を奥へ報告する。

(それっというので、しゅじんのそうたろうしやしはいにんのこんどうろうじんが、げんかんへかけだして、)

それっというので、主人の壮太郎氏や支配人の近藤老人が、玄関へ駆け出して、

(くるまをしらべてみますと、たしかにはしばけのじどうしゃにちがいありません。しかし、)

車を調べてみますと、確かに羽柴家の自動車に違いありません。しかし、

(なかにはだれもいないのです。そうじくんはやっぱりゆうかいされてしまったのです。)

中には誰もいないのです。壮二君はやっぱり誘拐されてしまったのです。

(「おや、こんなみょうなふうとうがおちていますよ」 こんどうろうじんが、じどうしゃの)

「おや、こんな妙な封筒が落ちていますよ」  近藤老人が、自動車の

(くっしょんのうえから1つうのふうしょをひろいあげました。そのおもてには「はしばそうたろうどの」)

クッションの上から一通の封書を拾い上げました。その表には「羽柴壮太郎殿」

(とおおきくかいてあるばかり、うらをみても、さしだしにんのなはありません。)

と大きく書いてあるばかり、裏を見ても、差出人の名はありません。

(「なんだろう」 と、そうたろうしがふうをひらいて、にわにたったままよんでみますと)

「なんだろう」 と、壮太郎氏が封を開いて、庭に立ったまま読んでみますと

(そこにはひだりのようなおそろしいことばがかきつらねてあったのです。)

そこには左のような恐ろしい言葉が書き連ねてあったのです。

(「さくやはだいや6こたしかにちょうだいしました。もちかえって、みればみるほどみごとなほうせき)

『昨夜はダイヤ六個確かに頂戴しました。持ち帰って、見れば見る程見事な宝石

(かほうとしてたいせつにほぞんします。 しかし、おれいはおれいとして、すこしおうらみが)

家宝として大切に保存します。  しかし、お礼はお礼として、少しお恨みが

(あるのです。なにものかがにわにわなをしかけておいて、ぼくのあしにぜんち10かかんのきずを)

あるのです。何者かが庭に罠を仕掛けておいて、僕の足に全治十日間の傷を

(おわせたことです。ぼくはそんがいをばいしょうしてもらうけんりがあります。)

負わせた事です。僕は損害を賠償してもらう権利があります。

(そのためにごしそくそうじくんをひとじちとしてつれてかえりました。 そうじくんはいま、せったくの)

その為にご子息壮二君を人質として連れて帰りました。  壮二君は今、拙宅の

(つめたいちかしつにとじこめられて、くらやみのなかでしくしくないております。)

冷たい地下室に閉じ込められて、暗闇の中でシクシク泣いております。

(そうじくんこそ、あののろわしいわなをしかけたほんにんです。これくらいのむくいはとうぜんでは)

壮二君こそ、あの呪わしい罠を仕掛けた本人です。これ位の報いは当然では

(ありますまいか。 ところでそんがいのばいしょうですが、それには、ぼくはごしょぞうの)

ありますまいか。  ところで損害の賠償ですが、それには、僕はご所蔵の

(かんぜおんぞうをようきゅうします。 ぼくはきのう、はからずもきかのびじゅつしつをはいけんするこうえいを)

観世音像を要求します。  僕は昨日、図らずも貴家の美術室を拝見する光栄を

(えたのですが、そのりっぱさにおどろきいりました。なかでもあのかんぜおんぞうは、かまくらきの)

得たのですが、その立派さに驚き入りました。中でもあの観世音像は、鎌倉期の

(ちょうこく、あんあみのさくとせつめいがきがありましたが、どうにもこくほうにしたいほどのもの、)

彫刻、安阿弥の作と説明書きがありましたが、如何にも国宝にしたい程のもの、

(びじゅつずきのぼくは、ほしくてほしくてたまりませんでした。そのとき、どうあっても、)

美術好きの僕は、欲しくて欲しくて堪りませんでした。その時、どうあっても、

(このぶつぞうだけはちょうだいしなければならないと、かたくけっしんしたのです。)

この仏像だけは頂戴しなければならないと、固く決心したのです。

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