怪人二十面相21 江戸川乱歩

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プレイ回数2787難易度(5.0) 2789打 長文
少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(あいてがにんげんらしいことがわかると、ぞくはすこしげんきづいてきました。)

相手が人間らしい事が分かると、賊は少し元気付いてきました。

(でも、えたいのしれぬきょうふが、まったくなくなったわけではありません。というのは、)

でも、得体の知れぬ恐怖が、全く無くなったわけではありません。というのは、

(にんげんがへんそうしたのにしては、ぶつぞうがあまりちいさすぎたからです。)

人間が変装したのにしては、仏像があまり小さ過ぎたからです。

(たちあがったところをみると、12、3のこどものせたけしかありません。)

立ちあがったところを見ると、十二、三の子どもの背丈しかありません。

(そのいっすんぼうしみたいなやつが、おちつきはらって、ろうじんのようなおもおもしいこえで)

その一寸法師みたいな奴が、落ちつきはらって、老人のような重々しい声で

(ものをいっているのですから、じつになんともけいようのできないきみわるさです。)

ものを言っているのですから、実に何とも形容の出来ない気味悪さです。

(「で、だいやもんどをわたさぬといったら?」 ぞくはおそるおそる、あいてのきを)

「で、ダイヤモンドを渡さぬといったら?」  賊は恐る恐る、相手の気を

(ひいてみるように、たずねました。 「おまえのいのちがなくなるばかりさ。)

ひいてみるように、たずねました。 「お前の命が無くなるばかりさ。

(このぴすとるはね、いつもおまえがつかうような、おもちゃじゃないんだぜ」)

このピストルはね、いつもお前が使うような、玩具じゃないんだぜ」

(かんのんさまは、このごいんきょぜんとしたしらがのろうじんが、そのじつにじゅうめんそうの)

観音さまは、このご隠居然とした白髪の老人が、その実二十面相の

(へんそうすがたであることを、ちゃんとしりぬいているようすでした。たぶん、さいぜんの)

変装姿であることを、ちゃんと知り抜いている様子でした。たぶん、最前の

(てしたのものとのかいわをもれきいて、それと、さっしたのでしょう。)

手下の者との会話を漏れ聞いて、それと、察したのでしょう。

(「おもちゃでないというしょうこを、みせてあげようか」 そういったかとおもうと、)

「玩具でないという証拠を、見せてあげようか」  そう言ったかと思うと、

(かんのんさまのみぎてがひょいとうごきました。 とどうじに、はっととびあがるような)

観音さまの右手がヒョイと動きました。  と同時に、ハッと飛び上がるような

(おそろしいものおと。へやのいっぽうのまどがらすががらがらとくだけおちました。)

恐ろしい物音。部屋の一方の窓ガラスがガラガラと砕け落ちました。

(ぴすとるからは、じつだんがとびだしたのです。 いっすんぼうしのかんのんさまは、)

ピストルからは、実弾が飛び出したのです。  一寸法師の観音さまは、

(めちゃめちゃにとびちるがらすのはへんをちらとみやったまま、すばやくぴすとるの)

めちゃめちゃに飛び散るガラスの破片をチラと見遣ったまま、素早くピストルの

(ねらいをもとにもどし、いんどじんみたいなまっくろなかおで、うすきみわるくにやにやと)

狙いを元に戻し、インド人みたいな真っ黒な顔で、薄気味悪くニヤニヤと

(わらいました。 みるとぞくのむねにつきつけられたぴすとるのつつぐちからは、)

笑いました。  見ると賊の胸につきつけられたピストルの筒口からは、

(まだうすあおいけむりがたちのぼっています。 にじゅうめんそうは、このくろいかおをした)

まだ薄青い煙が立ち上っています。  二十面相は、この黒い顔をした

など

(ちいさなかいじんぶつのきもったまが、おそろしくなってしまいました。)

小さな怪人物の肝っ玉が、恐ろしくなってしまいました。

(こんなめちゃくちゃならんぼうものは、なにをしだすかしれたものではない。ほんとうに)

