踊る人形5

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プレイ回数2267難易度(4.2) 5757打 長文 かな 長文モード可
シャーロックホームズシリーズ
アーサーコナンドイルの作品です。句読点以外の記号は省いています。

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問題文

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(こんどは、へやをてっていてきにけんぶんするじかんです。しょさいはちいさなへやであった。)

「今度は、部屋を徹底的に検分する時間です。」書斎は小さな部屋であった。

(さんほうにはほんだながあり、かきものづくえはなんのへんてつもないまどにむかっておかれ、そこから)

三方には本棚があり、書き物机は何の変哲もない窓に向かって置かれ、そこから

(にわがみわたせた。まずわれわれはだいいちにこのふこうなじぬしのいたいをしらべた。)

庭が見渡せた。まず我々は第一にこの不幸な地主の遺体を調べた。

(そのがっしりとしたたいくが、へやをよこぎるようにたおれていた。ちゃくいはみだれており)

そのがっしりとした体躯が、部屋を横切るように倒れていた。着衣は乱れており

(あわてておきたことをおもわせた。たまはしょうめんからうたれ、しんぞうをうちぬいたあと、)

あわてて起きたことを思わせた。弾は正面から撃たれ、心臓を撃ち抜いたあと、

(たいないにのこったらしい。そくしでくるしむひまもなかったはずだ。しょうえんはがうんにも)

体内に残ったらしい。即死で苦しむ暇もなかったはずだ。硝煙は化粧着にも

(てにものこっていなかった。ろういしのはなしでは、つまもかおにはそのあとがあるものの、)

手にも残っていなかった。老医師の話では、妻も顔にはそのあとがあるものの、

(てにはなかったとのことだ。てにないだけではなにもわからない。 もっとも)

手にはなかったとのことだ。「手にないだけでは何もわからない。―もっとも

(あれば、いちもくりょうぜんだが。とほーむずはいった。たまのこめかたがまずくてかやくが)

あれば、一目瞭然だが。」とホームズは言った。「弾の込め方がまずくて火薬が

(うしろへふっとばないかぎり、なんぱつでもあとをのこさずうつことができる。)

後ろへ吹っ飛ばない限り、何発でも跡を残さず撃つことができる。

(きゅーびっとしのいたいはもううごかしてもよろしいでしょう。それからせんせい、)

キュービット氏の遺体はもう動かしてもよろしいでしょう。それから先生、

(ふじんをうったたまは、まだてきしゅつしてませんね?そのためにはだいしゅじゅつが)

夫人を撃った弾は、まだ摘出してませんね?」「そのためには大手術が

(いりますからな。しかしりヴぉるヴぁにはよんぱつのこっておって、にはつでふたりふしょう、)

要りますからな。しかしリヴォルヴァには四発残っておって、二発で二人負傷、

(かんじょうはぴったりですな。いっけんは。というほーむずのこえ。しかし、)

勘定はぴったりですな。」「一見は。」というホームズの声。「しかし、

(あのまどのふちをつらぬいているたまも、しっかりかんじょうにいれねば。さっとふりかえり、)

あの窓の縁を貫いている弾も、しっかり勘定に入れねば。」さっと振り返り、

(ほーむずはやせたながいゆびでいってんをゆびさした。したがわのまどわく、ゆかから)

ホームズはやせた長い指で一点を指さした。下側の窓枠、床から

(いちいんちのところに、なにかにつらぬかれたあながあった。ほんとうだ!けいぶがこえを)

一インチのところに、何かに貫かれた穴があった。「本当だ!」警部が声を

(はりあげた。どうしてあんなものにめがとまったのですか?)

