怪人二十面相17 江戸川乱歩

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プレイ回数2617難易度(4.5) 2972打 長文
少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(「さっきでんわぐちでうでききのめいたんていといったのは、きみじしんのことだったのですか」)

「先刻電話口で腕利きの名探偵と言ったのは、君自身の事だったのですか」

(「ええ、そうです。ぼくはせんせいからるすちゅうのじけんをすっかりまかされているのです」)

「ええ、そうです。僕は先生から留守中の事件をすっかり任されているのです」

(しょうねんはじしんたっぷりです。 「いま、きみはそうじのともだちだっていったそうですね)

少年は自信たっぷりです。 「今、きみは壮二の友達だって言ったそうですね

(どうしてそうじのなをしっていました」 「それくらいのことがわからないでは、たんていの)

どうして壮二の名を知っていました」 「それ位の事が分からないでは、探偵の

(しごとはできません。じつぎょうざっしにあなたのごかぞくのことがでていたのを、)

仕事は出来ません。実業雑誌にあなたのご家族の事が出ていたのを、

(きりぬきちょうでしらべてきたのです。でんわで、ひとのいちめいにかかわるというおはなしが)

切り抜き帳で調べて来たのです。電話で、人の一命に関わるというお話が

(あったので、さなえさんか、そうじくんか、どちらかがゆくえふめいにでもなったのでは)

あったので、早苗さんか、壮二君か、どちらかが行方不明にでもなったのでは

(ないかとそうぞうしてきました。どうやら、そのそうぞうがあたったようですね。)

ないかと想像してきました。どうやら、その想像が当たったようですね。

(それから、このじけんにはれいのにじゅうめんそうのぞくがかんけいしているのではありませんか」)

それから、この事件には例の二十面相の賊が関係しているのではありませんか」

(こばやししょうねんは、じつにこきみよくくちをききます。 なるほど、このこどもは、)

小林少年は、実に小気味良く口を利きます。  なるほど、この子どもは、

(ほんとうにめいたんていかもしれないぞと、そうたろうしはすっかりかんしんしてしまいました。)

本当に名探偵かもしれないぞと、壮太郎氏はすっかり感心してしまいました。

(そこでこんどうろうじんをおうせつしつによんでふたりでじけんのてんまつを、このしょうねんにくわしく)

そこで近藤老人を応接室に呼んで二人で事件の顛末を、この少年に詳しく

(かたりきかせることにしたのです。 しょうねんは、きゅうしょきゅうしょでみじかいしつもんをはさみながら、)

語り聞かせる事にしたのです。  少年は、急所急所で短い質問を挟みながら、

(ねっしんにきいていましたが、はなしがすむとそのかんのんぞうをみたいともうしでました。)

熱心に聞いていましたが、話が済むとその観音像を見たいと申し出ました。

(そしてそうたろうしのあんないでびじゅつしつをみてもとのおうせつしつにかえったのですが、しばらくのあいだ)

そして壮太郎氏の案内で美術室を見て元の応接室に帰ったのですが、暫くの間

(ものもいわないで、めをつぶって、なにかかんがえごとにふけっているようすでした。)

物も言わないで、目を瞑って、何か考え事に耽っている様子でした。

(やがてしょうねんはぱっちりめをひらくと、ひとひざのりだすようにして、)

やがて少年はパッチリ目を開くと、一膝乗り出すようにして、

(いきごんでいいました。 「ぼくはひとつうまいしゅだんをかんがえついたのです。)

意気込んで言いました。 「僕は一つ上手い手段を考え付いたのです。

(あいてがまほうつかいなら、こっちもまほうつかいになるのです。ひじょうにきけんなしゅだんです。)

相手が魔法使いなら、こっちも魔法使いになるのです。非常に危険な手段です。

(でも、きけんをおかさないでてがらをたてることはできませんからね。ぼくはまえに、)

でも、危険を冒さないで手柄を立てる事は出来ませんからね。僕は前に、

など

(もっとあぶないことさえやったけいけんがあります」 「ほう、それはたのもしい。)