こんな滅茶苦茶な乱暴者は、何をしだすかしれたものではない。本当に

(ぴすとるでうちころすきかもしれぬ。たといそのたまはうまくのがれたとしても、)

ピストルで撃ち殺す気かもしれぬ。例いその弾丸は上手く逃れたとしても、

(このうえあんなおおきなものおとをたてられては、ふきんのじゅうみんにあやしまれて、)

この上あんな大きな物音を立てられては、付近の住民に怪しまれて、

(どんなことになるかもしれぬ。 「しかたがない。だいやもんどはかえしてやろう」)

どんなことになるかも知れぬ。 「仕方がない。ダイヤモンドは返してやろう」

(ぞくはあきらめたようにいいすてて、へやのすみのおおきなつくえのまえへいき、)

賊は諦めたように言い捨てて、部屋の隅の大きな机の前へ行き、

(つくえのあしをくりぬいたかくしひきだしから6このほうせきをとりだすと、てのひらにのせて)

机の足を刳り抜いた隠し引き出しから六個の宝石を取り出すと、手の平に乗せて

(かちゃかちゃいわせながらもどってきました。 だいやもんどは、ぞくのてのなかで)

カチャカチャいわせながら戻って来ました。  ダイヤモンドは、賊の手の中で

(おどるたびごとに、ゆかのろうそくのひかりをうけて、ぎらぎらとにじのようにかがやいています。)

躍るたび毎に、床の蝋燭の光を受けて、ギラギラと虹のように輝いています。

(「さあ、これだ。よくしらべてうけとりたまえ」 いっすんぼうしのかんのんさまは、)

「さあ、これだ。よく調べて受けとりたまえ」  一寸法師の観音さまは、

(ひだりてをのばして、それをうけとると、ろうじんのようなしわがれごえで、わらいました。)

左手を伸ばして、それを受け取ると、老人のようなしわがれ声で、笑いました。

(「ははは・・・・・・、かんしん、かんしん、さすがのにじゅうめんそうもやっぱりいのちはおしいとみえるね」)

「ハハハ……、感心、感心、流石の二十面相もやっぱり命は惜しいとみえるね」

(「うむ、ざんねんながら、かぶとをぬいだよ」 ぞくは、くやしそうにくちびるをかみながら、)

「ウム、残念ながら、兜を脱いだよ」  賊は、悔しそうに唇を噛みながら、

(「ところで、いったいきみはなにものだね。このにじゅうめんそうをこんなめにあわせるやつが)

「ところで、一体君は何者だね。この二十面相をこんなめに合わせる奴が

(あろうとは、おれもいがいだったよ。こうがくのためになまえをおしえてくれないか」)

あろうとは、俺も意外だったよ。後学の為に名前を教えてくれないか」

(「ははは・・・・・・、おほめにあずかってこうえいのいたりだね。なまえかい。それはきみがろうやに)

「ハハハ……、お褒めに預かって光栄の至りだね。名前かい。それは君が牢屋に

(はいってからのおたのしみにのこしておこう。おまわりさんがおしえてくれることだろうよ」)

入ってからのお楽しみに残しておこう。お巡りさんが教えてくれる事だろうよ」

(かんのんさまはかちほこったようにいいながら、やっぱりぴすとるをかまえたまま、)

観音さまは勝ち誇ったように言いながら、やっぱりピストルを構えたまま、

(へやのでぐちのほうへ、じりじりとあとじさりをはじめました。 ぞくのそうくつは)

部屋の出口の方へ、ジリジリと後退りを始めました。  賊の巣くつは

(つきとめたし、だいやもんどはとりもどしたし、あとはぶじにこのあばらやをでて、)

突き止めたし、ダイヤモンドは取り戻したし、後は無事にこの荒ら家を出て、

(ふきんのけいさつへかけこみさえすればよいのです。)

付近の警察へ駆け込みさえすればよいのです。

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