怪人二十面相25 江戸川乱歩

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少年探偵団シリーズ1作目
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 daifuku 3588 D+ 3.8 94.5% 803.6 3060 176 43 2024/11/11

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問題文

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(ちかしつにひがさすはずはないのだが、となおもみまわしていますと、)

地下室に日が射す筈はないのだが、と尚も見まわしていますと、

(ゆうべはすこしもきづきませんでしたが、いっぽうのてんじょうにちかく、あかりとりのちいさなまどが)

夕べは少しも気付きませんでしたが、一方の天井に近く、明り取りの小さな窓が

(ひらいていることがわかりました。 そのまどは30せんちしほうほどのごくちいさいもので)

開いている事が分かりました。  その窓は三十センチ四方程のごく小さい物で

(そのうえ、ふといてつごうしがはめてあります。ちかしつのゆかからは3めーとるちかくもある)

その上、太い鉄格子が填めてあります。地下室の床からは三メートル近くもある

(たかいところですけれど、そとからみれば、じめんとすれすれのばしょにあるのでしょう。)

高い所ですけれど、外から見れば、地面とすれすれの場所にあるのでしょう。

(「はてな、あのまどから、うまくにげだせないかしら」 こばやしくんはいそいで)

「はてな、あの窓から、上手く逃げ出せないかしら」  小林君は急いで

(ながいすからおきあがり、まどのしたにいって、あかるいそらをみあげました。)

長イスから起き上がり、窓の下に行って、明るい空を見上げました。

(まどにはがらすがはめてあるのですが、それがわれてしまって、おおごえにさけべば、)

窓にはガラスが填めてあるのですが、それが割れてしまって、大声に叫べば、

(そとをとおるひとにきこえそうにもおもわれるのです。 そこで、いままでねていた)

外を通る人に聞こえそうにも思われるのです。  そこで、今まで寝ていた

(ながいすを、まどのしたへおしていって、それをふみだいにのびあがってみましたが、)

長イスを、窓の下へ押していって、それを踏み台に伸び上ってみましたが、

(それでもまだまどへとどきません。こどものちからでおもいながいすをたてにすることは)

それでもまだ窓へ届きません。子どもの力で重い長イスを縦にすることは

(できないし、ほかにふみだいにするどうぐとてもみあたりません。 では、こばやしくんは)

出来ないし、外に踏み台にする道具とても見当たりません。  では、小林君は

(せっかくまどをはっけんしながら、そこからそとをのぞくこともできなかったのでしょうか。)

せっかく窓を発見しながら、そこから外を覗く事も出来なかったのでしょうか。

(いやいや、どくしゃしょくん、ごしんぱいにはおよびません。こういうときのよういになわばしごという)

いやいや、読者諸君、ご心配には及びません。こういう時の用意に縄梯子という

(ものがあるのです。しょうねんたんていのななつどうぐは、さっそくつかいみちができたわけです。)

物があるのです。少年探偵の七つ道具は、早速使い道が出来たわけです。

(かれはかばんからきぬひものなわばしごをとりだし、それをのばして、かうぼーいの)

彼はカバンから絹紐の縄梯子を取り出し、それを伸ばして、カウ・ボーイの

(なげなわみたいにはずみをつけ、いっぽうのはしについているかぎを、まどのてつごうしめがけて)

投げ縄みたいに弾みを付け、一方の端に付いている鉤を、窓の鉄格子目掛けて

(なげあげました。 3ど、4どしっぱいしたあとで、がちっとてごたえがありました。)

投げ上げました。  三度、四度失敗した後で、ガチッと手応えがありました。

(かぎはうまく1ぽんのてつぼうにかかったのです。 なわばしごといっても、これは)

鉤は上手く一本の鉄棒に掛かったのです。  縄梯子といっても、これは

(ごくかんたんなもので、5めーとるほどもあるながいじょうぶな1ぽんのきぬひもに、)

極簡単なもので、五メートルほどもある長い丈夫な一本の絹紐に、

など

(20せんちごとにおおきなむすびだまがこしらえてあって、そのむすびだまにあしのゆびをかけて、)

