怪人二十面相18 江戸川乱歩

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プレイ回数2505難易度(5.0) 2836打 長文
少年探偵団シリーズ1作目
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ポンタ 3033 E++ 3.4 89.8% 832.4 2845 320 42 2024/04/23

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問題文

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(ぶつぞうのきせき さて、おはなしはとんで、そのよるのできごとにうつります。)

【仏像の奇跡】  さて、お話は飛んで、その夜の出来事に移ります。

(ごご10じ、やくそくをたがえず、にじゅうめんそうのぶかの3にんのあらくれおとこが、)

午後十時、約束を違えず、二十面相の部下の三人の荒くれ男が、

(あけはなったままのはしばけのもんをくぐりました。 ぬすっとたちはげんかんにたっている)

開け放ったままの羽柴家の門を潜りました。  盗人達は玄関に立っている

(ひしょなどをしりめに、 「おやくそくのしなものをいただきにまいりましたよ」)

秘書などを後目に、 「お約束の品物を頂きに参りましたよ」

(と、すてぜりふをのこしながらまどりをおしえられてきたとみえて、まよいもせず)

と、捨て台詞を残しながら間取りを教えられて来たとみえて、迷いもせず

(ぐんぐんおくのほうへふみこんでいきました。 びじゅつしつのいりぐちでは、そうたろうしと)

ぐんぐん奥の方へ踏み込んで行きました。  美術室の入り口では、壮太郎氏と

(こんどうろうじんとがまちうけていて、ぞくのひとりにこえをかけました。)

近藤老人とが待ち受けていて、賊の一人に声を掛けました。

(「やくそくはまちがいないんだろうね。こどもはつれてきたんだろうね」 )

「約束は間違いないんだろうね。子どもは連れて来たんだろうね」

(すると、ぞくはぶあいそうにこたえました。 「ごしんぱいにゃおよびませんよ。)

すると、賊は無愛想に答えました。 「ご心配にゃおよびませんよ。

(こどもさんは、もうちゃんと、もんのそばまでつれてきてありまさあ。)

子どもさんは、もうちゃんと、門の傍まで連れて来てありまさあ。

(だがね、さがしたってむだですぜ。あっしたちがにもつをはこびだすまでは、)

だがね、捜したって無駄ですぜ。あっしたちが荷物を運び出すまでは、

(いくらさがしてもわからねえようにくふうがしてあるんです。でなきゃあ、)

いくら捜しても分からねえように工夫がしてあるんです。でなきゃあ、

(こちとらがあぶないからね」 いいすてて、3にんはどかどかびじゅつしつへ)

こちとらが危ないからね」  言い捨てて、三人はドカドカ美術室へ

(はいっていきました。 そのへやはどぞうのようなつくりになっていて、)

入って行きました。  その部屋は土蔵のような造りになっていて、

(うすぐらいでんとうのしたに、まるではくぶつかんのようながらすだなが、ぐるっとまわりを)

うす暗い電燈の下に、まるで博物館のようなガラス棚が、グルッと周りを

(とりまいているのです。 よしありげなとうけん、かっちゅう、おきもの、てばこのたぐい、びょうぶ、)

取り巻いているのです。  由有り気な刀剣、甲冑、置き物、手箱の類、屏風、

(かけじくなどが、ところせましとならんでいるいっぽうのすみに、たかさ1めーとるはんほどの、)

掛け軸などが、所狭しと並んでいる一方の隅に、高さ一メートル半程の、

(ちょうほうけいのがらすばこがたっていて、そのなかにもんだいのかんぜおんぞうがあんちしてあるのです)

長方形のガラス箱が立っていて、その中に問題の観世音像が安置してあるのです

(れんげのだいざのうえに、ほんとうのにんげんのはんぶんほどのおおきさの、うすぐろいかんのんさまが)

蓮華の台座の上に、本当の人間の半分程の大きさの、薄黒い観音様が

(すわっておいでになります。もとはこんじきまばゆいおすがただったのでしょうけれど、)

座っておいでになります。元は金色眩いお姿だったのでしょうけれど、

など

(いまはただいちめんにうすぐろく、きていらっしゃるひだのおおいころももところどころすりやぶれています。)

