怪人二十面相47 江戸川乱歩

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プレイ回数2304難易度(5.0) 2728打 長文
少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(にじゅうめんそうには、おおくのてしたがあります。もししゅりょうがとらえられたならば、)

二十面相には、多くの手下があります。もし首領が捕えられたならば、

(そのぶかのものが、ぬすみためたたからものを、どんなふうにしょぶんしてしまうか、)

その部下の者が、盗み貯めた宝物を、どんな風に処分してしまうか、

(しれたものではないからです。たいほは、そのたいせつなたからもののかくしばしょを)

知れたものではないからです。逮捕は、その大切な宝物の隠し場所を

(たしかめてからでもおそくはありません。 そこで、せっかくでむかえてくれたぞくを)

確かめてからでも遅くはありません。  そこで、せっかく出迎えてくれた賊を

(しつぼうさせるよりは、いっそ、そのさそいにのったとみせかけ、にじゅうめんそうのちえの)

失望させるよりは、いっそ、その誘いに乗ったと見せかけ、二十面相の知恵の

(ていどをためしてみるのも、いっきょうであろうとかんがえたのでした。 「あけちくん、いまのぼくの)

程度を試してみるのも、一興であろうと考えたのでした。 「明智君、今の僕の

(たちばというものをひとつそうぞうしてみたまえ。きみは、ぼくをとらえようとおもえば、)

立ち場というものを一つ想像してみたまえ。君は、僕を捕らえようと思えば、

(いつだってできるのですぜ。ほら、そこのべるをおせばいいのだ。)

いつだって出来るのですぜ。ほら、そこのベルを押せばいいのだ。

(そしてぼーいにおまわりさんをよんでこいとめいじさえすればいいのだ。ははは・・・・・・)

そしてボーイにお巡りさんを呼んで来いと命じさえすればいいのだ。ハハハ……

(なんてすばらしいぼうけんだ。このきもち、きみにわかりますか。いのちがけですよ。)

何て素晴らしい冒険だ。この気持、君に分かりますか。命懸けですよ。

(ぼくはいま、なんじゅうめーとるともしれぬぜっぺきの、とっぱなにたっているのですよ」)

僕は今、何十メートルとも知れぬ絶壁の、とっぱなに立っているのですよ」

(にじゅうめんそうはあくまでふてきです。そういいながら、めをほそくしてたんていのかおを)

二十面相はあくまで不敵です。そう言いながら、目を細くして探偵の顔を

(みつめ、さもおかしそうにおおごえにわらいだすのでした。 「ははは・・・・・・」)

見詰め、さも可笑しそうに大声に笑い出すのでした。 「ハハハ……」

(あけちこごろうも、まけないおおわらいをしました。 「きみ、なにもそうびくびく)

明智小五郎も、負けない大笑いをしました。 「君、何もそうビクビク

(することはありゃしない。きみのしょうたいをしりながら、のこのこここまで)

する事はありゃしない。君の正体を知りながら、ノコノコここまで

(やってきたぼくだもの、いま、きみをとらえるきなんかすこしもないのだよ。)

やって来た僕だもの、今、君を捕らえる気なんか少しもないのだよ。

(ぼくはただ、ゆうめいなにじゅうめんそうくんと、ちょっとはなしをしてみたかっただけさ。)

僕はただ、有名な二十面相君と、ちょっと話をしてみたかっただけさ。

(なあに、きみをとらえることなんか、いそぐことはありゃしない。はくぶつかんのしゅうげきまで、)

なあに、君を捕らえる事なんか、急ぐ事はありゃしない。博物館の襲撃まで、

(まだここのかかんもあるじゃないか。まあ、ゆっくり、きみのむだぼねおりを)

まだ九日間もあるじゃないか。まあ、ゆっくり、君の無駄骨折りを

(はいけんするつもりだよ」 「ああ、さすがはめいたんていだねえ。ふとっぱらだねえ。)