二十センチごとに大きな結び玉が拵えてあって、その結び玉に足の指を掛けて、

(よじのぼるしかけなのです。 こばやしくんはわんりょくではおとなにおよびませんけれど、)

よじ登る仕掛けなのです。  小林君は腕力では大人に及びませんけれど、

(そういうきかいたいそうめいたことになると、だれにもひけはとりませんでした。かれは、)

そういう器械体操めいた事になると、誰にも引けはとりませんでした。彼は、

(なんなくなわばしごをのぼって、まどのてつごうしにつかまることができました。)

難なく縄梯子を上って、窓の鉄格子に掴まる事が出来ました。

(ところが、そうしてしらべてみますと、しつぼうしたことには、てつごうしはふかく)

ところが、そうして調べてみますと、失望した事には、鉄格子は深く

(こんくりーとにぬりこめてあって、ばんのうないふぐらいでは、とてもとりはずせない)

コンクリートに塗り込めてあって、万能ナイフぐらいでは、とても取り外せない

(ことがわかりました。 では、まどからおおごえにすくいをもとめてみたらどうでしょう。)

事が分かりました。  では、窓から大声に救いを求めてみたらどうでしょう。

(いや、それもほとんどみこみがないのです。まどのそとはあれはてたにわになっていて)

いや、それも殆ど見込みがないのです。窓の外は荒れ果てた庭になっていて

(くさやきがしげり、そのずっとむこうにいけがきがあって、いけがきのそとはどうろもない)

草や木が茂り、そのずっと向こうに生垣があって、生垣の外は道路もない

(ひろっぱです。そのひろっぱへこどもでもあそびにくるのをまってすくいをもとめれば、)

広っぱです。その広っぱへ子どもでも遊びに来るのを待って救いを求めれば、

(もとめられるのですが、そこまでこえがとどくかどうかもうたがわしいほどです。)

求められるのですが、そこまで声が届くかどうかも疑わしい程です。

(それにそんなおおきなさけびごえをたてたのでは、ひろっぱのひとにきこえるよりもさきに)

それにそんな大きな叫び声を立てたのでは、広っぱの人に聞こえるよりも先に

(にじゅうめんそうにきかれてしまいます。いけない、いけない、そんなきけんなことが)

二十面相に聞かれてしまいます。いけない、いけない、そんな危険な事が

(できるものですか。 こばやししょうねんは、すっかりしつぼうしてしまいました。)

出来るものですか。  小林少年は、すっかり失望してしまいました。

(でもしつぼうのなかにも、ひとつだけおおきなしゅうかくがありました。といいますのは、)

でも失望の中にも、一つだけ大きな収穫がありました。と言いますのは、

(いまのいままでこのたてものがいったいどこにあるのか、すこしもけんとうがつかなかったのですが)

今の今までこの建物が一体何処にあるのか、少しも見当が付かなかったのですが

(まどをのぞいたおかげで、そのいちがはっきりとわかったことです。 どくしゃしょくんは、)

窓を覗いたお陰で、その位置がハッキリと分かった事です。  読者諸君は、

(ただまどをのぞいただけで、いちがわかるなんてへんだとおっしゃるかもしれません。)

ただ窓を覗いただけで、位置が分かるなんて変だと仰るかもしれません。

(でも、それがわかったのです。こばやしくんはたいへんこううんだったのです。 まどのそと、)

でも、それが分かったのです。小林君は大変幸運だったのです。  窓の外、

(ひろっぱのはるかむこうに、とうきょうにたった1かしょしかない、きわだってとくちょうのある)

広っぱの遥か向こうに、東京にたった一ヵ所しかない、際立って特徴のある

(たてものがみえたのです。とうきょうのどくしゃしょくんは、とやまがはらにある、たいじんこくのかまぼこを)

建物が見えたのです。東京の読者諸君は、戸山ヶ原にある、大人国のかまぼこを

(いくつもならべたような、こんくりーとのおおきなたてものをごぞんじでしょう。)

幾つも並べたような、コンクリートの大きな建物を御存知でしょう。

(じつにおあつらえむきのめじるしではありませんか。)

実にお誂え向きの目印ではありませんか。

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