もっと危ない事さえやった経験があります」 「ホウ、それは頼もしい。

(だがいったいどういうしゅだんですね」 「それはね」)

だが一体どういう手段ですね」 「それはね」

(こばやししょうねんはいきなりそうたろうしにちかづいて、みみもとになにかささやきました。)

小林少年はいきなり壮太郎氏に近付いて、耳元に何か囁きました。

(「え、きみがですか」 そうたろうしはあまりのとっぴなもうしでにめをまるくしないでは)

「え、君がですか」  壮太郎氏はあまりの突飛な申し出に目を丸くしないでは

(いられませんでした。 「そうです。ちょっとかんがえるとむずかしそうですが、)

いられませんでした。 「そうです。ちょっと考えると難しそうですが、

(ぼくたちには、このほうほうはしけんずみなんです。せんねんふらんすの)

僕達には、この方法は試験済みなんです。先年フランスの

(かいとうあるせーぬ=るぱんのやつをせんせいがこのてで、ひどいめにあわせてやった)

怪盗アルセーヌ=ルパンの奴を先生がこの手で、酷い目に合わせてやった

(ことがあるんです」 「そうじのみにきけんがおよぶようなことはありませんか」)

事があるんです」 「壮二の身に危険が及ぶような事はありませんか」

(「それはだいじょうぶです。あいてがちいさなどろぼうですとかえってきけんですが、にじゅうめんそうとも)

「それは大丈夫です。相手が小さな泥棒ですと却って危険ですが、二十面相とも

(あろうものが、やくそくをたがえたりはしないでしょう。そうじくんはぶつぞうとひきかえに)

あろう者が、約束を違えたりはしないでしょう。壮二君は仏像と引き換えに

(おかえしするというのですから、きけんがおこるまえにちゃんとここへ)

お返しすると言うのですから、危険が起こる前にちゃんとここへ

(もどっていらっしゃるにちがいありません。もしそうでなかったらそのときには、)

戻っていらっしゃるに違いありません。もしそうでなかったらその時には、

(またそのときのほうほうがあります。だいじょうぶですよ。ぼくはこどもだけれど)

またその時の方法があります。大丈夫ですよ。僕は子どもだけれど

(けっしてむちゃなことはかんがえません」 「あけちさんのふざいちゅうに、きみにそういう)

決して無茶な事は考えません」 「明智さんの不在中に、君にそういう

(きけんなことをさせて、まんいちのことがあってはこまるが」 「ははは・・・・・・、あなたは)

危険な事をさせて、万一の事があっては困るが」 「ハハハ……、あなたは

(ぼくたちのせいかつをごぞんじないのですよ。たんていなんてけいさつかんとおなじことで、はんざいそうさの)

僕達の生活を御存知ないのですよ。探偵なんて警察官と同じ事で、犯罪捜査の

(ためにたおれたらほんもうなんです。しかし、こんなことはなんでもありませんよ。)

為に倒れたら本望なんです。しかし、こんな事は何でもありませんよ。

(きけんというほどのしごとじゃありません。あなたはみてみぬふりを)

危険という程の仕事じゃありません。あなたは見て見ぬ振りを

(してくださればよいんです。ぼくはたとえおゆるしがなくても、もうあとへはひきませんよ)

して下されば良いんです。僕は例えお許しが無くても、もう後へは引きませんよ

(かってにけいかくをじっこうするばかりです」 はしばしもこんどうろうじんも、)

勝手に計画を実行するばかりです」  羽柴氏も近藤老人も、

(このしょうねんのげんきを、もてあましぎみでした。 そして、ながいあいだのきょうぎのけっか、)

この少年の元気を、持て余し気味でした。  そして、長い間の協議の結果、

(とうとうこばやししょうねんのかんがえをじっこうすることにはなしがきまりました。)

とうとう小林少年の考えを実行する事に話が決まりました。

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