怪人二十面相28 江戸川乱歩

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プレイ回数2627難易度(5.0) 2756打 長文
少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(こばやししょうねんがいわれるままにぴすとるをそのなかへいれますと、かごはてばやくてんじょうへ)

小林少年が言われるままにピストルをその中へ入れますと、籠は手早く天井へ

(たぐりあげられ、それからもういちどおりてきたときには、そのなかにゆげの)

手繰り上げられ、それからもう一度降りて来た時には、その中に湯気の

(たっているおにぎりが3つと、はむとなまたまごとおちゃのびんとがならべてありました。)

立っているお握りが三つと、ハムと生卵とお茶の瓶とが並べてありました。

(とりこのみぶんにしてはなかなかのごちそうです。 「さあ、ゆっくりたべてくれたまえ)

虜の身分にしてはなかなかの御馳走です。 「さあ、ゆっくり食べてくれたまえ

(きみのほうでだいかさえはらってくれたら、いくらでもごちそうしてあげるよ。)

君の方で代価さえ払ってくれたら、いくらでも御馳走してあげるよ。

(おひるのごはんには、こんどはだいやもんどだぜ。せっかくてにいれたのを、)

お昼のご飯には、今度はダイヤモンドだぜ。せっかく手に入れたのを、

(きのどくだけれど、ひとつぶずつちょうだいすることにするよ。いくらざんねんだといって、)

気の毒だけれど、一粒ずつ頂戴する事にするよ。いくら残念だと言って、

(ひもじさにはかえられないからね。つまり、そのだいやもんどを、すっかり、)

ひもじさには代えられないからね。つまり、そのダイヤモンドを、すっかり、

(かえしてもらうというわけなんだよ。ひとつぶずつ、ひとつぶずつ、ははは・・・・・・、)

返して貰うという訳なんだよ。一粒ずつ、一粒ずつ、ハハハ……、

(ほてるのしゅじんも、なかなかたのしみなものだねえ」 にじゅうめんそうは、このきみょうな)

ホテルの主人も、なかなか楽しみなものだねえ」  二十面相は、この奇妙な

(とりひきがゆかいでたまらないようすでした。しかし、そんなきのながいことをいっていて、)

取引が愉快で堪らない様子でした。しかし、そんな気の長い事を言っていて、

(ほんとうにだいやもんどがとりかえせるのでしょうか。 そのまえに、かれじしんがとりこに)

本当にダイヤモンドが取り返せるのでしょうか。  その前に、彼自身が虜に

(なってしまうようなことはないでしょうか。)

なってしまうような事はないでしょうか。

(こばやししょうねんのしょうり にじゅうめんそうは、おとしどのところにしゃがんだまま、いま、)

【小林少年の勝利】  二十面相は、落し戸の所にしゃがんだまま、今、

(とりあげたばかりのぴすとるを、てのひらのうえでぴょいぴょいとはずませながら、)

取り上げたばかりのピストルを、手の平の上でピョイピョイと弾ませながら、

(とくいのぜっちょうでした。そして、なおもこばやししょうねんをからかってたのしもうと、)

得意の絶頂でした。そして、尚も小林少年をからかって楽しもうと、

(なにかいいかけたときでした。 ばたばたと2かいからかけおりるおとがして、)

何か言い掛けた時でした。  バタバタと二階から駆け下りる音がして、

(こっくのきょうふにひきつったかおがあらわれました。 「たいへんです・・・・・・。じどうしゃが3だい、)

コックの恐怖に引き攣った顔が現れました。 「大変です……。自動車が三台、

(おまわりがうじゃうじゃのっているんです・・・・・・。2かいのまどからみていると、)

お巡りがうじゃうじゃ乗っているんです……。二階の窓から見ていると、

(もんのそとでとまりました・・・・・・。はやくにげなくっちゃ」 ああ、はたして)

門の外で停まりました……。早く逃げなくっちゃ」  ああ、果たして

など

(ぴっぽちゃんはしめいをはたしたのでした。そして、こばやしくんのかんがえていた)

ピッポちゃんは使命を果たしたのでした。そして、小林君の考えていた

(よりもはやく、もうけいかんたいがとうちゃくしたのでした。ちかしつで、このさわぎをききつけた)

よりも早く、もう警官隊が到着したのでした。地下室で、この騒ぎを聞きつけた

(しょうねんたんていは、うれしさにとびたつばかりです。 このふいうちには、)

少年探偵は、嬉しさに飛び立つばかりです。  この不意打ちには、

(さすがのにじゅうめんそうもぎょうてんしないではいられません。 「なに?」)

流石の二十面相も仰天しないではいられません。 「何?」

(と、うめいてすっくとたちあがると、おとしどをしめることもわすれて、いきなりおもての)

と、呻いてスックと立ち上がると、落とし戸を閉める事も忘れて、いきなり表の

(いりぐちへかけだしました。 でも、もうそのときはおそかったのです。いりぐちの)

入り口へ駆け出しました。  でも、もうその時は遅かったのです。入り口の

(とをそとからはげしくたたくおとがきこえてきました。とのそばにもうけてあるのぞきあなに)

戸を外から激しく叩く音が聞こえてきました。戸の傍に設けてある覗き穴に

(めをあててみますと、そとはせいふくけいかんのひとがきでした。 「ちくしょうっ」)

目を当てて見ますと、外は制服警官の人垣でした。 「畜生っ」

(にじゅうめんそうはいかりにみをふるわせながら、こんどはうらぐちにむかってはしりました。)

二十面相は怒りに身を震わせながら、今度は裏口に向かって走りました。

(しかしちゅうとまでもいかぬうちに、そのうらぐちのどあにもはげしくたたくおとがきこえて)

しかし中途までも行かぬ内に、その裏口のドアにも激しく叩く音が聞こえて

(きたではありませんか。ぞくのそうくつは、いまやけいかんたいによってまったくほういされて)

きたではありませんか。賊の巣窟は、今や警官隊によって全く包囲されて

(しまったのです。 「かしら、もうだめです。にげみちはありません」)

しまったのです。 「頭、もう駄目です。逃げ道はありません」

(こっくがぜつぼうのさけびをあげました。 「しかたがない、2かいだ」)

コックが絶望の叫びを上げました。 「仕方がない、二階だ」

(にじゅうめんそうは、2かいのやねうらべやへかくれようというのです。 「とてもだめです)

二十面相は、二階の屋根裏部屋へ隠れようというのです。 「とても駄目です

(すぐみつかってしまいます」 こっくはなきだしそうなこえでわめきました。)

すぐ見付かってしまいます」  コックは泣きだしそうな声で喚きました。

(ぞくはそれにかまわずいきなりおとこのてをとってひきずるようにして、やねうらべやへの)

賊はそれに構わずいきなり男の手を取って引き摺るようにして、屋根裏部屋への

(かいだんをかけあがりました。 ふたりのすがたがかいだんにきえるとほどなく、おもてぐちのどあが)

階段を駆け上がりました。  二人の姿が階段に消えると程なく、表口のドアが

(はげしいおとをたててたおれたかとおもうと、すうめいのけいかんがおくないになだれこんできました)

激しい音を立てて倒れたかと思うと、数名の警官が屋内に雪崩れ込んで来ました

(それとほとんどどうじに、うらぐちのともひらいて、そこからもすうめいのせいふくけいかん。)

それと殆ど同時に、裏口の戸も開いて、そこからも数名の制服警官。

(しきかんは、けいしちょうのおにとうたわれたなかむらそうさかかりちょうそのひとです。)

指揮官は、警視庁の鬼と謳われた中村捜査係長その人です。

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