怪人二十面相26 江戸川乱歩
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問題文
(しょうねんたんていは、そのたてものとぞくのいえとのかんけいをよくあたまにいれてなわばしごをおりました)
少年探偵は、その建物と賊の家との関係をよく頭に入れて縄梯子を下りました
(そしていそいでれいのかばんをひらくと、てちょうとえんぴつとじしゃくとをとりだし、)
そして急いで例のカバンを開くと、手帳と鉛筆と磁石とを取り出し、
(ほうがくをたしかめながらちずをかいてみました。するとこのたてものがとやまがはらのきたがわ、)
方角を確かめながら地図を書いてみました。するとこの建物が戸山ヶ原の北側、
(にしよりのいちぐうにあるということが、はっきりとわかったのでした。ここでまた、)
西よりの一隅にあるという事が、ハッキリと分かったのでした。ここでまた、
(ななつどうぐのなかのじしゃくがやくにたちました。 ついでにとけいをみますと、)
七つ道具の中の磁石が役に立ちました。 ついでに時計を見ますと、
(あさの6じをすこしすぎたばかりです。うえのへやがひっそりしているようすでは、)
朝の六時を少し過ぎたばかりです。上の部屋がひっそりしている様子では、
(にじゅうめんそうはまだじゅくすいしているのかもしれません。 「ああ、ざんねんだなあ。)
二十面相はまだ熟睡しているのかもしれません。 「ああ、残念だなあ。
(せっかくにじゅうめんそうのかくれがをつきとめたのに、そのばしょがちゃんと)
せっかく二十面相の隠れ家を突き止めたのに、その場所がちゃんと
(わかっているのに、ぞくをほばくすることができないなんて」 こばやしくんはちいさいこぶしを)
分かっているのに、賊を捕縛する事が出来ないなんて」 小林君は小さい拳を
(にぎりしめてくやしがりました。 「ぼくのからだが、どうわのせんにょみたいにちいさくなって)
握り締めて悔しがりました。 「僕の身体が、童話の仙女みたいに小さくなって
(はねがはえて、あのまどからとびだせたらなあ。そうすれば、さっそくけいしちょうへしらせて)
羽が生えて、あの窓から飛び出せたらなあ。そうすれば、早速警視庁へ知らせて
(おまわりさんをあんないして、にじゅうめんそうをつかまえてしまうんだがなあ」 かれはそんな)
お巡りさんを案内して、二十面相を捕まえてしまうんだがなあ」 彼はそんな
(ゆめのようなことをかんがえてためいきをついていましたが、ところが、そのみょうなくうそうが)
夢のようなことを考えて溜息をついていましたが、ところが、その妙な空想が
(きっかけになって、ふと、すばらしいめいあんがうかんできたのです。)
切っ掛けになって、ふと、素晴らしい名案が浮かんできたのです。
(「なあんだ、ぼくはばかだなあ。そんなことわけなくできるじゃないか。ぼくには)
「なあんだ、僕は莫迦だなあ。そんな事訳なく出来るじゃないか。僕には
(ぴっぽちゃんというひこうきがあるじゃないか」 それをかんがえると、うれしさに、)
ピッポちゃんという飛行機があるじゃないか」 それを考えると、嬉しさに、
(かおがあかくなって、むねがどきどきおどりだすのです。 こばやしくんはこうふんにふるえるてで)
顔が赤くなって、胸がドキドキ躍り出すのです。 小林君は興奮に震える手で
(てちょうにぞくのそうくつのいちと、じぶんがちかしつにかんきんされていることをしるし、)
手帳に賊の巣窟の位置と、自分が地下室に監禁されている事を記し、
(そのかみをちぎって、こまかくたたみました。 それから、かばんのなかの)
その紙を千切って、細かく畳みました。 それから、カバンの中の
(でんしょばとのぴっぽちゃんをだして、そのあしにむすびつけてあるつうしんとうのなかへ)