拝見するつもりだよ」 「ああ、さすがは名探偵だねえ。太っ腹だねえ。

など

(ぼくは、きみにほれこんでしまったよ・・・・・・。ところでと、きみのほうでぼくを)

僕は、君に惚れ込んでしまったよ……。ところでと、君の方で僕を

(とらえないとすれば、どうやら、ぼくのほうで、きみをとりこにすることに)

捕えないとすれば、どうやら、僕の方で、君を虜にする事に

(なりそうだねえ」 にじゅうめんそうはだんだん、こえのちょうしをすごくしながら、にやにやと)

なりそうだねえ」  二十面相は段々、声の調子を凄くしながら、ニヤニヤと

(うすきみわるくわらうのでした。 「あけちくん、こわくはないかね。それともきみは、)

薄気味悪く笑うのでした。 「明智君、恐くはないかね。それとも君は、

(ぼくがむいみにきみをここへつれこんだとでもおもっているのかい。ぼくのほうに、)

僕が無意味に君をここへ連れ込んだとでも思っているのかい。僕の方に、

(なんのよういもないとおもっているのかね。ぼくがだまって、きみをこのへやからそとへ)

何の用意もないと思っているのかね。僕が黙って、君をこの部屋から外へ

(だすとでも、かんちがいしているのじゃないのかね」 「さあ、どうだかねえ。)

出すとでも、勘違いしているのじゃないのかね」 「さあ、どうだかねえ。

(きみがいくらださないといっても、ぼくはむろんここをでていくよ。これから)

君が幾ら出さないと言っても、僕は無論ここを出て行くよ。これから

(がいむしょうへいかなければならない。いそがしいからだだからね」)

外務省へ行かなければならない。忙しい身体だからね」

(あけちはいいながらゆっくりたちあがって、どあとははんたいのほうへあるいて)

明智は言いながらゆっくり立ち上がって、ドアとは反対の方へ歩いて

(いきました。そして、なにかけしきでもながめるように、のんきらしく、がらすごしに)

行きました。そして、何か景色でも眺めるように、呑気らしく、ガラス越しに

(まどのそとをみやってかるくあくびをしながら、はんかちをとりだして、)

窓の外を見やって軽く欠伸をしながら、ハンカチを取り出して、

(かおをぬぐっております。 そのとき、いつのまにべるをおしたのか、さいぜんの)

顔を拭っております。  その時、いつの間にベルを押したのか、最前の

(がんじょうなぼーいちょうと、おなじくくっきょうなもうひとりのぼーいとが、どあをあけて)

頑丈なボーイ長と、同じく屈強なもう一人のボーイとが、ドアを開けて

(つかつかとはいってきました。そして、てーぶるのまえで、ちょくりつふどうの)

ツカツカと入って来ました。そして、テーブルの前で、直立不動の

(しせいをとりました。 「おい、おい、あけちくん、きみは、ぼくのちからをまだ)

姿勢をとりました。 「おい、おい、明智君、君は、僕の力をまだ

(しらないようだね。ここはてつどうほてるだからとおもってあんしんしているのじゃ)

知らないようだね。ここは鉄道ホテルだからと思って安心しているのじゃ

(ないかね。ところがね、きみ、たとえばこのとおりだ」 にじゅうめんそうは)

ないかね。ところがね、君、例えばこの通りだ」  二十面相は

(そういっておいて、ふたりのおおおとこのぼーいのほうをふりむきました。)

そう言っておいて、二人の大男のボーイの方を振り向きました。

(「きみたち、あけちせんせいにごあいさつもうしあげるんだ」 すると、ふたりのおとこは、)

「君達、明智先生にご挨拶申し上げるんだ」  すると、二人の男は、

(たちまち2ひきのやじゅうのようなものすごいそうごうになって、いきなりあけちをめがけて)

たちまち二匹の野獣のような物凄い相好になって、いきなり明智を目掛けて

(つきすすんできます。 )

突き進んできます。

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