怪人二十面相15 江戸川乱歩

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少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(ついては、こんやせい10じ、ぼくのぶかのもの3めいがきかにさんじょうしますから、)

ついては、今夜正十時、僕の部下の者三名が貴家に参上しますから、

(だまってびじゅつしつにとおしていただきたいのです。かれらはかんぜおんぞうだけをにづくりして、)

黙って美術室に通して頂きたいのです。彼らは観世音像だけを荷造りして、

(とらっくにつんではこびさるよていになっております。ひとじちのそうじくんは、ぶつぞうと)

トラックに積んで運び去る予定になっております。人質の壮二君は、仏像と

(ひきかえにきかへもどるようにはからいます。やくそくはにじゅうめんそうのなにかけて)

引き換えに貴家へ戻るように計らいます。約束は二十面相の名に懸けて

(まちがいありません。 このことをけいさつにしらせてはなりません。またぶかの)

間違いありません。  この事を警察に知らせてはなりません。また部下の

(とらっくのあとをつけさせてはいけません。もしそういうことがあれば、)

トラックの跡をつけさせてはいけません。もしそういう事があれば、

(そうじくんはえいきゅうにかえらないものとおぼしめしください。このもうしではかならずごしょうだくを)

壮二君は永久に帰らないものと思し召し下さい。この申し出は必ずご承諾を

(えるものとしんじますが、ねんのためごしょうだくのせつは、こんやだけ10じまでせいもんを)

得るものと信じますが、念の為ご承諾の節は、今夜だけ十時まで正門を

(あけはなっておいてください。それをめじるしにさんじょうすることにいたします。)

開け放っておいて下さい。それを目印に参上する事に致します。

(にじゅうめんそうより はしばそうたろうどの」)

二十面相より 羽柴壮太郎殿

(なんというむしのよいようきゅうでしょう。そうたろうしはじめ、こぶしをにぎって)

何という虫のよい要求でしょう。壮太郎氏はじめ、拳を握って

(くやしがりましたが、そうじくんというかけがえのないひとじちをとられては、どうすることも)

悔しがりましたが、壮二君という掛替えのない人質を取られては、どうする事も

(できません。ざんねんながら、このむちゃなもうしでにおうずるほかにてだてはないように)

出来ません。残念ながら、この無茶な申し出に応ずる他に手立てはないように

(おもわれます。 なお、ぞくにたのまれてじどうしゃをうんてんしてきたせいねんをとらえて、)

思われます。  なお、賊に頼まれて自動車を運転して来た青年を捕えて、

(じゅうぶんせんぎしましたけれど、かれはただ、いくらかおれいをもらってたのまれただけで、)

十分詮議しましたけれど、彼はただ、幾らかお礼を貰って頼まれただけで、

(ぞくのことはなにもしりませんでした。)

賊の事は何も知りませんでした。

(しょうねんたんてい せいねんうんてんしゅをかえすと、ただちにしゅじんのそうたろうしふさい、こんどうろうじん、)

【少年探偵】  青年運転手を帰すと、直ちに主人の壮太郎氏夫妻、近藤老人、

(それに、がっこうのようむいんさんにおくられてくるまをとばしてかえってきたさなえさんも)

それに、学校の用務員さんに送られて車を飛ばして帰って来た早苗さんも

(くわわって、おくまったへやにぜんごしょちのそうだんがひらかれました。もうぐずぐずしては)

加わって、奥まった部屋に善後処置の相談が開かれました。もうぐずぐずしては

(いられないのです。10じといえば、8、9じかんしかありません。)

いられないのです。十時といえば、八、九時間しかありません。

など

(「ほかのものならばかまわない。だいやなぞおかねさえだせばてにはいるのだからね。)

「他のものならば構わない。ダイヤなぞお金さえ出せば手に入るのだからね。

(しかしあのかんぜおんぞうだけは、わしはどうもてばなしたくないのだ。ああいうこくほうきゅうの)