張り上げた。「どうしてあんなものに目がとまったのですか?」

(さがしていたからです。これはおそろしい!ろういしはいった。)

「探していたからです。」「これは恐ろしい!」老医師は言った。

(おおせのとおりですな。さんぱつめがうたれとるとすれば、だいさんしゃがおるわけで、)

「仰せの通りですな。三発目が撃たれとるとすれば、第三者がおるわけで、

など

(だが、なにものがここにおって、なんぞのほうほうでにげたんかの?それこそ、)

だが、何者がここにおって、なんぞの方法で逃げたんかの?」「それこそ、

(いまとりくんでいるもんだいです。としゃーろっくほーむずがいった。ほら、)

今取り組んでいる問題です。」とシャーロック・ホームズが言った。「ほら、

(まーてぃんけいぶ、じょちゅうたちがへやをでてすぐかやくのにおいがしたといったとき、)

マーティン警部、女中たちが部屋を出てすぐ火薬の臭いがしたと言ったとき、

(このてんはきわめてじゅうようだといっておきましたね?ええ、せんせい。しかし、)

この点はきわめて重要だと言っておきましたね?」「ええ、先生。しかし、

(よくわからなかったのです。つまり、はっぽうされたとき、へやのとびらもまども)

よくわからなかったのです。」「つまり、発砲されたとき、部屋の扉も窓も

(ひらいていたということです。でなくば、あのはやさでかやくのけむりがいえじゅうにたちこめる)

開いていたということです。でなくば、あの速さで火薬の煙が家中に立ち込める

(わけがない。ふっと、ひとかぜへやをふきぬけねば。どあとまどがあいていたのは)

わけがない。ふっと、ひとかぜ部屋を吹き抜けねば。ドアと窓が開いていたのは

(ほんのわずかなじかんなのです。なぜわずかだと...?ろうのながれあとが)

ほんのわずかな時間なのです。」「なぜわずかだと...?」「ロウの流れ跡が

(ありません。みごとだ!けいぶはさけんだ。さんげきのときまさにだいさんしゃがおり、)

ありません。」「見事だ!」警部は叫んだ。「惨劇のときまさに第三者がおり、

(ひらいていたまどのそとにたって、そこからなかへはっぽう。そしてそのものへうったいっぱつが)

開いていた窓の外に立って、そこから中へ発砲。そしてその者へ撃った一発が

(まどわくにあたったはず。みると、そこにはたせるかなだんこんがあった!)

窓枠に当たったはず。見ると、そこに果たせるかな弾痕があった!」

(ですが、まどがしめられかぎまでかかっていたのはどういうわけでしょう?)

「ですが、窓が閉められ鍵までかかっていたのはどういうわけでしょう?」

(おんなというものは、どんなときでもはんしゃてきにまどをしめてかぎをかけて)

「女というものは、どんなときでも反射的に窓をしめて鍵をかけて

(しまうのです。しかし、む!なにかな?しょさいのつくえに、ふじんようのはんどばっぐが)

しまうのです。しかし、む!何かな?」書斎の机に、婦人用のハンドバッグが

(あった。こがたでしゃれたわにがわ、ぎんのさいくがしてあった。ほーむずはなかみを)

あった。小型でしゃれた鰐皮、銀の細工がしてあった。ホームズは中身を

(ひっくりかえしたが、いんぐらんどぎんこうのごじゅっぽんどしへいにじゅうまいが、しんしゅくごむで)

ひっくり返したが、イングランド銀行の五十ポンド紙幣二十枚が、伸縮ゴムで

(しばられていたが それだけだった。ほかんしておきましょう。こうはんでは)

しばられていたが―それだけだった。「保管しておきましょう。公判では

(ひつようでしょうから。といいながら、ほーむずはつめなおしたばっぐをけいぶに)

必要でしょうから。」と言いながら、ホームズは詰め直したバッグを警部に

(てわたした。では、つぎはこのさんぱつめのたまにしょうてんをあててみましょう。これは)

手渡した。「では、次はこの三発目の弾に焦点を当ててみましょう。これは

(もっとも、きのさけぐあいをみても、しつないからうたれたものです。すいじふの)

もっとも、木の裂け具合を見ても、室内から撃たれたものです。炊事婦の

(きんぐさんにはなしがある。さて、きんぐさん。あなたはなにかばーんという)

キングさんに話がある。さて、キングさん。あなたは何かバーンという

(おおきなおとがしたといったが、これはいっぱつめがにはつめよりおおきかったという)

『大きな』音がしたと言ったが、これは一発目が二発目より大きかったという

(ことですか?はあ、そのおとでめがさめたのですが、よくはわかりかねます。)

ことですか?」「はあ、その音で目が覚めたのですが、よくはわかりかねます。

(とにかくおおきかったかと。いちどににはつうったとはかんがえられませんか?)