今はただ一面に薄黒く、着ていらっしゃる襞の多い衣も所々擦り破れています。

(でも、さすがはめいしょうのさく、そのえんまんにゅうわなおかおだちはいまにもわらいだすかと)

でも、流石は名匠の作、その円満柔和なお顔立ちは今にも笑いだすかと

(おもわれるばかり、いかなるあくにんもこのおすがたをはいしては、がっしょうしないでは)

思われるばかり、如何なる悪人もこのお姿を拝しては、合掌しないでは

(いられぬほどにみえます。 3にんのどろぼうはさすがにきがひけるのか、)

いられぬほどに見えます。  三人の泥棒はさすがに気が引けるのか、

(ぶつぞうのにゅうわなおすがたを、よくもみないで、すぐさましごとにかかりました。)

仏像の柔和なお姿を、よくも見ないで、すぐさま仕事にかかりました。

(「ぐずぐずしちゃいられねえ。おおいそぎだぜ」 ひとりがもってきた)

「ぐずぐずしちゃいられねえ。大急ぎだぜ」  一人が持って来た

(うすぎたないぬののようなものをひろげますと、もうひとりのおとこがそのはしをもって、)

薄汚い布のような物を広げますと、もう一人の男がその端を持って、

(ぶつぞうのがらすばこのそとを、ぐるぐるとまいていきます。たちまち、それとわからぬ)

仏像のガラス箱の外を、ぐるぐると巻いていきます。たちまち、それと分からぬ

(ぬのづつみができあがってしまいました。 「ほら、いいか。よこにしたらこわれるぜ。)

布包みが出来上がってしまいました。 「ほら、いいか。横にしたら壊れるぜ。

(よいしょ、よいしょ」 ぼうじゃくぶじんのかけごえまでして、3にんのやつはそのにもつを)

よいしょ、よいしょ」  傍若無人の掛け声までして、三人の奴はその荷物を

(おもてへはこびだします。 そうたろうしとこんどうろうじんは、それがとらっくのうえに)

表へ運び出します。  壮太郎氏と近藤老人は、それがトラックの上に

(つみこまれるまで、3にんのそばにつききってみはっていました。ぶつぞうだけ)

積み込まれるまで、三人の傍に付ききって見張っていました。仏像だけ

(もちさられて、そうじくんがもどってこないでは、なんにもならないからです。 )

持ち去られて、壮二君が戻って来ないでは、何にもならないからです。

(やがて、とらっくのえんじんがそうぞうしくなりはじめ、くるまはいまにも)

やがて、トラックのエンジンが騒々しくなり始め、車は今にも

(しゅっぱつしそうになりました。 「おい、そうじさんはどこにいるのだ。そうじさんを)

出発しそうになりました。 「おい、壮二さんは何処にいるのだ。壮二さんを

(もどさないうちは、このくるまをしゅっぱつさせないぞ。もし、むりにしゅっぱつすれば、)

戻さない内は、この車を出発させないぞ。もし、無理に出発すれば、

(すぐけいさつにしらせるぞ」 こんどうろうじんは、もう、いっしょうけんめいでした。)

すぐ警察に知らせるぞ」  近藤老人は、もう、一生懸命でした。

(「しんぱいするなってえことよ。ほら、うしろをむいてごらん。ぼっちゃんは、)

「心配するなってえことよ。ほら、後ろを向いてごらん。坊ちゃんは、

(もうちゃんとげんかんにおいでなさらあ」 ふりむくと、なるほど、げんかんのでんとうのまえに)

もうちゃんと玄関においでなさらあ」  振り向くと、成程、玄関の電燈の前に

(おおきいのとちいさいのと、ふたつのくろいひとかげがみえます。 そうたろうしとろうじんとが)

大きいのと小さいのと、二つの黒い人影が見えます。  壮太郎氏と老人とが

(それにきをとられているうちに、 「あばよ・・・・・・」)

それに気を取られている内に、 「あばよ……」

(とらっくはもんぜんをはなれて、みるみるちいさくなっていきました。)

トラックは門前を離れて、みるみる小さくなっていきました。

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