伝書バトのピッポちゃんを出して、その足に結び付けてある通信筒の中へ
(いまのてちょうのかみをつめこみ、しっかりとふたをしめました。 「さあぴっぽちゃん、)
今の手帳の紙を詰め込み、しっかりと蓋を閉めました。 「さあピッポちゃん、
(とうとうきみがてがらをたてるときがきたよ。しっかりするんだぜ。みちくさなんか)
とうとう君が手柄を立てる時が来たよ。しっかりするんだぜ。道草なんか
(くうんじゃないよ。いいかい。そら、あのまどからとびだして、はやくおくさんのところへ)
食うんじゃないよ。いいかい。そら、あの窓から飛び出して、早く奥さんの所へ
(いくんだ」 ぴっぽちゃんは、こばやししょうねんのてのこうにとまって、かわいいめを)
行くんだ」 ピッポちゃんは、小林少年の手の甲に止まって、可愛い目を
(きょろきょろさせてじっときいていましたが、ごしゅじんのめいれいがわかったものと)
キョロキョロさせてじっと聞いていましたが、ご主人の命令が分かったものと
(みえて、やがていさましくはばたきして、ちかしつのなかを2、3どいったりきたり)
見えて、やがて勇ましく羽ばたきして、地下室の中を二、三度行ったり来たり
(すると、つーっとまどのそとへとびだしてしまいました。 「ああ、よかった。)
すると、ツーッと窓の外へ飛び出してしまいました。 「ああ、よかった。
(10ふんもすれば、ぴっぽちゃんはあけちせんせいのおばさんのところへとんでいくだろう。)
十分もすれば、ピッポちゃんは明智先生の小母さんの所へ飛んで行くだろう。
(おばさんはぼくのてがみをよんで、さぞびっくりなさるだろうなあ。でもすぐにけいしちょうへ)
小母さんは僕の手紙を読んで、さぞ吃驚なさるだろうなあ。でもすぐに警視庁へ
(でんわをかけてくださるにちがいない。それからけいかんがここへかけつけるまで、)
電話を掛けて下さるに違いない。それから警官がここへ駆け付けるまで、
(30ふんかな?40ふんかな?なんにしても、いまから1じかんのうちには、)
三十分かな? 四十分かな? 何にしても、今から一時間の内には、
(ぞくがつかまるんだ。そしてぼくは、このあなぐらからでることができるんだ」)
賊が捕まるんだ。そして僕は、この穴倉から出る事が出来るんだ」
(こばやししょうねんはぴっぽちゃんのきえていったそらをながめながら、むちゅうになって)
小林少年はピッポちゃんの消えて行った空を眺めながら、夢中になって
(そんなことをかんがえていました。あまりむちゅうになっていたものですから、)
そんな事を考えていました。あまり夢中になっていたものですから、
(いつのまにか、てんじょうのおとしあなのふたがあいたことを、すこしもきづきませんでした。)
いつの間にか、天井の落とし穴の蓋が開いた事を、少しも気付きませんでした。
(「こばやしくん、そんなところでなにをしているんだね」 ききおぼえのあるにじゅうめんそうのこえが)
「小林君、そんな所で何をしているんだね」 聞き覚えのある二十面相の声が
(まるでかみなりのようにしょうねんのみみをうちました。 ぎょっとしてそこをみあげますと)
まるで雷のように少年の耳を打ちました。 ギョッとしてそこを見上げますと
(てんじょうにぽっかりひらいたしかくなあなから、ゆうべのままのしらがあたまのぞくのかおが、)
天井にポッカリ開いた四角な穴から、夕べのままの白髪頭の賊の顔が、
(さかさまになって、のぞいていたではありませんか。 あっ、それじゃ、)
逆さまになって、覗いていたではありませんか。 アッ、それじゃ、
(ぴっぽちゃんのとんでいくのを、みられたんじゃないかしら。)
ピッポちゃんの飛んで行くのを、見られたんじゃないかしら。
(こばやしくんは、おもわずかおいろをかえてぞくのかおをみつめました。)
小林君は、思わず顔色を変えて賊の顔を見詰めました。