とにかく大きかったかと。」「一度に二発撃ったとは考えられませんか?」

(なんともいいかねます。ぼくのかんがえではまちがいないのだが、)

「何とも言いかねます。」「僕の考えでは間違いないのだが、

(さてまーてぃんけいぶ、もうこのへやでわかることはこれいじょうないかと。)

さてマーティン警部、もうこの部屋でわかることはこれ以上ないかと。

(いえのしゅういをめぐって、にわにあるはずのあらたなしょうこをみにいきましょう。)

家の周囲をめぐって、庭にあるはずの新たな証拠を見に行きましょう。」

(しょさいのまどのしたからかだんがつづいているのだが、われわれはそこにちかづいてみて、あっと)

書斎の窓の下から花壇が続いているのだが、我々はそこに近づいてみて、あっと

(おどろかされた。はなはふみにじられ、やわらかなつちのうえには、あしあとがいたるところに)

驚かされた。花は踏みにじられ、軟らかな土の上には、足跡が至る所に

(ついていた。それはだんせいのおおきなあしあとで、とりわけつまさきのとがったくつのもの)

ついていた。それは男性の大きな足跡で、とりわけつま先の尖った靴のもの

(であった。ほーむずがくさきのあいだを、りょうけんがうたれたとりをさがすがごとく)

であった。ホームズが草木のあいだを、猟犬が撃たれた鳥を探すがごとく

(しらべたけっか、まんぞくげなこえとともにまえへかがみ、ちいさなしんちゅうのつつをひろいあげた。)

調べた結果、満足げな声とともに前へかがみ、小さな真鍮の筒を拾い上げた。

(おもったとおりだ。ほーむずがいった。しゅうしつきのりヴぉるヴぁなら、ここに)

「思った通りだ。」ホームズが言った。「蹴子付きのリヴォルヴァなら、ここに

(さんぱつめのやっきょうがあるはず。ですから、まーてぃんけいぶ、これでじけんも)

三発目の薬莢があるはず。ですから、マーティン警部、これで事件も

(ほぼかいけつです。このじもとけいさつのかおからは、ただあっけにとられたのが)

ほぼ解決です。」この地元警察の顔からは、ただあっけにとられたのが

(わかるだけだった。ほーむずのそうさがあまりにてぎわよく、たくみであったからだ。)

わかるだけだった。ホームズの捜査があまりに手際よく、巧みであったからだ。

(さいしょのうちはたちばじょう、たしょうくちをはさもうとしていたが、いまはもうかんねんして、)

最初のうちは立場上、多少口を挟もうとしていたが、今はもう観念して、

(ほーむずのいくところにうたがいもなくついてくるだけであった。ようぎしゃは)

ホームズの行くところに疑いもなくついてくるだけであった。「容疑者は

(だれでしょう?けいぶがたずねた。いずれおはなしします。このもんだいには、)

誰でしょう?」警部が訊ねた。「いずれお話しします。この問題には、

(まだすうてんせつめいしかねることがあるのです。しかしここまできましたから、)

まだ数点説明しかねることがあるのです。しかしここまで来ましたから、

(そのままやりきってしまったほうがよいでしょう。それからすべてのたねあかしを、)

そのままやりきってしまった方がよいでしょう。それからすべての種明かしを、

(いちどにするということで。どうぞどうぞごずいいに、ほーむずさん。)

一度にするということで。」「どうぞどうぞご随意に、ホームズさん。

(はんにんたいほさえできれば。ひみつにしたいというわけではなく、ものごとを)

犯人逮捕さえできれば。」「秘密にしたいというわけではなく、物事を

(すすめながらながくこみいったせつめいをするのはむずかしいのです。じけんのすじはすべて)

