怪人二十面相46 江戸川乱歩

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プレイ回数2420難易度(4.5) 2800打 長文
少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(つじのしにばけたにじゅうめんそうは、まるであけちたんていをすうはいしているかのように)

辻野氏に化けた二十面相は、まるで明智探偵を崇拝しているかのように

(いうのでした。しかしゆだんはできません。かれはくにじゅうをてきにまわしているだいとうぞくです)

言うのでした。しかし油断は出来ません。彼は国中を敵に回している大盗賊です

(ほとんどしにものぐるいのぼうけんをくわだてているのです。そこには、それだけのよういが)

殆ど死にもの狂いの冒険を企てているのです。そこには、それだけの用意が

(なくてはなりません。ごらんなさい。つじのしのみぎては、ようふくのぽけっとに)

なくてはなりません。ご覧なさい。辻野氏の右手は、洋服のポケットに

(いれられたまま、いちどもそこからでないではありませんか。いったいぽけっとのなかで)

入れられたまま、一度もそこから出ないではありませんか。一体ポケットの中で

(なにをにぎっているのでしょう。 「ははは・・・・・・、きみはすこしこうふんしすぎている)

何を握っているのでしょう。 「ハハハ……、君は少し興奮し過ぎている

(ようですね。ぼくには、こんなことは、いっこうにめずらしくもありませんよ。)

ようですね。僕には、こんな事は、一向に珍しくもありませんよ。

(だが、にじゅうめんそうくん、きみにはすこしおきのどくですね。ぼくがかえってきたので、せっかくの)

だが、二十面相君、君には少しお気の毒ですね。僕が帰って来たので、折角の

(きみのだいけいかくもむだになってしまったのだから。ぼくがかえってきたからには、)

君の大計画も無駄になってしまったのだから。僕が帰って来たからには、

(はくぶつかんのびじゅつひんにはいっしもそめさせませんよ。また、いずのくさかべけのたからものも、)

博物館の美術品には一指も染めさせませんよ。また、伊豆の日下部家の宝物も、

(きみのしょゆうひんにはしておきませんよ。いいですか、これだけははっきり)

君の所有品にはしておきませんよ。いいですか、これだけははっきり

(やくそくしておきます」 そんなふうにいうものの、あけちもなかなかたのしそうでした。)

約束しておきます」  そんな風に言うものの、明智も中々楽しそうでした。

(ふかくすいこんだたばこのけむりを、ふーっとあいてのめんぜんにふきつけて、)

深く吸い込んだ煙草の煙を、フーッと相手の面前に吹きつけて、

(にこにこわらっています。 「それじゃ、ぼくもやくそくしましょう」)

にこにこ笑っています。 「それじゃ、僕も約束しましょう」

(にじゅうめんそうもまけてはいませんでした。 「はくぶつかんのしょぞうひんは、よこくのひには、)

二十面相も負けてはいませんでした。 「博物館の所蔵品は、予告の日には、

(かならずうばいとっておめにかけます。それから、くさかべけのたからもの・・・・・・、ははは・・・・・・、)

必ず奪い取ってお目に掛けます。それから、日下部家の宝物……、ハハハ……、

(あれがかえせるものですか。なぜって、あけちくん、あのじけんではきみもきょうはんしゃ)

あれが返せるものですか。何故って、明智君、あの事件では君も共犯者

(だったじゃありませんか」 「きょうはんしゃ?ああ、なるほどねえ。きみはなかなか)

だったじゃありませんか」 「共犯者?ああ、成程ねえ。君は中々

(しゃれがうまいねえ。ははは・・・・・・」 たがいに、あいてをほろぼさないではやまぬ、)

洒落が上手いねえ。ハハハ……」  互いに、相手を滅ぼさないではやまぬ、

(はげしいてきいにもえたふたり、だいとうぞくとめいたんていは、まるで、したしいともだちのように)

激しい敵意に燃えた二人、大盗賊と名探偵は、まるで、親しい友達のように

など

(だんしょうしております。しかしふたりとも、こころのなかはすんぶんのゆだんもなく)

談笑しております。しかし二人共、心の中は寸分の油断もなく

(はりきっているのです。 これほどのだいたんのしわざをするぞくのことですから、)

張り切っているのです。  これほどの大胆の仕業をする賊の事ですから、

(そのうらめんには、どんなよういができているかわかりません。おそろしいのはぞくの)

その裏面には、どんな用意が出来ているか分かりません。恐ろしいのは賊の

(ぽけっとのぴすとるだけではないのです。 さいぜんのひとくせありげなぼーいちょうも、)

ポケットのピストルだけではないのです。  最前の一癖あり気なボーイ長も、

(ぞくのてしたでないとはかぎりません。そのほかにも、このほてるのなかには、どれほど)

賊の手下でないとは限りません。その外にも、このホテルの中には、どれ程

(ぞくのてしたがまぎれこんでいるか、しれたものではないのです。 いまのふたりの)

賊の手下が紛れ込んでいるか、知れたものではないのです。  今の二人の

(たちばはけんどうのたつじんとたつじんとが、はくじんをかまえてにらみあっているのと)

立ち場は剣道の達人と達人とが、白刃を構えて睨み合っているのと

(すこしもかわりはありません。きりょくときりょくのたたかいです。うのけほどのゆだんが)

少しも変わりはありません。気力と気力の戦いです。うの毛ほどの油断が

(たちどころにしょうぶをけっしてしまうのです。 ふたりは、ますますあいきょうよく)

たちどころに勝負を決してしまうのです。  二人は、ますます愛嬌よく

(はなしつづけています。かおはにこやかにえみくずれています。しかしにじゅうめんそうのひたいには)

話し続けています。顔はにこやかに笑み崩れています。しかし二十面相の額には

(このさむいのにあせのたまがういていました。ふたりとも、そのめだけはまるでひのように)

この寒いのに汗の玉が浮いていました。二人共、その目だけはまるで火のように

(らんらんともえかがやいていました。)

らんらんと燃え輝いていました。

(とらんくとえれべーたー めいたんていは、ぷらっとほーむでぞくを)

【トランクとエレベーター】  名探偵は、プラットホームで賊を

(とらえようとおもえば、なんのわけもなかったのです。どうして、このこうきかいを)

捕えようと思えば、何の訳もなかったのです。どうして、この好機会を

(みのがしてしまったのでしょう。どくしゃしょくんは、くやしくおもっているかもしれませんね)

見逃してしまったのでしょう。読者諸君は、悔しく思っているかもしれませんね

(しかし、これはめいたんていのじしんがどれほどつよいかをかたるものです。)

しかし、これは名探偵の自信がどれ程強いかを語るものです。

(ぞくをみくびっていればこそ、こういうはなれわざができるのです。たんていははくぶつかんの)

賊を見縊っていればこそ、こういう放れ技が出来るのです。探偵は博物館の

(ほうもつには、ぞくのいっしをもそめさせないじしんがありました。れいのびじゅつじょうのたからものも、)

宝物には、賊の一指をも染めさせない自信がありました。例の美術城の宝物も、

(そのほかのかぞえきれぬとうなんひんも、すっかりとりかえすしんねんがありました。 )

その外の数えきれぬ盗難品も、すっかり取り返す信念がありました。

(それには、いま、ぞくをとらえてしまっては、かえってふりなのです。)

それには、今、賊を捕らえてしまっては、かえって不利なのです。

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