しかしあの観世音像だけは、儂はどうも手放したくないのだ。ああいう国宝級の

(めいさくを、ぞくのてなどにわたしては、にほんのびじゅつかいのためにすまない。あのちょうこくは、)

名作を、賊の手などに渡しては、日本の美術界の為にすまない。あの彫刻は、

(このいえのびじゅつしつにおさめてあるけど、けっしてわしのしゆうぶつではないとおもっている)

この家の美術室に収めてあるけど、決して儂の私有物ではないと思っている

(くらいだからね」 そうたろうしは、さすがにわがこのことばかりかんがえては)

くらいだからね」  壮太郎氏は、さすがに我が子の事ばかり考えては

(いませんでした。しかし、はしばふじんはそうはいきません。かわいそうなそうじくんのことで)

いませんでした。しかし、羽柴夫人はそうはいきません。可哀想な壮二君の事で

(いっぱいなのです。 「でも、ぶつぞうをわたすまいとすれば、あのこがどんなめに)

いっぱいなのです。 「でも、仏像を渡すまいとすれば、あの子がどんな目に

(あうかわからないじゃございませんか。いくらたいせつなびじゅつひんでも、にんげんのいのちには)

あうか分からないじゃございませんか。いくら大切な美術品でも、人間の命には

(かえられないとぞんじます。どうかけいさつなどへおっしゃらないで、ぞくのもうしでに)

替えられないと存じます。どうか警察などへ仰らないで、賊の申し出に

(おうじてやってくださいませ」 おかあさまのまぶたのうらには、どこともしれぬ)

応じてやって下さいませ」  お母様の目蓋の裏には、何処とも知れぬ

(まっくらなちかしつに、ひとりぼっちでなきじゃくっているそうじくんのすがたが、まざまざと)

真暗な地下室に、独りぼっちで泣きじゃくっている壮二君の姿が、まざまざと

(うかんでいました。こんばんの10じさえまちどおしいのです。たったいまでも、)

浮かんでいました。今晩の十時さえ待ちどおしいのです。たった今でも、

(ぶつぞうとひきかえに、はやくそうじくんをとりもどしてほしいのです。 「うん、そうじを)

仏像と引き換えに、早く壮二君を取り戻して欲しいのです。 「ウン、壮二を

(とりもどすのはむろんのことだが、しかし、だいやをとられたうえに、あのかけがえのない)

取り戻すのは無論の事だが、しかし、ダイヤを取られた上に、あの掛替えのない

(びじゅつひんまでおめおめぞくにわたすのかとおもうと、ざんねんでたまらないのだ。)

美術品までおめおめ賊に渡すのかと思うと、残念で堪らないのだ。

(こんどうくん、なにかほうほうはないものだろうか」 「そうでございますね。けいさつに)

近藤君、何か方法はないものだろうか」 「そうでございますね。警察に

(しらせたら、たちまちことがあらだってしまいましょうから、ぞくのてがみのことは)

知らせたら、たちまち事が荒立ってしまいましょうから、賊の手紙の事は

(こんばん10じまでは、そとへもれないようにしておかねばなりません。)

今晩十時までは、外へ洩れないようにしておかねばなりません。

(しかし、しりつたんていならば・・・・・・」 ろうじんが、ふといちあんをもちだしました。)

しかし、私立探偵ならば……」  老人が、ふと一案を持ち出しました。

(「うん、しりつたんていというものがあるね。しかし、こじんのたんていなどにこのだいじけんが)

「ウン、私立探偵というものがあるね。しかし、個人の探偵などにこの大事件が

(こなせるかしらん」 「きくところによりますと、なんでもとうきょうにひとり、)

こなせるかしらん」 「聞くところによりますと、何でも東京に一人、

(えらいたんていがいるともうすことでございますが」 )

えらい探偵がいると申す事でございますが」

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