進めながら長く込み入った説明をするのは難しいのです。事件の筋はすべて

(ぼくのしゅちゅうにあります。まんいちごふじんのいしきがもどらずとも、さくばんのじけんをさいこうせいし、)

僕の手中にあります。万一ご婦人の意識が戻らずとも、昨晩の事件を再構成し、

(せいぎをおこなうことができます。まず、このふきんのやどで、えるりっじという)

正義を行うことができます。まず、この付近の宿で、『エルリッジ』という

(なのものがあるか、たしかめられますか?めしつかいたちによくたずねてみたが、)

名のものがあるか、確かめられますか?」召使いたちによく訊ねてみたが、

(きいたことのあるものはいなかった。うまばんのしょうねんだけてがかりをもっていて、)

聞いたことのある者はいなかった。馬番の少年だけ手がかりを持っていて、

(きおくによれば、そういうなまえののうじょうぬしが、すうまいるさき、ひがしらすとんのほうがくに)

記憶によれば、そういう名前の農場主が、数マイル先、東ラストンの方角に

(いるらしかった。さびれたのうじょうかね?ええ、さびれまくりです。)

いるらしかった。「さびれた農場かね?」「ええ、さびれまくりです。」

(では、そのひとたちは、よるのじけんのことをまだなにもしらない?ええ、)

「では、その人たちは、夜の事件のことをまだ何も知らない?」「ええ、

(たぶん。ほーむずはほんのしばらくかんがえをめぐらせると、ふしぎなえみを)

たぶん。」ホームズはほんのしばらく考えをめぐらせると、ふしぎな笑みを

(うかべるのであった。ではきみ、うまのよういをして、ひとつかきつけをその)

浮かべるのであった。「では君、馬の用意をして、ひとつ書き付けをその

(えるりっじのうじょうへもっていってくれないか。ほーむずはふところから、おどるにんぎょうの)

エルリッジ農場へ持って行ってくれないか。」ホームズは懐から、踊る人形の

(かみきれをとりだし、まえにならべてしばらくしょさいのつくえにむかった。やがていちまいの)

紙切れを取り出し、前に並べてしばらく書斎の机に向かった。やがて一枚の

(かきつけをそのしょうねんにわたし、これをこのあてなのひとにてわたし、またどんなしつもんを)

書き付けをその少年に渡し、これをこの宛名の人に手渡し、またどんな質問を

(されてもけっしてこたえないよう、くれぐれもいいふくめた。かきつけのひょうめんをみると)

されても決して答えないよう、くれぐれも言い含めた。書き付けの表面を見ると

(あてなが、いつものほーむずのきれいなひっせきとはにつかない、めちゃくちゃなじで)

宛名が、いつものホームズの綺麗な筆跡とは似つかない、めちゃくちゃな字で

(かきなぐってあった。のーふぉーくしゅう、ひがしらすとん、えるりっじのうじょう、)

書き殴ってあった。ノーフォーク州、東ラストン、エルリッジ農場、

(えいぶすれいにあてとされていた。ひとつけいぶ、とほーむずはこえをはる。)

エイブ・スレイニ宛とされていた。「ひとつ警部、」とホームズは声を張る。

(でんぽうでごそうたいをようせいしたほうがよいかとぞんじます。ぼくのけいさんがたしかなら、)

「電報で護送隊を要請した方がよいかと存じます。僕の計算が確かなら、

(けいぶはこれからごくあくはんをしゅうけいむしょへおくらねばなりません。かきつけを)

警部はこれから極悪犯を州刑務所へ送らねばなりません。書き付けを

(もっていくこのしょうねんに、そのでんぽうをとどけさせましょう。ごごにろんどんいきの)

持って行くこの少年に、その電報を届けさせましょう。午後にロンドン行きの

(きしゃがあれば、わとそん、うまくのれそうだ。ゆかいなかがくぶんせきもおわらせて)

汽車があれば、ワトソン、うまく乗れそうだ。愉快な化学分析も終わらせて

(しまいたいし、このそうさもまもなくまくぎれとなる。)

しまいたいし、この捜査もまもなく幕切れとなる。」

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