怪人二十面相27 江戸川乱歩
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問題文
(きみょうなとりひき 「しょうねんたんていさん、どうだったね、ゆうべのねごこちは。)
【奇妙な取りひき】 「少年探偵さん、どうだったね、夕べの寝心地は。
(ははは・・・・・・、おや、まどになんだかくろいひもがぶらさがっているじゃないか。ははあ、)
ハハハ……、おや、窓に何だか黒い紐がぶら下がっているじゃないか。ははあ、
(よういのなわばしごというやつだね。かんしん、かんしん、きみは、じつにかんがえぶかいこどもだねえ。)
用意の縄梯子という奴だね。感心、感心、君は、実に考え深い子どもだねえ。
(だがそのまどのてつぼうは、きみのちからじゃはずせまい。そんなところにたって、いつまでまどを)
だがその窓の鉄棒は、君の力じゃ外せまい。そんな所に立って、いつまで窓を
(にらんでいたってにげだせっこはないんだよ。きのどくだね」 ぞくは、にくにくしく)
睨んでいたって逃げ出せっこはないんだよ。気の毒だね」 賊は、憎々しく
(あざけるのでした。 「やあ、おはよう。ぼくはにげだそうなんておもってやしないよ。)
嘲るのでした。 「やあ、お早う。僕は逃げ出そうなんて思ってやしないよ。
(いごこちがいいんだもの。このへやはきにいったよ。ぼくはゆっくりたいざい)
居心地が良いんだもの。この部屋は気に入ったよ。僕はゆっくり滞在
(するつもりだよ」 こばやししょうねんもまけてはいませんでした。いま、まどから)
するつもりだよ」 小林少年も負けてはいませんでした。今、窓から
(でんしょばとをとばしたのをぞくにかんづかれたのではないかと、むねをどきどきさせて)
伝書バトを飛ばしたのを賊に感付かれたのではないかと、胸をドキドキさせて
(いたのですが、にじゅうめんそうのくちぶりではそんなようすもみえませんので、すっかり)
いたのですが、二十面相の口振りではそんな様子も見えませんので、すっかり
(あんしんしてしまいました。 ぴっぽちゃんさえ、ぶじにたんていじむしょへついて)
安心してしまいました。 ピッポちゃんさえ、無事に探偵事務所へ着いて
(くれたら、もうしめたものです。にじゅうめんそうが、どんなにどくぐちをたたいたって)
くれたら、もうしめたものです。二十面相が、どんなに毒口を叩いたって
(なんともありません。さいごのしょうりはこっちのものだとわかっているからです。)
何ともありません。最後の勝利はこっちのものだと分かっているからです。
(「いごこちがいいんだって?ははは・・・・・・、ますますかんしんだねえ。さすがはあけちの)
「居心地が良いんだって? ハハハ……、ますます感心だねえ。さすがは明智の
(かたうでといわれるほどあっていいどきょうだ。だがこばやしくん、すこししんぱいなことがありゃ)
片腕と言われる程あっていい度胸だ。だが小林君、少し心配な事がありゃ
(しないかい。え、きみは、もうおなかがすいているじぶんだろう。うえじにしても)
しないかい。え、君は、もうお腹が空いている時分だろう。飢死にしても
(いいというのかい」 なにをいっているんだ。いまにぴっぽちゃんのほうこくで、)
良いというのかい」 何を言っているんだ。今にピッポちゃんの報告で、
(けいさつからたくさんのおまわりさんが、かけつけてくるのもしらないで。こばやしくんは)
警察から沢山のお巡りさんが、駆け付けて来るのも知らないで。小林君は
(なにもいわないで、こころのなかであざわらっていました。 「ははは・・・・・・、すこし)
何も言わないで、心の中で嘲笑っていました。 「ハハハ……、少し
(しょげたようだね。いいことをおしえてやろうか。きみはだいかをはらうんだよ。)
しょげたようだね。良いことを教えてやろうか。君は代価を払うんだよ。
(そうすれば、おいしいあさごはんをたべさせてあげるよ。いやいや、おかねじゃない。)
そうすれば、美味しい朝ご飯を食べさせてあげるよ。いやいや、お金じゃない。
(しょくじのだいかというのはね、きみのもっているぴすとるだよ。そのぴすとるを、)
食事の代価というのはね、きみの持っているピストルだよ。そのピストルを、
(おとなしくこっちへひきわたせば、こっくにいいつけて、さっそくあさごはんをはこばせ)
大人しくこっちへ引き渡せば、コックに言いつけて、早速朝ご飯を運ばせ
(るんだがねえ」 ぞくはおおきなことはいうものの、やっぱりぴすとるを)
るんだがねえ」 賊は大きな事は言うものの、やっぱりピストルを
(きみわるがっているのでした。それをしょくじのだいかとしてとりあげるとは、)
気味悪がっているのでした。それを食事の代価として取り上げるとは、
(うまいことをおもいついたものです。 こばやししょうねんは、やがてすくいだされることを)
上手い事を思い付いたものです。 小林少年は、やがて救い出される事を
(しんじていましたから、それまでしょくじをがまんするのはなんでもないのですが、)
信じていましたから、それまで食事を我慢するのは何でもないのですが、
(あまりへいきなかおをしていて、あいてにうたがいをおこさせてはまずいとかんがえました。)
あまり平気な顔をしていて、相手に疑いを起こさせては不味いと考えました。
(それに、どうせぴすとるなどに、もうようじはないのです。 「ざんねんだけれど、)
それに、どうせピストルなどに、もう用事はないのです。 「残念だけれど、
(きみのもうしでにおうじよう。ほんとうは、おなかがぺこぺこなんだ」)
君の申し出に応じよう。本当は、お腹がペコペコなんだ」
(わざとくやしそうにこたえました。 ぞくはそれをおしばいとはこころづかず、けいりゃくがずに)
態と悔しそうに答えました。 賊はそれをお芝居とは心づかず、計略が図に
(あたったとばかり、とくいになって、 「うふふふ・・・・・・、さすがのしょうねんたんていも、)
当たったとばかり、得意になって、 「ウフフフ……、流石の少年探偵も、
(ひもじさにはかなわないとみえるね。よしよし、いますぐにしょくじをおろして)
ひもじさには敵わないと見えるね。よしよし、今すぐに食事を降ろして
(やるからね」 といいながら、おとしあなをしめてすがたをけしましたが、やがて、)
やるからね」 と言いながら、落とし穴を閉めて姿を消しましたが、やがて、
(なにかこっくにめいじているらしいこえが、てんじょうから、かすかにきこえてきました。)
何かコックに命じているらしい声が、天井から、微かに聞こえてきました。
(あんがいしょくじのよういがてまどって、ふたたびにじゅうめんそうがおとしあなをひらいて)
案外食事の用意が手間取って、再び二十面相が落とし穴を開いて
(かおをだしたのは、それから20ふんもたったころでした。 「さあ、あたたかいごはんを)
顔を出したのは、それから二十分も経った頃でした。 「さあ、温かいご飯を
(もってきてあげたよ。が、まずだいかのほうをさきにちょうだいすることにしよう。)
持ってきてあげたよ。が、まず代価の方を先に頂戴する事にしよう。
(さあ、このかごにぴすとるをいれるんだ」 つなのついたちいさなかごが、)
さあ、この籠にピストルを入れるんだ」 綱のついた小さな籠が、
(するするとおりてきました。)
スルスルと降りてきました。